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いまこそ四原色の名誉を回復する(ヒトは四原色)

Last updated at Posted at 2019-02-03

昔、シャープが四原色テレビを売り出し、「ヒトは三原色だから」という理由で貶めされたことがあった(中途半端に知を得たために、無知の知がなくなった(そこそこ良い大卒くらいの)大衆が溢れるネット上で)。

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1148802701
…など、「ヒトが三原色」と多くの箇所で説明されているが、そもそもこれが大間違いなのである。

引用

図の引用は全て
https://www.ccs-inc.co.jp/guide/column/light_color/vol30.html
https://www.ccs-inc.co.jp/guide/column/light_color/vol31.html
https://www.phileweb.com/review/article/image.php?id=144&row=9
からさせて頂いた。

ヒトは四原色である

全ては https://www.ccs-inc.co.jp/guide/column/light_color/vol30.html の img09の図でわかるのだが、このように、ヒトの目の光受容体には4つの周波数ピークがある。

img09.jpg
(img09の図)

「L錐体のminorピークは S錐体とほぼ同じやん」と思ってしまったなら、この下を読んで、工学的センスを身につけてほしい。

4つピークがあることは、自然界でも色のバリエーションを増やすのに与しているが、自然を再現しようとする工学的営みになると更に大きな問題が生じる。

xy色度図(人間が識別できる色の範囲) https://www.ccs-inc.co.jp/guide/column/light_color/vol31.html の img1 が自然界(を認識する人間の認識界)に現れる色だが、この再現手法(工学的アプローチ)が今回の問題である。
img1.jpg
(img01、色度図)

このxy色度図の「大部分」は3つの刺激を与えれば再現できる。それは img09のS錐体、M錐体、L錐体(majorの方)のピーク刺激(445nm,560nm,605nm)である。

ところが、色度図上には、SとMの間に三原色では再現できない色がある。 img06 でいえば 511nm近くの色である。
img06.jpg
(img06)

img09.jpg
(img09、再掲)

ここでimg09を見返してもらうと分かると思うが、511nm付近は、S錐体は反応するが、L錐体は全く反応しない波長帯であり、これがS錐体とL錐体(minor)の違いであり、それゆえ、L錐体(minor)をS錐体とは異なる四原色目としなければならない理由なのである。

詳しくいうと、

445nmの単色光が与えられたとき、S錐体は1.8の出力、L錐体は0.35の出力 (Sの5分の1)
510nmの単色光が与えられたとき、S錐体は0.18の出力、L錐体は0.0の出力 (Sの数万分の1以下)

となる。L錐体に2つのピークを持たせ、他の錐体の出力と合わせて用いることで、L錐体の2ピークのうち、どちらのピークなのか判断が可能となったのだった(Sの刺激がない方がmajor)。

これにより、L錐体に510nmの検出という役割と、603nmの検出という役割をもたせることができた。

3原色では510nm域を再現できない理由

img09.jpg
(img09)

そういうわけで、自然界にある510nm単色光が与えられたとき、
S=0.18、M=0.45、L=0.0 の出力

を出すが、既存のテレビの三原色に用いられる原色光は、
445nm光: S=1.8, M=0.05, L=0.18
560nm光: S=0.0, M=1.0, L=0.55
605nm光: S=0.0, M=0.6, L=1.05

の出力を各錐体に行わせる。この三原色をどう組み合わせても、どうしてもL錐体の出力を誘ってしまう。そのため、Lの出力が0.0となる510nm光を再現できない。

科学的認識を支配する権威

ヒトの視細胞が4ピークである以上、三原色では全認識光を再現できないのだが、残念ながら、「光は三原色だから」という理由により、シャープの四原色テレビは貶めされることになる。

日本の水産庁が「データ不足につき追加調査する」と言っていたにも関わらず、国際的機関が出した結果を盲信した鰻の件と同じく、「光は三原色」とする教育を盲信した結果である。

人(というか大衆)が何を信じるかは権威に依っており、上の例で言えば、水産庁より国際的機関、シャープより日本の公教育に権威があったということだった。
しかし、権威者が常に正しいということは全く無い。

実際の製品での四原色

さて、このように「ヒトは四原色なので、三原色製品よりは四原色製品の方が再現色域が高くて当たり前」ということが分かったところで、実際の製品を見てみよう。

https://www.phileweb.com/review/article/image.php?id=144&row=9
QUA-IROSAIGENHANI-KAKUDAI_big.jpg

クアトロンでは、568nm の黄色光を足し、その分、緑を扱う原色光を510nmによせて、510nmピーク近傍の色の再現範囲を広げていて、これは原理的にも効果があると言える。

やはりシャープの名誉は回復されるべきだろう。そして、何につけても大卒は全て工学部卒となるべきなのである。

余談

  1. (科学的に理解しようとする人にとって)運悪く、ヒトは、L錐体(の出力)を低波長域と高波長域で使いまわしていた(低波長域での刺激も、高波長域での刺激も同じ種類の出力として得られる)。
    そのため、等色実験( https://www.ccs-inc.co.jp/guide/column/light_color/vol30.html )において、「高波長域の方のピーク刺激を試料側に足す」という方法により、自然界では四原色目(L錐体のminorピーク色)を使う色をごまかせてしまった。
    等色実験において、青・緑・赤の三原色に拘らず、510nm光を加えた四原色とすれば、全色を再現できたのである。

  2. というか、等色実験で三原色を足しただけでは全色再現できない時点で、三原色でないことは分かることではある。

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