はじめに
前回、「AIという言葉」について書いたのですが、
それに関連して2年前くらいから流行り初めて、去年爆発的に流行り
今年になって落ち着いてきている「Watson」についてすこしだけ触れてみます。
ディスりたいわけではないので注意して書こうと思っていますが、
どこの企業に言って聞いても「Watson」に対して大きな誤解をされているように感じます。
「AIっていうのは何か?」というのがエンジニアでさえ理解しにくいほどわかりにくいから、
「AIという言葉を自分の会社の得になる概念として使ってしまおう」的な雰囲気があり、
嘘ではないが、誤ったイメージで利用者側に伝えているような風潮があるように感じてます。
その1つが「Watson」。
いままで行った企業のIT企画部ののほぼすべての方が誤解していたので、
おそらく誤解を促進させている人たちがいるんだろうな、、、と思う。
それによって、IBMが売りやすくなるってのは別にいいけど、
AI系の技術全般のイメージに誤解が生まれることで
テクノロジーの進歩の妨げになったら嫌だなとは思う。
#Watsonという言葉
Chat Botのシステム全体のことを「Watson」と呼んでいる人がすごく多いように感じる。
「Watson」= ChatBotシステム全体 = 「AIシステム」というのは誤解で、ChatBotシステム全体の一部の部品としてWatsonを使っており、さらにはそのWatsonの中でAI系技術が一部使われているというのが、正しい認識と私は考えている。
Watsonを使ったChatBotシステムのアーキテクチャには、Watson独自仕様が入っている部分もあるが、Watson以外で実装しても大方のアーキテクチャは変わらない。
■誤解されているWatsonの範囲
多くの方が誤解しているWatsonの範囲
#この誤解を正すことで言いたいことは
- Watsonは学習によっては優秀になるかもしれないが、それは一部の部品としてであってChatBotシステム全体の質ではない
- 最も課題になりやすい学習データ①と②の作成作業は、Watsonを使ったシステムに限ったことではなく、他社の製品を使ったとしても原則ほぼ同じである。
- IBMのWatsonチームしかChatBotシステムを作れないということはなく、他社製品で他社メンバでも問題なく作れる
- ChatBotシステムを作るためのWebAppやDB、開発言語などは特定のものに決まっているわけではない。言語はJavaScriptではないとダメなんてこともない。
あとよく誤解されているが、学習データ②の「質問に対する回答文」は、AI部品が勝手に作ってくれるわけではない。
例えば、IT部門への問い合わせFAQのようなBotだとして「PCがネットワーク繋がない」という質問が来た時に、AIが自発的にPCのネットワーク環境を調査して「貴方の在籍しているフロアのWiFiが一時的に障害が起こってます」なんて気をきかせてくれることはなく、その答えの文章を事前に用意しておいてあげないといけない。
よって、回答文章がなければそれを作る作業がChatBotシステム開発の工数の中で最も大きいということがよく有る。回答文を作るためには業務知識が必要なので、ITベンダでは作業できない可能性がある。
実際、学習データを作るのが大変で火を吹いているプロジェクトのはこのパターンで、
AI技術でできる範囲を見誤った要件設定をしている失敗だと思われる。
#おわりに
客のChatBotへの期待としては「超優秀な即戦力になる24時間戦える社員が入ってきた」という感じが多いようにみえる。
しかし、実際は「赤ちゃんを渡されて、頑張って育ててね」と言われる。
かなりのお金をかけて育ててみたけれどやはり費用対効果に見合わず、
「育児放棄しよう」といいたいが、今まで支払ったコストがもったいなくて放棄できない。
そんな感じが去年だったように思う。
そして今年になって、やっと少し進んで「小学生」くらいのレベルのAIに変わってきたように思う。
Microsoft製品を例に上げると、WatsonのNLCと同じような機能の「LUIS」は、
Bingの蓄積データから一般的な会話をある程度学習済みであり、言葉のゆらぎ・言い回しについては
ある程度カバーしてくれるようになってきた。※日本語はまだまだだけど。
またMicrosoft QnA Makerは、「部品①自然言語解釈」と「部品②適した回答を検索」を一つにまとめてしまい、かつQ&Aに特化した会話のやりとりの学習をある程度済ませてくれている。
まだ「小学生」レベルであっても得意な作業に限定してやれば、かなりのパフォーマンスが出せるようになるだろう。
今後は、こういった基礎知識を事前に学ばせてくれているAI部品が増えてくるだろうと予想される。
この調子なら、あと2年くらいで「新卒学生」くらいまで育ってるAI部品も使えるんじゃないかと期待している。