はじめに
近年、企業は迅速な意思決定と連携を実現するために、さまざまなツールとプラットフォームを活用しています。その中でも、ServiceNowはビジネスプロセスのデジタル化を推進し、ITサービスマネジメント(ITSM)、カスタマーサービスマネジメント(CSM)、HRサービスデリバリー(HRSD)など、多岐にわたる機能を提供しています。一方で、Microsoft Teamsは、リモートワークやハイブリッドワークの普及に伴い、日々の業務でのチーム間のコミュニケーションやコラボレーションのハブとしての地位を確立しています。
こうした背景の中で、ServiceNow for Microsoft Teamsは、これらの2つの強力なプラットフォームを統合し、業務効率とユーザエクスペリエンスを大幅に向上させます。本稿では、このソリューションの特徴や活用方法を詳しく解説します。
ServiceNow for Microsoft Teamsとは?
ServiceNow for Microsoft Teamsは、ServiceNowとMicrosoft Teamsをシームレスに統合し、ユーザーがTeams上でさまざまなServiceNowの機能を直接利用できるようにするソリューションです。この連携により、ユーザはTeamsから離れることなく、リクエスト、インシデント起票、承認作業などを効率的に行うことが可能になります。
主な機能と利点
Virtual Agentチャット
Teams上でServiceNowのVirtual Agentを利用することで、ユーザはシステムやアプリケーションに関する質問や問題の解決をチャット形式で行えます。これにより、サービスデスクの負荷を軽減し、ユーザーに素早く問題を解決できる環境を提供します。
下記画面ではTeamsチャット上でServiceNowのVirtual Agent機能を利用しています。こちらで質問をするとチャットボットが返答をし、ServiceNow内にあるナレッジやVirtual Agent Designerで作成した会話をすることができます。
また、右端のタブ「Employee Center」を開くと、Teams画面上で直接Employee Centerを利用することもできます。SSO(シングルサインオン)の設定がされていますので、ログインをせずに利用することができます。
チケット起票と通知機能
チャットボットとの会話だけでなく、インシデントチケットなどの起票もインターフェイスをまたぐことなく可能です。
ユーザはTeams上で様々なチケットを起票することができます。以下ではレコードプロデューサーで作成されたインシデントチケットの起票フローを呼び出しています。
また、通知を設定することにより自分のチケットが現在どのような状態なのかを随時確認することができます。
これにより、ポータルサイトへ行きチケットを確認する手間も必要なくなります。
承認プロセスの効率化
ServiceNow上ではカタログアイテムを利用することで、ITサービスや機器のリクエスト、ソフトウェア申請などさまざまな要求ができます。このような申請アイテムの多くは、上長や担当者の方の申請が必要な場合があります。今回の連携機能ではこの承認プロセスもTeams上で可能にします。
承認の通知を活用することで、承認者はTeams内で直接承認リクエストに応答できるようになります。これにより、承認プロセスが簡素化され、業務の流れを中断することなく、迅速な意思決定が可能になります。例えば、アイテムリクエストの承認や、変更リクエストの承認が、Teams上で数クリックで完了します。上記「チケット起票と通知のリアルタイム配信」のリクエストと一緒に利用することで、起票者(アイテム要求者)と承認者の両方がTeamsのインターフェイスのみで作業を完結させることも可能です。
アイテムの要求をTeamsチャット上で行います。ServiceNowを介することなくさまざまな要求をすることができます。(リクエスター側)
アイテムに承認プロセスがある場合、承認者に対して通知されます。承認者は通知内容を確認し、問題がなければその場で承認作業を行います。(承認者側)
アイテムを要求したユーザには、アイテムが承認されたことがリアルタイムでわかるようになります。
ライブエージェントとのチャット
ユーザからのインシデントチケットに対して、オペレータはTeamsチャットをオープすることができます。オペレータ側の判断で即座に対応が必要となれば、「Start Microsoft Teams Chat」からチケット起票者とのチャットを開始できます。また、チャットにはアサインされたオペレータ以外も招待することができます。
チケット名でのチャットがこのように開始されます。ここで問い合わせに関する詳細なやり取りをすることができます。
また、Teams上のチケットのやり取りは以下のようにIncidentチケットに同期されます。
しばしばオペレータの業務として、Teamsやメールでのやり取りをServiceNow上のチケットに転記する作業があるかと思います。このような作業は手間と時間がかかる割に、転記ミスによるオペミスが起こりやすいという難点があります。そのようなミスを今回の連携機能では未然に防ぐことができます。
また、先ほどはオペレータ視点でのチャット開始機能でしたが、ユーザ側からもライブエージェントとの会話を要求することができます。
↓こちらはライブエージェントの視点。Workspace上でチャットを受け取ることができます。
Workspace上でもTeamsチャットと同様にリアルタイムでのやり取りができるため、ユーザの問題に対して迅速な対応をとることができます。
まとめ
ServiceNow for Microsoft Teamsは、業務効率を最大限に引き出し、ユーザエクスペリエンスを向上させるための強力なソリューションです。リアルタイムな通知や承認プロセスの迅速化、Virtual Agentを活用した問題解決など、企業のデジタルトランスフォーメーションを加速させる要素が満載です。今後のビジネス競争力を高めるために、ぜひこのソリューションを活用してみてはいかがでしょうか。
次回予告
次回の記事ではServiceNow for Microsoft Teamsの導入方法を、ステップバイステップでわかりやすくご紹介したいと思いますので、ぜひまたご覧になってください。
参考ドキュメント