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データラーニングギルドAdvent Calendar 2023

Day 1

参加者400名の技術者向けオンラインサロン運営の秘訣を詰め込んだ『コミュニティマネジメント研修』を作った話

Last updated at Posted at 2023-12-01

皆さんこんにちは、データラーニングギルド代表の村上です。

今年も残すところあと一年、アドベントカレンダーの時期がやってきましたね!

私の運営するデータサイエンティスト特化のオンラインであるデータラーニングギルドですが、今年もアドベントカレンダーを執筆したいと思います♪

毎年の恒例行事となっておりまして、アドベントカレンダーの執筆もついに5年目となりました!過去には、データサイエンスのキャリアだったり、書籍の情報だったりについて執筆を行いました。

過去のアドベントカレンダー

■2019年

■2020年

■2021年

■2022年

今まで4年間は自分がアドベントカレンダーの企画~執筆者に対する声かけを担当していたのですが、今年はコミュニティメンバーを中心にアドベントカレンダーの企画を推し進めて頂きました。

その背景に、「コミュニティを自分たちで作って、運営しながらコミュニティマネジメントスキルを身に付ける」ということをゴールに設計した「コミュニティマネジメント研修」があります。8月~11月の4ヶ月に渡って13名のメンバーに対して研修を行って来たので、今回はその件について執筆したいと思います。

「自分でコミュニティを作りたいけどどうしたら良いか分からない」

「コミュニティを作ったけど、なかなか自走する組織にできない」

という方の参考になると嬉しいです。

データラーニングギルドとコミュニティマネジメント研修について

コミュニティマネジメント研修を説明するにあたって、まずは実施の主体となったデータラーニングギルドとコミュニティマネジメント研修について説明したいと思います。

データラーニングギルドについて

データ領域に特化した、いわゆるオンラインサロンです。

  • データサイエンスについての勉強会を実施
  • データ分析の実務や学習で出てきた不明点をお互いに教えあう
  • 企業さんとハッカソン的なコラボイベントを実施
  • クラウドファンディングをやってデータ系のメディアを立ち上げ
  • オフ会やオンライン交流会を通じて同業種のコミュニティを広げる

といった活動を行うデータ人材どうしの互助組織です。データラーニングの運営しているコミュニティではありますが、ビジネスとしてはあまり成り立っていないので、営利と非営利の中間くらいのコミュニティという位置づけで考えて頂けると良いかと思います。

温度感としては、SaaSやクラウドサービスのユーザーコミュニティなんかにも近いのではないかと思います。

ご興味がある方は以下から参加できるので、是非ご参加ください!

コミュニティマネジメント研修について

コミュニティマネジメント研修を実施した背景として、データラーニングギルドを5年という節目に向かって「村上に依存しない自走する組織にしたい」という意図がありました。

ここまで4年間運営してきたものの、自分のエネルギーが注げているタイミングでは活発化するものの、自分が本業で忙しくなったタイミングでは活動が少なくなるなど、運営者依存の組織となっていました。「村上が運営を頑張るか」がコミュニティが継続するための要素となってしまっていたので、データラーニングギルドの中にサブコミュニティを作って、その組織の運営を研修と実践を通じて習得することで自走できる組織を作っていきたい。そんな想いから立ち上げたのがこのコミュニティマネジメント研修でした。

コミュニティの中で以下のような募集をかけて、最終的には13名の方に研修にお集まり頂きました。

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講座の内容
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以下の全4部の構成を想定しています。

■第1部 「コミュニティとは何か?」
コミュニティの定義や意義、分類などについて学び、サブコミュニティの基本的な設計を行い、今回の講座で立ち上げるサブコミュニティを決定します。

1チーム4名で3つのサブコミュニティを立ち上げることを想定しています。

■第2部 「コミュニティの活動」
実際のコミュニティ活動の内容や方法について学びます。

チームでのイベントを企画〜実践までを体験します。

■第3部 「コミュニティにおける制度設計と文化構築」
コミュニティのルールや文化の築き方について学習します。

文化として実現したいこと、制度でカバーするところを切り分け、サブコミュニティのベースとなるルール、行動指針などを作ります。

■第4部 「コミュニティと人・コミュニケーション」
 コミュニティにおける人間関係やコミュニケーションの技術に焦点を当てます。

各部の講座は3つのフェーズからなります。

■「座学」
ここで参加者は知識を中心に学びます。

■「想いの共有・ケーススタディ」
「データラーニングギルド」を例に、実際の活動やその背景にある想いを共有します。

また、メンバーの想いについても共有を行い、サブコミュニティの中にビジョンやコアとなるマインドを浸透させます。

■「実践的スキルの習得」
講座で学習した知識やフレームワークなどを活用して、実際の活動やタスクに取り組みます。

活動を通じて、実践的なスキルを身に付けます。

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講座修了時に目指すスキル
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◉コミュニティの設計・立上ができる
◉コミュニティおけるルール、制度設計ができる
◉文化醸成について理解をし、働きかけることができる
◉コミュニティでのイベント企画・実施ができる
◉コミュニティに人を巻き込める

## コミュニティマネジメント研修の内容

それでは、実際にどのようなことを実施したかについてお話したいと思います。講座の実施スタイルとしては、以下のような形で実施しました。

- 前半と後半に分けて実施
- 前半では講座と演習を通じてコミュニティの設計を行う
    - 毎週水曜日に講義を実施(全12週)
    - 次の水曜日までに講義で出された演習を実施
- 後半では実際にフィードバックを行いながら、コミュニティ運営を実施する

現在前半が終わったタイミングで、これから具体的な活動にとりかかるタイミングとなっています。講座の中でどのような内容の研修を行ったか、どのようなアウトプットを作成したかについて共有したいと思います。

アウトプットで紹介するフォーマットについては、自分の4年間コミュニティを運営した経験に基づいて「大体この辺りを考慮しておけば大丈夫かな」という所を押さえています。これからコミュニティを作るという方の参考になるかと思いますので、是非ご活用ください!

第1部「コミュニティとは何か?」

講座概要

コミュニティを作ろうと思ったら、まずはコミュニティについて知る必要があります。何がコミュニティをコミュニティたらしめているのでしょうか?

コミュニティに所属しているときに感じる「我々」という感情はどこから来るのでしょうか?

第1部ではそういったコミュニティの根本である、「そもそもコミュニティが何であるか?」、「どのような機能するか?」、「どのようなパターンがあるか?」というトピックについて学んだあとに、コミュニティにおけるパーパスの存在意義を理解する講座、パーパス作成についてのワークショップを行いました。

例えば、以下では組織の分類として、ゲマインシャフトとゲゼルシャフトという概念を用いて、自分の所属しているコミュニティがどちらに分類されるのか、グラデーションで考えるような講義を行いました。

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パーパスの講義、パーパス作成ワークショップでは、パーパスとMVV(Mission、Vision、Value)の違いや、パーパスを定義するための手順などについての講義を行い、実際にデータラーニングギルドの中でパーパスを作るような演習を行いました。

第2回_コミュニティとパーパス.jpg

※参考書籍
パーパス 「意義化」する経済とその先

講座でのアウトプット

講座でのアウトプットでは、パーパス 「意義化」する経済とその先で紹介されているパーパス作成手順を参考に、コミュニティで大事にしたい価値観、社会で必要とされている価値を洗い出し、そこからコンセプトを決めるようなワークショップを行いました。

このように、コミュニティで大事にしたい価値観と社会的な意義の交差する部分にコンセプトを持つことによって、より多くの人に共感してもらえるコミュニティにすることができます。

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最終的には、各サブコミュニティで以下のようなコンセプト、パーパス、テーマを作成しました。

イベントチーム.jpg

第2部「コミュニティの活動」

講座概要

仮に魅力的なコンセプトのもとに、人が集まっても、継続的に活動ができなければ、コミュニティはすぐに廃れてしまします。組織を継続するためには、協力者を巻き込んで、組織の維持、拡大に必要な活動をしていく必要があります。

そのため、第二部では、もう少し具体的な内容として、「コミュニティとして何を実現するのか?」、「具体的にどのような活動を行うのか」、「参加者、運営者にはどのようなメリットがあるのか?」といったコミュニティが存続するための具体的な活動を学ぶ講座を実施しました。

例えば、コミュニティが継続的に活動していくために、表に見える表面的な活動に加えて、具体的にどのような活動が必要になってくるのかということを学ぶような講義を実施しました。

第5回_コミュニティの活動.jpg

第5回_コミュニティの活動2.jpg

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会社運営の場合、金銭的な報酬が中心に来ますが、コミュニティ運営の場合、楽しさ、成長、情報発信のサポートなど、さまざまな要素を適切に組み合わせながらバランスを取っていく必要があります。

そのため、運営者、参加者がどのような動機で関わっているかの代表的なパターンや、それに対応するイベントや施策についても講義を実施しました。

第5回_コミュニティの活動5.jpg

講座でのアウトプット

まずは、参加者のメリット、運営者のメリットをそれぞれ書き出すような課題を実施しました。コミュニティの運営には参加者だけではなく運営者も必要なため、双方のメリットを書き出すことで、コミュニティ継続に何が必要なのかが見えてきます。

イベントチーム (1).jpg

また、ビジネスモデルキャンバスと言われるフレームワークの作成も演習として実施しました。新規ビジネスを立ち上げる時などに、ビジネスモデルの全体感を把握するために使われるフレームワークですが、コミュニティおいてもほぼ同様の要素が重要になってくるため、構築するコミュニティにおけるビジネスモデルキャンバスの作成に取り組んでもらいました。

この演習を行うことで、コミュニティ運営において考慮が漏れている部分を洗い出し、運営のコアメンバー間で共通認識を作ることができます。
イベントチーム (2).jpg

第3部「コミュニティにおける制度設計」

講座概要

ある程度活動が活発になって来たり、規模が大きくなって来たりすると、コミュニティの中でトラブルが発生したり、予期しない事態が発生したりします。

トラブルまでいかないまでも、規模の拡大に応じて、「参加はしたけど何をしたらいいのか分からない」、「組織としての統一感がない」というような事態が発生するようになってきます。

そのような事態を避けるためにはどうすればいいのでしょうか?

そこで重要になってくるのが、制度設計と文化構築です。制度設計については、数理モデル思考で紐解く RULE DESIGN -組織と人の行動を科学するを参考に、どのようなルールが適切にワークするのか、コミュニティおけるルールの目的などについての講義を実施しました。

第7回_ルールデザイン.jpg

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効果的なルールや制度を作るにあたって、「そのルールが適切に働いた際にコミュニティにどんな影響を与えるか」ということを意識することも重要です。組織全体への影響を考えるにあたって「システム思考」が役に立ちます。

システム思考とは、「蛇口をひねると水が出て、バスタブに水が溜まる」、「栓を抜くと、排水口の大きさに応じて水が抜ける」といった、直前の行動が次の要素にどのような影響を与えるのかということを考えるための分野です。システム思考により、複雑に絡み合う現実の要素を図示して、シミュレーションができるようになります。

講座では、このシステム思考の基本的な考え方と作り方についてお伝えしました。

第8回_システム思考.jpg

第8回_システム思考2.jpg

講座でのアウトプット

まずは、以下のような形で、ルールの作成演習を行いました。ルールはただ作成するだけでは意味がないので、誰が、いつ確認を行って、どうやって遂行するのかということまで含めて決めておく必要があります。

「こういうルールがあったほうがいいよね」というルールがあったとしても、実行できないルールでは意味がないので、現実的なルールになるようにルールの検討を行っています。

イベントチーム (3).jpg

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また、全体のシステム図についても作成を行いました。システム図を作成することで、コミュニティを維持するために必要な要素、今どこに何が足りていないか、ボトルネックになりうる注力ポイントを考えるきっかけになるので、継続するコミュニティを作るための協力なツールになると思います。

例えば、以下の事例だと、ノウハウの蓄積、SNS・ブログでの発信担当などは抜けがちだったりするので、コミュニティ立ち上げ前にしっかりと担当者を押さえておく必要があると分かるかと思います。

イベントチーム (4).jpg

第4部「文化醸成、コミュニティと人・コミュニケーション」

講座概要

コミュニティマネジメント研修の最終回は文化醸成、人・コミュニケーションについての講義を実施しました。

まず、本講座の中で、文化を「何に関心を持つか、何を評価するか(≒価値観)に基づいた行動様式」と定義し、その多様さを学びました。(スパルタの脳筋具合ヤバいですね…)

第9回_文化醸成2.jpg

第9回_文化醸成.jpg

その上で、「文化がどのようにして作られるのか」というような、文化が作られるまでの過程やパターンについての話をしました。

第9回_文化醸成3.jpg

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自然発生的なコミュニティと主体的に作るコミュニティの文化形成のロジックが違いますよね。といったような話もしました。

第9回_文化醸成5.jpg

これらをふまえて、「どのように文化を作っていくのか」の具体的なステップについても講義を実施しました。

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そして、最後に「コミュニティ×人」についての講義を行いました。

まず、人のタイプを、ギバー・テイカー・マッチャーという性質に分け、「ギバーがギブしやすい環境を整備する」、「マッチャーを適切にマッチングする」、「テイカーが生まれない構造を作る」ことで心地よいコミュニティを作る方法について解説を行いました。

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その後、機能ベースでメンバーを区分し、メンバーの比率、メンバーの育成についての話を行いました。

第10回_人を巻き込む1.jpg

そして、最後に、自分がコミュニティマネジメントの際に心がけていることを整理し、10箇条としてお伝えさせて頂きました。

第10回_人を巻き込む2.jpg

第10回_人を巻き込む3.jpg

このような形で、全4部の講義を実施しました。このように色々お伝えしましたが「コミュニティ=人」だと思うので、どれだけ関わってくれるメンバー、関係者のことを真剣に考えられるか、熱量を込めて取り組めるかが重要なんじゃないかなと思います。

講座でのアウトプット

文化醸成の講座では、何が評価されるのか、何が評価されないのかといった「コミュニティにおける価値観」を作るような課題を実施しました。価値観を作ることで、どんな人に関わって欲しいかが具体的にイメージができ、メンバーの行動についても適切に評価ができるようになるので、こういった価値観を作成しておくのはコミュニティ運営においては非常に重要です。

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また、どのようなメンバーに関わってもらいたいか(ペルソナ)、そのメンバーがどのようなステップでコミュニティを知って、コアメンバーになっていくのかの行動と感情の推移(カスタマージャーニー)をまとめる演習も実施しました。

カスタマージャーニーを作ることで、具体的にコミュニティに新規メンバーを巻き込むためのステップと、ステップごとの施策を設計することができます。

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まとめ

以上、「コミュニティマネジメント研修」の概要でした。

コミュニティマネジメントについて体系的にまとめているコンテンツはなかなか無いのではと思うので、なかなか面白い研修になったんじゃないかなと思います。こうしてまとめてみると、コミュニティを運営するにあたって、考えることっていっぱいありますね…

こちらの記事の反響が良ければ、講座の学習コンテンツ化、外部への提供なども行っていければと思いますので、「研修をやって欲しい」というコミュニティオーナーの方は是非ご気軽にご相談ください♪

現在、12回の講座が終わって、交流コミュニティ、イベントコミュニティ、コンテンツコミュニティ、副業・仕事コミュニティの活動が動き出します!

コミュニティを盛り上げていく仲間を随時募集中ですので、「楽しそうだな」、「どんな活動をしてるか気になるな」と思った方はデータラーニングギルドに是非ご参加ください♪

明日以降もアドベントカレンダーで色んな記事が投稿されると思いますので、楽しみにしていてください!

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