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剛体の衝突力学(平面)

Last updated at Posted at 2020-11-06

剛体に撃力が加えられると,並進速度の変化だけでなく角速度の変化も発生する.この関係についてまとめる.

剛体の回転

慣性モーメント

moment_of_inertia.png

ある軸まわりの剛体の慣性モーメントを求めると,
$$
I = \sum_i m_i r_i^2
$$
となる.ここで,$m_i$は軸から$r_i$離れた位置にある,剛体の微小分割.
これをさらに細かく分割して,微小体積$dV$の積分として表すと
$$
I = \int \rho r^2 dV
$$
となる.ここで$\rho$は剛体の密度を表す.

剛体の回転

剛体に対して,軸回りにトルク$N$をかけたとき,剛体の角運動量$L$について以下が成立する.
$$
\frac{{\rm d}L}{{\rm d}t} = I\ddot{\theta} =N
$$
ここで,$\theta$は剛体が軸周りに回転した角度.
外からトルクが加えられていない状況では,
$$
\frac{{\rm d}L}{{\rm d}t} =0
$$
となり,$L$は一定となる.これを角運動量保存則という.
(概念を拡張して,$N\neq 0$のときも角運動量保存則と呼んだりする.)

慣性半径

慣性半径 (Radius of Gyration)$R$という量を定義すると便利なことがある.
$$
MR^2 = I
$$
これは,剛体の質量$M$が,慣性モーメントを変えることなく軸から$R$の距離に集まっていると考えることができる.

平行軸の定理

ある軸周りの慣性モーメントが$I$であるとき,そこから$r$離れた軸回りの慣性モーメントは
$$
I' = I + Mr^2
$$
となる.

シンプルな振り子(準備)

質点$m$が長さ$l$の糸で点$O$から吊るされている.鉛直方向と振り子のなす角度を$\theta$とする.この系の$O$周りの慣性モーメントは
$$
I = ml^2
$$
であり,重力が及ぼすトルクは
$$
N = -mgl\sin\theta
$$
である.
したがって,角運動量保存則から
$$
\ddot{\theta} = -\frac{g}{l}\sin\theta
$$
となる.

剛体振り子

rigid_pendulum.png

固定された軸が質量中心を通らないような質量$M$の剛体振り子を考える.
剛体の固定点と質量中心を通る直線が鉛直方向となす角度を$\theta$とする.
この振り子の運動方程式は
$$
MR_O^2\ddot{\theta} = -Mgh\sin\theta
$$
ここで,$h$は距離$\bar{OG}$であり,$R_O$は$O$を軸とした慣性半径である.
この運動方程式は,
$$
l = \frac{R_O^2}{h}
$$
としたとき,質量$M$の質点のシンプルな振り子の運動方程式と一致する.
すなわち,質量$M$が半直線$OG$上の$O$から$l$離れた点$O'$に集まったときの振動が,剛体振り子の振動と一致する.
$$
l = h + h'
$$
$$
hh' = R_O^2 - h^2
$$
を満たすとき,点$O'$を振動中心(center of oscillation) と呼ぶ.

$G$まわりの慣性半径を$R_G$とすると,平行軸の定理から
$$
R_O^2 = R_G^2 + h^2
$$
となる.これを用いると,
$$
hh' = R_G^2
$$
が成立する.
この式は$h$と$h'$に関して対称である(すなわち,$h$と$h'$が入れ替わっても成立).
すなわち,点$O'$を軸とした剛体振り子を作ると,その振動中心は$O$となる.

剛体に撃力を加える

center_of_percussion.png

点$O$を軸として固定された剛体振り子を考える.
軸から$l$離れた位置にある点$O'$に撃力を加える.
撃力は直線$\bar{OO'}$に垂直な向きを向いているとする.
$O'$が,直線$\bar{OO'}$が質量中心$G$を通るとして,$h$と$h'$をそれぞれ距離$\bar{OG}$,$\bar{OG'}$とする.
点$O'$に加えられた撃力は
$$
J' = \int F' {\rm d}t
$$
である.このとき,点$O$では,固定された軸が動かないように撃力$J$が発生する.
$$
J = \int F {\rm d}t
$$
剛体の(線)運動量変化は
$$
\frac{{\rm d}P}{{\rm d}t} = \frac{{\rm d}}{{\rm d}t}(Mh\dot{\theta}) = F+F'
$$
である.ここで,$\dot{\theta}$は剛体の$O$周りの角速度.
これを積分して,撃力による運動量の変化は
$$
Mh\dot{\theta} = J+J'
$$
となる.ただし,剛体は撃力を加える前は静止していたものとした.
$O$周りの角運動量保存則は,
$$
\frac{{\rm d}L}{{\rm d}t} = \frac{{\rm d}}{{\rm d}t}(MR_O^2\dot{\theta}) = F'l
$$
であり,これを積分して
$$
MR_O^2\dot{\theta} = J'l
$$
を得る.
以上の結果を用いて$\dot{\theta}$を消去すると,
$$
hl = R_O^2\left(1+\frac{J}{J'}\right)
$$
となる.

ここで,$O'$をいい感じの場所にとって,$J=0$とすることを考えよう.このとき,$h$と$l$の関係は
$$
hl = R_O^2
$$
となる.
$l = h + h'$と,$R_O^2 = R_G^2 + h^2$から
$$
hh' = R_G^2
$$
という関係が得られる.
点$O'$に撃力を加えたとき,点$O$では角速度変化が一切生じない.
このような点$O$を,撃力中心(Center of percussion) と呼ぶ.
撃力中心と振動中心が同じ点であることに注意しよう.

剛体が固定されておらず,撃力中心$O'$に撃力が加えられたとき,その直後の運動は$O$周りの回転となる.

このような点は,野球でバットを振る場合などに有効である.
球を打ち返すときに,撃力中心に当てるようにすれば,回転中心である手に返ってくる力はゼロとなる.

Reference

K. Symon, "Mechanics", Addison-Wesley Publishing, 1971.

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