今回はエッセイ的な内容です。
後半は筆者の考えを書いているだけなので、こんな考えもあるんだなと思っていただければと思います。
はじめに
2023年09月にラスベガスで、Oracle Cloud Infrastructure(以降OCI)に関する世界最大イベベント"Oracle Cloud World(以降OCW)"が開催されましたが、その中でAzure とのパートナーシップに関する衝撃的な発表がありました。
【参考】当日のKeyNote
https://www.oracle.com/jp/cloudworld-on-demand/
当日の発表について、背景踏まえて事実を整理した上で、私の個人的所感や想像(妄想)する未来の1つについて、お話でしできればと思います。
OCI - Azure パートナーシップ
2023年度OCW以前までの動き
OCIとAzureのパートナーシップは2019年からから始まっており、大きくAzure InterconnectとODSAの2つのサービスリリースしており、利用リージョンや機能スコープの拡充を図ってきていました。
Azure Interconnect
よくあるオンプレ⇔クラウド間でなく、クラウド⇔クラウド間を専用線でつなぐサービス。オンプレ環境でなく、クラウドベンダ環境同士の接続なので、顧客環境設定がなく
クラウドのコンソール画面からの操作で接続が可能。
- クラウド間専用線接続のマネジメントサービス。
GUI操作から、EP指定でクラウド間の相互接続を実現 - レイテンシは2ms(公表値)
ODSA
Azure Interconnectは環境のNW接続であったが、こちらはサービス利用。
Azure Interconnectを前提として、接続したOCI上のDBを利用するためのポータル。
Azureユーザが使い勝手のよいように、Azureを意識したポータルを提供している。
- 対象はOCI上の”Base DB”、”ExaData”、”Autonomous Databae”、”MySQL HeatWave”
- 接続はAzure Interconnectによるクロスクラウド
【参考】オラクル社の関連情報記事
https://blogs.oracle.com/oracle4engineer/post/ja-odsa-versus-oci-azure-interconnect
OCWでの発表
今までのAzure - OCIパートナーシップでは、他クラウドへ専用線で接続して他クラウド上のサービスを自身のクラウドから開始/利用することが可能となっていました。
つまり、これまではクラウド間連携強化であり、明確に各クラウドの世界が独立していました。
しかし、今回のOCWの発表はAzureのDC内にOCIのDCを構築してサービス利用するといった内容でした。
Oracle Database@Azure
AzureのDC内にOCIのDCを構築することにより、マルチクラウド連携のレイテンシ問題を解決しただけでなく、完全にAzureのコンソールにOCIのサービスがメニューとして取り込まれました。
ユーザ目線では、クラウド連携なく、あたかもAzureのサービスの様にOCIのサービスが利用できるようになっており、他クラウド移行で懸念とされるExaDataやRACがAzure上から利用できるようにみえ、マルチクラウドの垣根を感じさせないものでした。
※一部リージョンのみ、日本未対応
- AzureのDC内へOCI DCを構築することでAzureのサービスとしてOCIのDBサービスを利用可能
- Exa DataやReal Application Cluster(RAC)、Autonomous Database といったOracle環境内でしか利用できなかったDB技術をAzureのコンソールから利用可能に
- Oracleがインフラストラクチャを管理する(OCIのアカウント自体は必要かも)
- DC内なので、レイテンシはマイクロ秒
【参考】Oracle Databse @Azure
https://www.oracle.com/jp/cloud/azure/oracle-database-at-azure/
OCI - Azure パートナーシップから想像(妄想)するクラウドの未来
ここからはエッセイです。
一つの意見として見ていただければと思います。
各クラウドの領域注力
AWSを始めとしたパブリッククラウドの登場により、NWやコンピュート、様々なマネジメントサービスのが提供され、1つのクラウドで大抵の機能を実現可能となりました。
一方、この状況は各クラウド共通の状況であり、ユーザ目線ではどのクラウドでも実現の手法があることは前提であり、構築の容易性やコスト、ナレッジの充足などからクラウドを選定しているケースが多いです。
その中で、各クラウドがなんとなく色を出し始めていると感じています。
OCIを見ても(Oracle DBの経験もあるからか)ユーザフロントより、プラットフォーム系が力を入れているように感じており、Autonomous DBやHeatWave Lakehouseといった魅力的なサービスも多いです。
このように各クラウド、一通りのサービスを提供しつつ、色や強みを出していくことで差別化を図っていくのだと考えていました。
強みの部品化、汎用技術化
そう思っていた矢先、今回のOracle Database@Azureの登場で、OCIというクラウドの持つ強みを1つの部品、ないし汎用技術のように他のクラウドへ取り込むといった新しい発想もあるのではと考え出しました。
ユーザから見れば、オンプレOracle DBからの移行ケースでは、Azure利用のためにやむなくDBプロダクトを変更/更改するリスクはなくなり、逆にやむなくOCIを選択する必要もなくなってきます。ある意味いいとこどりの選択肢が提示されています。
クラウドベンダから見ても、部分的に各クラウドの強みを求めるユーザを確保できている気がします。
では、クラウドアーキとしてみるとどうでしょうか。
今回の例では、DB/データレイヤはOCIであり、フロントサービスや各種Microsoftサービス連携はAzureとなるのかもしれません。つまり、各クラウドの得意領域ごとにクラウドが分かれている構成です。
ある意味、1クラウドで全てを担う前の、各レイヤ事にプロダクトやパートナーが明確に分かれていた時代に近いのではないでしょうか。1つで全てを担うことが前提/常識となった後に待っているのは、再度特異領域ごとにサイロ化された世界なのかもしません。
一方、これは特定クラウドが提供/育ててきたサービスが1つのプロダクトへ成長した結果とも考えられます。
Azureの中でOCI サービスを使うというとまだ少し違和感はあるかもしれませんが、Azureの中でOracle DBを使うということは違和感はありません。
この先もOCIに限らず、他クラウドでも卓越したサービスはプロダクトとして独立して、他クラウドの中で1サービスとして使われていく未来もあるのかもしれません。
クラウド技術者の未来
今回のOracle Database@Azureを受けて、「OCIの技術者として需要はなくなるのでは」といった意見をもらったことがありました。
Azureで完結するなら、無理にOCIを学び利用する必要はないと思うかもしれませんが、私はそうは思っていません。
Azure(もしかしたら、今後他クラウドでも使われるかもしれない)で使っていでも、技術はOCIのサービスの技術です。先程お話しした通り、特定クラウドサービスがあたかも1つの汎用プロダクトの様に各クラウドで使われる未来が来たとしたら、それはより幅広く使われる技術であり、その領域の技術者としての価値は上がるのではないかと思っています。
もし変わるとしたら、今後クラウド間の境界はより曖昧なものになる可能性はあるので、特定クラウドで完結させるよりも、マルチクラウドを意識した最適構成を提案していく必要は出るかもしれません。
そのために、クラウドカットでなく、自身の得意とするテクニカルスタックで横ぐしでクラウドを見る力が求められてくるのかもしれないと、私は妄想しています。
おわりに
今回はOCI - Azureのパートナーシップのお話をさせていただいた上で、考えを書かせていただきました。
(前半は事実ですが)後半は、あくまで1人の技術者の意見でしかなく、なんの確証もないものです。
あくまで1つの考えとして聞いていただき、この先の未来を考えるきっかけになったらと思います。
長文、読んでいただきありがとうございました。