はじめに
NVIDIA RTX 5090や5080などのBlackwellアーキテクチャGPUを購入したものの、ComfyUIで「Torch not compiled with CUDA enabled」や「CUDA capability sm_120 is not compatible」といったエラーに悩まされていませんか?
本記事では、最新のNVIDIA RTX 50シリーズGPUでComfyUIのWindowsスタンドアロン版を正しく動作させ、WANやHunyuanなどの高度な動画生成AIモデルを使用するためのセットアップ手順を解説します。
問題の概要
RTX 50シリーズ(Blackwell)GPUは、最新のCUDA 12.8が必要です。Windowsユーザーは、以下のリンクからNvidia 50シリーズがサポートされているWindowsのスタンドアロン版をインストールすることができます。
最新のComfyUIにWAN2.1がサポートされましたが、上記のスタンドアロンでWANを使用するには最新のComfyUIにアップデートする必要があります。
しかし、スタンドアロン版にある標準アップデートスクリプト(update_comfyui_and_python_dependencies.bat
)は古いバージョンのPyTorchをインストールしてしまいます。このため、以下のようなエラーが発生します:
AssertionError: Torch not compiled with CUDA enabled
または
NVIDIA GeForce RTX 5090 with CUDA capability sm_120 is not compatible with the current PyTorch installation
解決方法:HuggingFaceからのプリビルド済みホイールファイルを使用
最も確実な解決策は、RTX 50シリーズに対応したPyTorchのホイールファイルを直接インストールする方法です。
手順1:既存のPyTorchをアンインストール
コマンドプロンプトを開き、ComfyUIのインストールディレクトリに移動して、以下のコマンドを実行します:
python_embeded\python.exe -m pip uninstall torch torchvision torchaudio -y
※ComfyUI_cu128_50XXフォルダの下にあるpython_embeded
です。
手順2:HuggingFaceからホイールファイルをダウンロード
w-e-w/torch-2.6.0-cu128.nvから、ご使用のPythonバージョン(この場合はPython 3.12)に対応するホイールファイルをダウンロードします。
主に以下のファイルが必要です:
- torch-2.x.x+cu128-cp312-cp312-win_amd64.whl
- torchvision-x.x.x+cu128-cp312-cp312-win_amd64.whl
※torchaudioは現在未対応。
手順3:ダウンロードしたホイールファイルをインストール
ダウンロードしたファイルをComfyUIフォルダに移動し、以下のコマンドでインストールします:
python_embeded\python.exe -m pip install torch-2.x.x+cu128-cp312-cp312-win_amd64.whl
python_embeded\python.exe -m pip install torchvision-x.x.x+cu128-cp312-cp312-win_amd64.whl
python_embeded\python.exe -m pip install torchaudio-x.x.x+cu128-cp312-cp312-win_amd64.whl
手順4:インストールの確認
インストールが完了したら、以下のコマンドでPyTorchがCUDAを正しく認識しているか確認します:
python_embeded\python.exe -c "import torch; print(torch.cuda.is_available()); print(torch.__version__); print(torch.cuda.get_arch_list())"
正しくインストールされていれば、True
と表示され、バージョン情報とアーキテクチャリスト(sm_120を含む)が表示されます。
# 出力結果
True
2.6.0+cu128.nv
代替方法:PyTorch nightlyビルドの使用
HuggingFaceからのホイールファイルが利用できない場合や、最新の開発版を使いたい場合は、以下のコマンドでPyTorch nightlyビルドをインストールすることもできます:
python_embeded\python.exe -m pip install --pre torch torchvision torchaudio --index-url https://download.pytorch.org/whl/nightly/cu128
ただし、依存関係の衝突が発生する場合は、特定の日付のビルドを指定することで解決できます:
python_embeded\python.exe -m pip install --pre torch==2.7.0.dev20250306+cu128 torchvision==0.22.0.dev20250306+cu128 torchaudio==2.6.0.dev20250306+cu128 --index-url https://download.pytorch.org/whl/nightly/cu128
動画生成AIモデルの実行
RTX 5090/5080は、その大容量VRAMと高速な計算能力により、WAN、Hunyuan Videoなどの最新動画生成AIモデルを快適に実行できます。セットアップが完了したら、以下の手順で動画生成を試してみましょう:
- ComfyUIを起動する
- Manager(拡張機能マネージャー)から必要なカスタムノードをインストール
- 動画生成用のワークフローをインポートする
- プロンプトを入力し、生成パラメータを調整して実行
注意点・トラブルシューティング
-
カスタムノードの互換性: 一部のカスタムノードは、最新のPyTorch/CUDA組み合わせで問題が発生する可能性があります。その場合は、ノードの開発者が提供する最新バージョンを確認してください。
-
Python 3.12との互換性: Python 3.12は比較的新しいバージョンで、一部のライブラリで完全な互換性がまだ確立されていない可能性があります。もし問題が発生する場合は、Python 3.11など少し古いバージョンの使用も検討してください。
-
アップデートスクリプトの修正: 将来的な問題を防ぐために、
update_comfyui_and_python_dependencies.bat
スクリプトを編集して、CUDA 12.8対応のPyTorchをインストールするよう修正することをお勧めします:
@echo off
..\python_embeded\python.exe -s -m pip install --pre torch torchvision torchaudio --index-url https://download.pytorch.org/whl/nightly/cu128 -r ../ComfyUI/requirements.txt
- WSL2の選択肢: Windowsでの設定が複雑な場合は、WSL2(Windows Subsystem for Linux)を使用する方法もあります。Ubuntu 24.04にCUDA 12.8をインストールし、仮想環境でComfyUIを実行する方法は安定性が報告されているようです。
まとめ
NVIDIA RTX 5090/5080などのBlackwellアーキテクチャGPUでComfyUIを動作させるには、CUDA 12.8対応のPyTorchをインストールすることが重要です。HuggingFaceからのプリビルド済みホイールファイルを使用する方法が最も確実でした。
Blackwell GPUのサポートは現在も開発段階であり、今後新しいビルドがリリースされ改善していくでしょう。
参考記事
- https://codecalamity.com/setting-up-your-rtx-5070-5080-or-5090-for-ai-comfyui-on-windows-through-wsl/
- https://www.youtube.com/watch?v=WgWeDxJUoD0
- https://github.com/comfyanonymous/ComfyUI/discussions/6643
- https://blog.comfy.org/p/how-to-get-comfyui-running-on-your/comments
- https://github.com/lllyasviel/Fooocus/issues/3862
- https://comfyanonymous.github.io/ComfyUI_examples/wan/
- https://github.com/Wan-Video/Wan2.1