TypeScriptでDouble Checked Lockを使う

Double Checked Lockとは？

Double-checked lockingとは、通常は複数スレッドから参照される変数を高速、かつ安全に初期化するために利用される手法です。

• 初期化処理は一回しか動かしたくない→ロックが必要
• 初期化中のインスタンスは利用できない→ロックが必要
• 初期化完了後はできるかぎり高速に動作させたい→ロックしたくない

ロックが必要だけど、ロックしたくない。この相反する要求を満たすために、ロックをせずにまずは確認を行い、初期化が必要なときにはロックを取得して再度確認を行う。２回確認するのでDouble Checkedと呼ぶわけです。

TypeScriptなら不要では？

通常シングルスレッドで動作するTypeScript環境ですが、非同期処理が存在します。複数の非同期処理から参照される変数を高速、かつ安全に初期化するためにはこの手法が有効になります。

実際のコードは下記のようになります。

export class LazyInitializer<T> {

    protected _target: T | undefined
    protected _synchronizer = new Semaphore(1)

    constructor(protected readonly _factory: () => Promise<T>) {
    }

    async get(): Promise<T> {
        if (this._target !== undefined) {
            return this._target
        }
        await this._synchronizer.synchronized(async () => {
            if (this._target === undefined) {
                this._target = await this._factory()
            }
        })
        // this._target cannot be undefined unless factory returns undefined
        if (this._target === undefined) {
            throw new SynchronizerInvalidError("factory returned undefined")
        }
        return this._target
    }
}

注：TypeScriptには標準でSemaphoreは存在しないので、Semaphoreは別途実装が必要です。
https://qiita.com/tomohisaota/items/88220c5812b1281e0985

自作ライブラリ ya-syn

今回紹介した実装はya-synの実装の一部になっています。

もちろんSemaphoreもあります！