はじめに
AIもAzureも初心者の私ですが、Microsoft認定資格「AI-900: Microsoft Azure AI Fundamentals」1に合格しました。使用した学習教材はMS-Learn 2 とネット検索のみです。Azure関連資格はAWSと違って書籍やUdemy教材が少ない為です。
書籍での学習の方が好きな私は "全体を掴むまで、部分は追うな(点でなく線で理解)" がモットーなので、膨大な量のMS-Learn2をいきなり読み進めても、なかなか点が線にならず時間効率が悪かったというのが正直な感想でした。(要領や理解力が悪いだけともいう...)
そこで AIやAzure AIについて全体像を掴むのに役立つ入門レベルの用語 を纏めました。これからAI-900を学習する人や、AIなんか凄そう!でも何が出来るんだっけ?という方々向けに、参考にれば幸いです。
他にも追加すべき用語があれば、書き足していく予定です。
※各用語の説明はWikipediaやMS-Learnより要約し、WikipediaやMicrosoftのサービス概要へのリンクを貼っています。
AIの一般用語
AIの理解が不安な場合にAzure OpenAIの学習前に把握すると良いと思った用語を最小限ピックアップしました。
AIの用語
用語 | 原語(英語) | 説明 |
---|---|---|
AI | Artificial Intelligence | 人間のような知能をコンピュータ上で実現する技術 |
生成AI (ジェネレーティブAI) |
Generative AI | AIの一種。 訓練データを元に学習したAIが、入力に応じて同等の特性を持つコンテンツを生成できるAI。 AzureのOpenAIモデルでは、「自然言語の生成」「コードの生成」「イメージの生成」の3つの機能がある。 |
大規模言語モデル (LLM) | Large Language Model | 大量のテキストデータを使ってトレーニングされた自然言語処理のモデル 。一般的には大規模言語モデルをファインチューニングなどすることで、テキスト分類や感情分析、情報抽出、文章要約、テキスト生成、質問応答といった、さまざまな自然言語処理(NLP)タスクに適応できる。Googleの「BERT」や、OpenAIの「GPT-3」などが代表例。 |
自然言語処理 (NLP) |
Natural Language Processing |
人間の言語(自然言語)を機会で処理し内容を理解し分析する技術 。従来は機械的解釈による不適切な変換/翻訳になっていた長文や文章に対しても的確な処理が可能。 クリーニング処理、文章の単語分割、ストップワード除去、単語のベクトル表現等の前処理を行う。インターネット上の大量のテキストデータの解析や非構造化データを処理できるため、マーケティング分野で活用等が多い。 AzureではAzure Cognitive Service for Languageがこれを提供する。 |
機械学習 | Machine Learning | 大量の訓練データからパターン学習させることで未知のデータを判断するルール獲得する人工知能。 AzureではAzure Machine Learningがこれを提供する。 |
ディープ ラーニング (深層学習) |
Deep Learning | 機械学習の一種。Deep(深い)とは、情報処理をする階層が多いという意味で、ニューラルネットワークにおける中間層(隠れ層)の数を増やしたり、特に重視する条件などの重みづけを行って、より複雑な判断や細やかな処理が出来る機械学習の手法。 |
ニューラル ネットワーク |
Neural Network | 入力を線形変換する処理がネットワーク状に結合した数理モデル。機械学習において、分類・回帰・生成など様々なクラスのタスクに教師あり/教師なし問わず利用される。 |
Azure OpenAIとは
MS-Learnの記載は以下の通り。
Azure OpenAI Service は、MicrosoftとOpenAIのパートナーシップによって実現。 このサービスは、Azureのエンタープライズレベルの機能とOpenAIの生成AIモデルの機能を組み合わせたものです。
Azure OpenAIは、Microsoft社が提供するクラウドサービスAzure上で、OpenAI3が開発した自然言語処理のAIモデル「ChatGPT」をRestAPIで提供する。
これにより、Azureクラウドプラットフォームで提供される他のサービスと統合したAIソリューションを構築できる。
Azure Open AIの利用にあたってのAPI認証はAzure OpenAI API KeyまたはAzureADを利用する。インターネット利用に加え、閉域網においても利用可能なため、セキュアな環境でChatGPTと通信を行いたい場合にも、最適な選択と言えると思います。
Microsoft AI ポートフォリオの図
Azure Open AIサービスの全体像です。
(この図を一番最初に見るべき!!でしたが、私は30日スキルチャレンジのMS-Learnを順番に読んでいたので効率が悪かった)
MS-LearnのMicrosoft Azure AI Fundamentals: 人工知能の概要 > Azure OpenAI について説明する より図を転載して書き込みしてあります
この全体感を念頭において、部分(各サービス仕様を把握)の学習を進めて行くのが良いと思います。
では、上図ポートフォリオの一番下段から、
- MLプラットフォーム(Azure Machine Learning)
↓ - 人工知能(Cognitive Service)
↓ - AIワークロード(AIサービス)
の順に関連する用語を簡単に纏めます。
1.MLプラットフォームを理解するための統計学の用語
Microsoft AI ポートフォリオの最下層に位置づけられ、基盤となるサービスを提供する「MLプラットフォーム(Azure Machine Learning)」の理解を深める統計学の用語です。
用語 | 原語(英語) | 説明 |
---|---|---|
データサイエンス | Data Science | 数学、統計学、機械学習等の科学的な学術をベースにプログラミング等のIT技術を駆使して、データから組織や業務に関するビジネス視点で有用な結論や知見を導き出し、意思決定をサポートするアプローチのこと。 |
予測モデル | Prediction Models | 過去データにに基づいて、将来発生する可能性の高い事象を予測する統計学的モデルのこと。 事象(条件)を 特徴 x で表し、予測したい値を ラベル y と表す。 特徴をラベルに適合させる予測モデル(関数)は Y = f(X) となる。 モデルを使用して予測を行うことを、推論 と呼ぶ。 |
教師あり学習 | self-supervised learning | 機械学習の一つ。 「出力すべきもの」を予測可能 にするために、訓練データを読み込ませ、特徴(条件)とラベル(予測したい値)を例題(教師からの助言)として学習させる。これにより相関関係を求め、予言「y=f(x)」を獲得し、出力すべきものが予測可能なAIを開発できる。 回帰 、 分類 がこれに該当する。 |
教師なし学習 | Unsupervised Learning | 機械学習の一つ。 「出力すべきもの」があらかじめ決まっていない 。 クラスター分析 がこれに該当。 |
回帰 | Regression | "教師あり" 機械学習手法の一つ。 ラベルの特徴と既知の値の両方を含むデータを使用してモデルをトレーニング し、モデルが特徴の組み合わせをラベルに "適合させて" 学習する。モデルを訓練するために既知のラベル値を持つ過去のデータを使用する。さらに線形回帰と非線形回帰と時系列回帰に分類される。 |
線形回帰 | linear regression | 回帰の一種。 特徴xに対しラベルyが線形またはそれに近い値 で表される状態。非線形回帰と対比される。 |
分類 | Classification | "教師あり" 機械学習手法の一つ。データを複数のクラス(グループ)に分類すること |
クラスタリング | Clustering | "教師なし" 機械学習手法の一つ。与えられたデータを 外的基準なしに自動的に分類 する。データの分類が階層的になされる手法と、特定のクラスタ数に非階層に分類する手法がある。 |
2. Cognitive Services
Microsoft AI ポートフォリオの下から中間層に位置する 人工知能(Cognitive Service)に位置するサービスについて。
Azure Cognitive Serviceには、ビジョン、音声、決定、Azure OpenAI Serviceの5つの柱で構成される。
MS-Learnの「Azure 上で AI ソリューションの開発を準備する」の記載内容を引用すると以下の通り。
用語 | 原語(英語) | 説明 |
---|---|---|
視覚 | Vision | 視覚処理を扱うAI。画像分類、物体検出、セマンテックセグメンテーションではマスクレイヤーを重ねて特定の物体を強調表示したり、画像分析をしたり、顔検出したりOCR(光学式文字認識)が可能。 |
音声 | Speach | 音声を入力として認識し、音声出力を合成する機能。 音声機能とテキストの NLP 分析を適用する機能を組み合わせて使用すると、会話型 AI と呼ばれるようになった人間とコンピューティング間の対話形式が可能になります。これにより、ユーザーは別の人間との場合と同じように AI エージェント (通常は "ボット" と呼ばれます) と対話できる。 |
言語 (テキスト分析) |
Language (Textual Analysis) |
自然言語処理 (NLP) を使用して、"読み取り" だけでなく、テキスト ベースのデータからセマンティックな意味も抽出する機能。 |
意思決定 | Dicision | 過去の経験と学習した相関関係を使用して状況を評価し、適切なアクションを実行する機能。 たとえば、センサー測定値の異常の認識や、障害やシステムの損傷を防ぐための自動アクションの実行など。 |
生成AI | OpenAI Service | Azureのエンタープライズレベルの機能とOpenAIの生成AIモデルの機能を組み合わせたもの。事前トレーニング済みの生成AIモデルを利用したり、カスタマイズして独自のAIモデルを調整できる機能がある。 |
3.AIワークロード(AIサービス)
Microsoft AI ポートフォリオの最上層に位置する「人工知能(Cognitive Service)」に位置する適用されるサービスについて。
サービス名 | 説明 |
---|---|
Bot Service | エンタープライズレベルの会話型AI ボットを設計して構築できる。 |
Cognitive Search | Web、モバイル、エンタープライズ アプリケーションに、プライベートで異種のコンテンツに対するリッチな検索エクスペリエンスを組み込むためのインフラストラクチャ、API、およびツールを開発者に提供するクラウド検索サービス |
Form Recognizer | 高度な機械学習を応用して、テキスト、キーと値のペア、テーブル、構造をドキュメントから自動的かつ正確に抽出する AI サービス。事前定義済みモデルを使用して、独自にモデルをトレーニングしなくても、インテリジェントなドキュメント処理をアプリやフローに追加できる。 |
Video Indexer | 保存されたビデオから AI を使用して実用的な分析情報を抽出するビデオ分析サービス。広告の挿入、デジタル資産管理、メディア ライブラリを強化できる。 |
Metrics Adviser | 時系列の異常検出機能。ユーザーデータに最適なアルゴリズムを選択できる。スパイク、低下、周期的パターンからの逸脱、傾向の変化を、一変量および多変量のAPIで異常検出し、売上収益や製造業務を含む組織の成長要因のパフォーマンスを監視する。 |
Immersive Reader | テキストの読解を補助する機能をアプリケーションに埋め込む。読み上げ、別の言語への翻訳、特定のテキスト行の強調表示、図解を使った語句の意味の視覚化など、さまざまな感覚に訴える多言語の学習機能を対象ユーザーに提供する。 |
最後に
AI-900の出題範囲として、上記Azure AIサービスに関する内容の他「責任あるAIのガバナンス」が含まれますが、MS-Learnを読めば十分なので、この用語集では触れません。
おまけ
初めてのAzure認定試験の受験の感想
筆者がAWS-SAA4を取得した時の感想は、市販の書籍が充実しているのは有難いですが、実際の試験問題も違和感のある和訳が多いため、英語が得意でない場合にその辺で苦戦しました。また、教科書だけではイメージがつかめず実際にハンズオンしてみたら、うっかり課金されてしまったりする点もネックです。
一方でAzureは、MS-Learnや本試験問題の方も無理のない和訳の日本語なので十分理解把握が可能で、しかもハンズオンLaboまであるのがありがたいです。ただし、膨大なMS-Learnを読み進めるのは大変なので、速読で一気に効率よく読む工夫が必要かなと思いました。
筆者はこれでAWSとAzureの両方の受験経験を得たわけですが、Azureは現在伸びており、またAIではかなり優勢なこともあり、モチベーションはアップしました。
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AI-900:機械学習(ML)と人工知能(AI)の概念および関連するMicrosoft Azureサービスの基礎知識の認定試験 ↩
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Microsoft Learn:Microsoft製品に関するドキュメントやハンズオントレーニング、認定資格をまとめた無料の学習コンテンツサイト ↩ ↩2
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OpenAI:2015年にサム・アルトマン、イーロン・マスクらによって設立された営利法人OpenAI LPとその親会社である非営利法人OpenAI Inc. からなるアメリカの人工知能(AI)の開発を行っている企業。2018年にイーロンマスクが離脱。2023年にMicrosoftが100億ドルを出資し,49%の株式を保有する。
「汎用人工知能が人類すべてに利益をもたらすことを保証する」ことを目標に掲げる。 ↩ -
AWS 認定ソリューションアーキテクト – アソシエイトは、幅広い AWS のサービスにわたる AWS テクノロジーに関する知識とスキルを示す認定試験 ↩