年末年始にやることがないと
今日何しようか考えて
それで一日が終わってしまうことありますよね。
むしろそんな日ばかりですよね。
ね(圧)。
こんにちはとみーです。
今日は私の専門であるレーダについて書こうと思います。
というのも、以前コスタスアレーについて記事を書き、その中でレーダについて言及したところ、「レーダって数学で動いてるんだと関心」という反応がありました。
これはレーダについて書くしかねぇので(2018/8/13 テレビ東京「ひらがな推し」参照)、本当に基礎の基礎から連載(私の気が持つまで)で書きます。
今日のトピックスは以下の通り
- レーダの3つの仕事
- アンテナとは
- アレーアンテナとは
- レーダの構成
#レーダの3つの仕事
レーダは3つの量を測定もしくは推定できます。
- 対象物との距離
- 対象物の自分に対する相対速度
- 対象物の方向
1と3合わせて「位置」と言うこともできますが、基本的に距離と方位は別のアルゴリズムで処理するので、ここでは分けておくことにします。
距離と速度(ここでは相対速度を指します)は「測定」、方位は「測定」もしくは「推定」になります。
測定とは
様々な対象の量を、決められた一定の基準と比較し、数値と符号で表すこと。(Wiki)
であり、推定は
標本から母集団の統計学的な性質を推測すること。(Weblio)
です。距離と速度は、対象物から跳ね返った電波の周波数や時間遅れを測定し、そこから直接数式の計算によって導きます。一方で方位推定は、アンテナに受信された電力に「重み」と言われる恣意的な複素数を掛け合わせて、評価指標の値を最適化することで方位を導きます。
#アンテナとは
そもそもレーダはアンテナによって電波を放射しています。アンテナとは「電気回路上のインピーダンスと空気中のインピーダンスを仲介して、空中に電力を放出する媒体」と表現しておきます。交流の波を空中に放出するものなので、水面に波が伝搬するように、空中に電界の進行波ができます。放射された波は、アンテナの大きさを無視できるような十分遠い距離で観測すれば、球面波として伝搬します。理想的なアンテナを使用する場合、方位によって放射された電界の強度はほぼ等しく、全方位に等しく電波をばら撒きます。
実際のアンテナは各々が固有の特性を持つので、こんな放射になったりします。
これは微小ループアンテナと言うアンテナの例で、横方向には全く放射しない性質があります。
#アレーアンテナとは
前節の通り、アンテナは基本的には「全方位に等しく電波をばら撒く」のですが、電波を飛ばす必要がない方位があった場合、その方位への放射電力は無駄になってしまいます。当然S/N劣化の原因です。
この辺からややこしくなってくるかもしれませんが、解決策としては2種類あって
- その方位に放射しないアンテナを設計する
- アンテナをたくさん並べて、それぞれのアンテナの放射に時間差(位相差)をつけ、波の重ね合わせによって特定の方向の電力をカットする。
1でも2でも電気的に制御可能にできるのですが、2の方が作るのが簡単でデジタル処理しやすいです。1はハード設計に依存するところも大きく、アルゴリズムに制約がかかったりするので、一般的には選択されません。
試しに先の理想アンテナを半波長間隔で2つ並べ、同相で放射してみましょう。こんな感じになります。
少し正面方向への放射が強くなりました。では90deg.位相をずらして放射したらどうなるでしょう。
斜めに強く放射するようになりましたね。位相の進み方は球面状ですが、電力の大きさはアレーアンテナによってコントロールできます。この電波を十分遠方で観測したときの、観測電力の大きさをプロットしたものを「指向性」と呼びます。この90deg.位相差のついた理想アンテナの指向性はこう表せます。
青線は鉛直方向の指向性なので、今は無視してください。赤色が水平方向の指向性で、上のアニメーションに対応しています。0degが正面方向です。このアレーアンテナは30deg方向には全く電波を放射しないアレーアンテナであると言えます。逆に、-30deg方向(330deg方向)に最も電波を放射するアレーであることもわかりますね。
アレーアンテナの利点として、「いらない方向に電波を打たずに済むし、いらない方向の電波を受信しなくて済む。いらない方向は、その時々によって操作可能である。」と言うことだけ理解しておいてください。
そして、アレーは電波の受信にも同じことが言えます。イメージしにくいでしょうが、各アンテナの受信電力に意図的に位相差をつけて合成することで、いらない方位の電力を受信しないこともできます。
#レーダの構成
ここでレーダの基本的な構成を示しておきます。いろんな方式があるのですが、基本的な構成としてSIMOレーダを紹介します。SIMOとはSingle-input Multi-outputのことで、電波放射用のアンテナが1つ、受信用が複数ある構成です。放射用が複数あるものをMIMOレーダといいますが、難しいので今はおいときます。
SIMOでは放射用アンテナが1つなので、とりあえず全方位に電力をばら撒き、受信アレーでいらない方位や必要な方位を取捨選択するイメージです。
放射側には位相差などつける必要がないので、特別な処理はしません。受信側は、それぞれに位相差をつけたり、場合によっては電力差をつけたりするので(これが重みづけってやつです)、いろんな方式がありますが、以下の構成で理解しておくとわかりやすいでしょう。
Digital Beam Formingとは、コンピュータ処理で重みづけを行い、仮想的に指向性を生む手法のことです。元の受信信号を保持しながら自由にサンプルを使えるので、用途の多いレーダにはもってこいの方法です。
#まとめ
今回は初歩の初歩を解説していきました。今回のまとめとしては以下のとおりです。
- レーダは「距離」「速度」「方位」を測定、推定するシステム
- アンテナは球面波を放出するが、放射強度はアンテナによって固有の特性がある。
- アレーアンテナを構成することで、自由に指向性を形成することができる。それにより、方位ごとに電波の取捨選択が可能。
- SIMOレーダはとりあえず電波をばらまいて、受信アレーアンテナで信号処理を行う。
今回はこれくらいでいっぱいいっぱいです(私が)。次回は距離、速度推定の話をしようと思います。