みなさん、こんにちは! 本記事では、Jeli Post Incident Review機能についてお話ししたいと思います。PagerDutyの一部として提供されるこの新しいポストインシデントレビュー機能は、インシデント後の分析と学習プロセスを革新的に改善する強力なツールです。「インシデントの振り返り」って聞くだけでため息が出そうな方・・・ぜひ最後まで読んでくださいね。きっと、新しい発見があるはずです!
(補足)Jeliについて
Jeliは2019年に設立され、2023年にPagerDutyによる買収により一部となりました。特徴として、複数データソースの統合、自動レポート生成、主要3rdパーティーツール(Slack, JIRAなど)との連携があります。
Jeli Post Incident Review の主要機能
1. 高度なポストインシデントレビューの実施
Jeliは、従来の手動によるインシデント分析を超えた、包括的かつ効率的なポストインシデントレビュープロセスを提供します。これにより、インシデントデータを体系的に収集・分析し、重要な洞察を抽出することが可能となります。
2. PagerDuty Advanceによる自動レポート生成
PagerDuty Advance for Post-Incident Reviewsによる生成AI技術を活用にて、インシデントレポートを自動生成することが可能になります。生成AI活用により:
- レポート作成時間の削減
- 人的エラーを最小限に抑制
- 一貫性のある高品質なレポートを作成を支援
自動生成されたレポートはAIによって自動生成された旨のインジケーターが表示され、レビュー実施時に人による追加編集による微調整なども、もちろん可能です。
[PagerDuty Advanceとの連携によるレポートSummaryの自動生成]
3. チャンネルインポート機能
Slackチャンネルを直接Jeliにインポートする機能により:
- インシデント対応中の全ての関連会話を包括的に分析
- コンテキストの損失を最小限に抑え、より正確な分析が可能
- 時系列に沿った詳細なインシデントの流れを再構築
Jeli Post Incident Reviewがもたらす組織的な価値
- 効率性の向上: 標準化されたプロセスの提供により、インシデント分析をより効率的に
- データ駆動型の意思決定: AIによる分析と洞察により、より客観的で信頼性の高い意思決定が可能に
- 組織学習の促進: インシデントから得られた教訓を体系的に蓄積し、組織全体で共有することで、継続的な改善を実現
- リスク管理の強化: 過去のインシデントパターンを分析することで、将来的なリスクを予測し、予防措置を講じることが可能に
- コンプライアンスの向上: 詳細かつ一貫性のあるインシデントレポートにより、規制要件への適合を容易に
Jeli Post Incident Reviewの作成
前提.
Jeli Post Incident Review機能を利用するには、事前にいくつかの設定ステップを完了しておく必要があります。詳しくはこちらをご参照ください。
新しいインシデントレビューを作成
解決済みのPagerDutyインシデントから、「+Jeli Post Incident Review」ボタンをクリックして、Jeli Opportunityを作成します。
「Create a Jeli Postインシデント Review」のプロンプト内容を確認し、「Accept & Continue to Jeli」をクリックする。
生成されたレポートの確認と編集
自動生成されたレポート("Opportunity") が表示されます。
レポートには以下の構成要素が含まれています(上記画面ショットの赤枠部分):
- Overview: インシデントおよびその調査の概要を記載(Markdown形式での記載対応)
- Narrative: "Narrative Builder機能によりインシデントの対応内容について時系列にて記載でき、インシデント対応時の発見や整理、共有をより効果的に行うことが可能
- People: インシデント対応メンバーのインシデントへの関与と役割を提供
- Takeaways: レビュー会議で振り返り要点を記録し、議論された内容の記載場所として提供
- Action Items: 特定された修復手順と将来の改善を文書化して追跡するための構造化された方法を提供(JIRAとの連携)
- Attached Resources: インシデントやインシデント調査に関連するファイルをアップロード可能(サポートされるファイル形式:.pdf, .rtf, .txt, .vtt(Zoom) )
レポートの各セクションを確認し、必要に応じて編集や追記を行います。
Overview(概要)
Overviewは主要となる次の3つのパートが提供されており、入力が可能
- Summary: エグゼクティブサマリー/要旨を記載
- Key Roles: Jeli Post Incident Reviewにおける主要な役割を担当者ごとにアサイン
- Opportunity Tag: 適切なタグ付けを実施(後からの検索においてタグ指定での検索が可能)
Narrative(Builder)
Narrative Builderは、インシデントのタイムラインを作成・整理したり、”イベントマーカー”機能によるインシデントのキーモーメント(重要な局面/分岐点/キーポイント)が記録可能となり、より視覚的にインシデントの情報を共有することが可能となります。
またイベントマーカーを追加する際に、「+Add Supplemental Evidence」(補足情報の追加)ボタンを押すことにより、画像・リンク・テキストなどの追加のコンテキストを付加することも可能です。
People
Peopleタブでは、インシデントに誰が関与していたかを明らかにします。
また世界地図ビューでは、さまざまなタイム ゾーンでインシデント発生時に誰がどのように連携したかを確認できます。
Takeaways(学び・得られた知見)
Takeawaysでは調査の過程で学んだことをベースに、テーマを定め、より深掘りした質問や疑問点の洗い出し、見つかった課題点などを記載し、共有します。
Action Items
そして、レビュー作成のための調査、およびそれを用いたレビュー会議を通じて特定された改善策や取り組みを記録するため、Action Itemsタブを使って記録します。
Attached Resources
ここでは、そのほかにインシデントに関連する情報やファイルを添付することができます。
(サポートされるファイル形式:.pdf, .rtf, .txt, .vtt(Zoom) )
Jeliを使ったインシデントレビューセッションの開催と準備のコツ
インシデントレビューセッションは、組織の学習と成長にとって重要なプロセスとなります。Jeli Post Incident Reviewを活用することで、より効果的なレビューを行うことができます。以下に、Jeliを使ってインシデントレビューを準備する際の5つのポイントをご紹介します。
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マーカーにサマリーを追加する
何が起こっているのかを簡単に説明できるよう、各マーカーにサマリーを追加しましょう。これにより、インシデントの流れを一目で把握することができます。 -
各マーカーにノートを付ける
さらに詳しく知りたい点や重要なポイントを強調するため、各マーカーにノートを追加します。これは、後のディスカッションや分析の際に非常に役立ちます。 -
複数のマーカーを使ってタイムラインや関連性を描く
一つの種類のマーカーにこだわる必要はありません。複数のマーカーを使用することで、インシデントの複雑さや、理解と行動の間の様々な対応・行動履歴を効果的に表現できます。これにより、より鮮明にインシデントの全体像を描くことができます。 -
Peopleタブを活用する
レビューに誰を含めるべきか、誰が関与していたのかを理解するために、Peopleタブを使用しましょう。これにより、適切な関係者全員がレビューに招集できるようになります。 -
Jeli Notes機能を使って事前に質問を共有する
レビュー中に意見を求める予定の人々に、Jeli Notes機能を使って事前に質問を共有しておきましょう。これにより、参加者は事前に何を話すべきか?などの準備をしてから臨むことができ、より生産的なディスカッションが可能になります。
上記のポイントをおさえることで、Jeliを使ったインシデントレビューの質と効率を向上させることができます。十分な準備を行うことが、インシデントからの学びと組織全体の改善の最大化にもつながります。
従来型のPagerDuty Postmortem機能との位置付け
ご存知のように、PagerDutyにはBusinessプラン以上で利用可能なPostmortem機能が以前より提供されております。当記事でご紹介するJeli Post Incident Review機能は、一見似ているようですが実は異なる特徴と強みを持っています。
Postmortem機能: 基本に忠実な振り返り
位置付け
PagerDuty Postmortermは、PagerDutyの基本機能の一部として提供されています。主に、インシデント対応後の標準的な振り返りプロセスをサポートすることを目的としています。
主な特徴
- テンプレート機能: 標準化されたテンプレートを使用して、一貫性のある振り返りレポートを作成できます。
- タイムライン表示: インシデントの経過を時系列で確認できるため、対応の流れを把握しやすくなっています。
- アクションアイテム管理: 振り返りで特定された改善点を追跡し、管理することができます。
- PagerDutyとの統合: インシデントデータを自動的に取り込み、レポート作成の手間を軽減します。
メリット
- 使いやすさ: (PagerDutyの他の機能にも当てはまりますが)直感的なインターフェースで、すぐに使い始められます。
- 一貫性の提供: 標準化されたプロセスにより、チーム全体で一貫したアプローチを取ることができます。
- 効率性: 基本的な振り返りプロセスを効率化し、時間を節約できます。
Jeli Post Incident Review:生成AIも活用した、より深い洞察を
位置付け
Jeli Post Incident Reviewは、PagerDutyが買収したJeli社の技術を活用した高度な分析ツールです。より深い洞察と学習を目的としており、最上位であるEnterpriseプランの一部として提供されています。
主な特徴
- 分析の深さ: 生成AIを活用したより深い分析が可能
- 自動レポート生成: PagerDuty Advanceにおける生成AIとの連携により、詳細なインシデントレポートを自動生成し、分析時間を大幅に削減します。
- チャンネルインポート: Slackのチャンネルを直接インポートし、インシデント対応中の全会話を分析できます。
メリット
- より深い洞察・気づきの提供: 生成AIによる分析活用により、人間では気づきにくいパターンや傾向を発見の支援を行います。
- 時間節約: 自動レポート生成により、分析にかかる時間を大幅に削減できます。
- 包括的な分析: チャットログなども含めた広範なデータを分析対象とすることで、より全体的な視点を得られます。
詳しくは、こちらのナレッジベース記事にもまとめられておりますので、ご参照ください。
まとめ
Jeli Post Incident Reviewは、単なるインシデントの振り返りツールを超えた、組織の回復力と学習能力を高める戦略的ソリューションとも言えると考えています。PagerDutyの一部として提供されるこのツールは、現代のIT運用における複雑性と速度に対応し、組織がインシデントから最大限の学びを得るための強力な味方となり得ます。
インシデント管理プロセスの最適化を目指す組織にとって、Jeli Post Incident Reviewはきっと新しい風を吹き込んでくれソリューションといえるでしょう。