はじめに
Cisco Catalyst 9300 構築中、一部のインターフェースにおいて 意図せずダウンアップ(リンクフラップ)が発生する事象に遭遇し、切り分けをしたところ、以下のバグに該当している可能性がありました。
Cisco Bug: CSCvv91944
PoE(Power over Ethernet)関連のバグで、本環境ではPoE機能を使用していなかったため、今回は該当のインターフェースのPoEを無効にしました。
本記事はその手順について記事にしたいと思います。
事象の概要
対象機器: Cisco Catalyst 9300 シリーズ
発生事象: 特定インターフェースで意図しないダウンアップ(リンクフラップ)が断続的に発生
PoE 機能: 未使用
切り分け結果: PoE 関連の不具合に起因する可能性あり
事前確認
「show power inline」コマンドで現在のPoEの使用状況を確認します。
Switch9300#show power inline
Module Available Used Remaining
(Watts) (Watts) (Watts)
------ --------- -------- ---------
1 210.0 0.0 210.0
Interface Admin Oper Power Device Class Max
(Watts)
--------- ------ ---------- ------- ------------------- ----- ----
Te1/0/1 auto off 0.0 n/a n/a 60.0
Te1/0/2 auto off 0.0 n/a n/a 60.0
Te1/0/3 auto off 0.0 n/a n/a 60.0
Te1/0/4 auto off 0.0 n/a n/a 60.0
Te1/0/5 auto off 0.0 n/a n/a 60.0
ログの内容を簡単に解説します。
Admin → auto
PoE が有効化されている設定状態(自動判別で給電するモード)
Oper → off
実際には 給電されていない状態
Power (Watts) → 0.0
消費電力なし
Device → n/a
PoE 対応デバイスが接続されていない
上記により、このログから現在PoEが使われていないことが判断できます。
ではこの「Admin → auto」の部分を無効(PoEの機能を停止)にします。
設定方法
設定は物理インターフェースで行います。
Channel等の論理インターフェースには設定できません。
以下のコマンドをインターフェースコンフィグレーションモードで設定します。
power inline never
※本設定を行うと、該当インターフェースでダウンアップが発生するので注意してください。
今回は「TenGigabitEthernet1/0/1(Te1/0/1)」に設定を行います。
以下が設定手順です。
Switch9300#conf t
Switch9300(config)#int Te1/0/1
Switch9300(config-if)#power inline never
Switch9300(config-if)#end
Switch9300#
show running-config で見ると該当のインターフェース設定にも
「power inline never」の設定が入っています。
上にも書きましたが、設定時該当インターフェースでダウンアップが発生しますので
作業の際には注意してください。
ダウンアップ時のログは以下になります。
Dec 1 17:11:25.700: %LINK-3-UPDOWN: Interface TenGigabitEthernet1/0/1, changed state to down
Dec 1 17:11:26.701: %LINK-3-UPDOWN: Interface TenGigabitEthernet1/0/1, changed state to up
Dec 1 17:11:30.289: %LINEPROTO-5-UPDOWN: Line protocol on Interface TenGigabitEthernet1/0/1, changed state to down
Dec 1 17:11:31.268: %LINEPROTO-5-UPDOWN: Line protocol on Interface TenGigabitEthernet1/0/1, changed state to up
再度「show power inline」で確認します
Switch9300#show power inline
Module Available Used Remaining
(Watts) (Watts) (Watts)
------ --------- -------- ---------
1 210.0 0.0 210.0
Interface Admin Oper Power Device Class Max
(Watts)
--------- ------ ---------- ------- ------------------- ----- ----
Te1/0/1 off off 0.0 n/a n/a 60.0
Te1/0/2 auto off 0.0 n/a n/a 60.0
Te1/0/3 auto off 0.0 n/a n/a 60.0
Te1/0/4 auto off 0.0 n/a n/a 60.0
Te1/0/5 auto off 0.0 n/a n/a 60.0
「Te1/0/1」の「Admin」が「off」になったことが確認できます。
これで該当インターフェースのPoEを無効にすることができました。
なお戻す場合は以下のコマンドで「auto」に戻すことができます。
Switch9300(config-if)# power inline auto
※上記設定はデフォルト設定のため、sh runには表示されません。
まとめ
今回、Cisco Catalyst 9300 の構築中に、一部インターフェースで意図せずダウンアップが発生するという思わぬトラブルに遭遇しました。
調べていく中で既知のバグに該当している可能性があることが分かり、本環境では PoE を利用していなかったため、PoE 機能を無効化する設定を試しました。
今回の対応を通じて「PoE を使わない環境では、トラブル回避策として無効化する」という選択肢があることを学びました。
本記事が誰かのお役に立てれば幸いです。
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