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Windows Installer手引書 Part.10 VCで作ったアプリとマージモジュール

Last updated at Posted at 2019-09-16

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マージモジュールとは

マージモジュールとは、MSIファイルと結合できるインストーラーの一部を切り離した、ライブラリのようなものです。マージモジュールはインストーラー作成時にMSIと結合するもので、結合後はどの部分がマージモジュールに含まれていたものか、MSIファイルを見ても区別がつかなくなります1。そのため、ユーザーにはインストーラーにどのようなマージモジュールをマージしたか知ることはできません。

マージモジュールの使いどころ

今回は、Visual C++のランタイムライブラリのインストールについて書いていきます。実は、これ以外の用途でマージモジュールを使ったことがありません2

従来からあるWin32 APIを使ったプログラミングでは、ほとんどの場合Visual C++が使われるのではないでしょうか。そして、Visual C++で開発されたほとんどのプログラムが、実行時にVCランタイムライブラリを必要とします3

VCランタイムのマージモジュール

マージモジュールのファイル拡張子は.msmです。マージモジュールは、インストールするプログラムを開発する開発機から取得します。例えば私の開発機にはVisual Studio 2017が入っていますが、拡張子*.msmで検索すると、下記のフォルダにありました。

C:\Program Files (x86)\Microsoft Visual Studio\2017\Professional\VC\Redist\MSVC\14.16.27012\MergeModules

ここにはいくつかファイルがありますが、どのファイルをマージすべきかは実装担当者が決めることです。プログラムが必要としているライブラリが何かを知っているのは、実装担当者なのですから。Win32 APIを使った一般的なプログラミムでは、たいていファイル名にCRTが含まれたマージモジュールを入れることになると思います。また、昔のVCでは、マージモジュール間で依存関係があり、複数のマージモジュールが必要になるケース4もありました。

このほかに、マイクロソフトのサイトからダウンロードできる再配布可能モジュールというものもあり、拡張子が.EXEの実行形式のプログラムとして提供されています。これをMSI形式のインストーラーから直接呼び出すと、カスタムアクションが必要になるのと、UIに工夫が必要となる5ので、あまりお勧めしません。

VC14ランタイムライブラリは注意が必要

Windows7やWindows8の場合、VC14ランタイムライブラリは依存関係にあるライブラリ(Universal CRTというもの)が、Windows Updateで配布されています。Windows Updateは、よく不具合を起こしていて、PCに不慣れなユーザーはそれもよくわかっていない場合があります。こういう環境でVC14ランタイムライブラリを必要とするアプリを起動すると、必要なDLLが足りない、というエラーダイアログが出てしまうことがあります。そこでよく採られる手段は、アプリのインストール先にUniversal CRTのDLLも一緒にインストールしてしまう方法(詳細はこちらのページの「Visual C++ 2015 での CRT ローカル配置について」を参照)です。Windows Update用のファイルをインストーラーに同梱する手も考えられますが、インストール時間もそれなりにかかるのと、UIを整える手間を考えると、ファイル単位で同梱したほうが簡単です。2020年1月にはWindows7のサポートも切れることですし、サポートの手間を惜しまないのであれば、Universal CRTをアプリに同梱しないのも手です。Windows10であれば、Universal CRTは最初からOSに同梱されています。

再配布可能VC14ランタイムライブラリの中身を見る

最近のVCランタイムライブラリはWiX Toolsetを使って.EXE形式にしてある6ので、WiX Toolset付属のツールでバラすことができます。例えばこんな感じでコマンドを実行すると、expandディレクトリに中身が展開されます。

"C:\Program Files (x86)\WiX Toolset v3.11\bin\dark.exe" vcredist_x86.exe -o expand

以下に展開したファイルの一部を示します。
vcredist_expanded.png
ここにある拡張子がMSIのファイルがVC14ランタイムインストーラーの本体。拡張子が.msuのファイルはWindows Updateで配布されるファイルと同等のものです。再配布可能VC14ランタイムライブラリは、確実にライブラリが機能するように、Windows Update用のファイルを同梱していることがわかります。

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  1. とはいえ、VCランタイムのようにいろいろな製品に汎用的に使われるマージモジュールは、各項目のIDが他とかぶらない様に長い名前がついていて、区別は容易です。

  2. 便利だったり有用な使い道があったら教えてほしいです。

  3. Visual C++の開発環境で、VCランタイムを必要としないプログラムの開発もできます。

  4. 例えば、Microsoft_VC80_CRT_x86.msmはpolicy_8_0_Microsoft_VC80_CRT_x86.msmに依存しているので、両方インストールする必要があります。

  5. これをWindows Installerで呼ぼうと考えると、カスタムアクションを使用したり、UIと整えたり、結構面倒です。また、再配布可能ライブラリは、”vcredist_x86.exe /?”のようにオプションを付けて実行すると、コマンドラインオプションの一覧が表示されます。UIを最小限にしたり、UIを表示しないコマンドラインオプションがあることがわかります。

  6. WiX Toolsetの世界ではBundleと呼ばれる。

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