たまに泣いたり笑ったり、感情を吐き出すのが健康のためにはいいみたいです。
僕らのミライへ逆回転(Be Kind Rewind 2008)
取り壊しが決まったビルにあるレンタルビデオ店。追い打ちをかけるように「大惨事」が起き、ビデオがぜんぶ「磁化」してダメになってしまう。そこで店員たちが思いついたのが、自分たちが出演して、それっぽいストーリーのビデオを作っちまえ、という、いかにもチンピラが思いつきそうな、ろくでもないアイディア。ジャック・ブラックとモス・デフの真剣な演技が笑えます。
客のリクエストで「ゴーストバスターズ(Ghostbusters 1984)」を2時間ちょいで作ってしまう。なんとこれが街の人々の評判になり、店は大繁盛。次々に「新作」を撮影し彼らはスター気取り。でもこんなふざけた商売が長く続くはずもなく、裁判所命令によりビデオは全て破壊されてしまいます。
街の人々の申し出で、ビルの取り壊しの前に、この街の歴史をテーマに一本作って上映会をやろう、ということになります。出演者は街の人々で。
ビル取り壊し直前の上映会。映画を観る人々の口元には笑みが。映画を愛する人々の映画への想いに溢れる涙が止まりません。
大抵の場合私はエンドロールが始まるとさっさと観るのを止めるのですが、ごく稀にエンドロールが終わるまで動けなくなってしまう映画もあって、これはそういう映画のひとつです。歌がいいんです。この歌を聴くのを途中でやめるなんてぜったい無理。
原題は舞台になる店の名前であると同時に、レンタルビデオを借りた時のケースの注意書き「巻き戻してから返却して下さい」っていうアレですね。英語だとたった3語。いいなあ。語呂もいい上に「他の誰かのために」っていう思いが込められているし。
*ビデオテープそのものを知らない、という人もいると思うので、そういう人はこちらを読んでみてください。
ジャック・ブラックが気に入ったら「スクール・オブ・ロック(School of Rock 2003)」もオススメします。笑って泣けるいい映画です。
デンジャラス・ビューティー(Miss Congeniality 2000)
男勝りの女性FBI捜査官グレイシーは、爆破予告のあった美女コンテストに潜入捜査することになります。彼女を「美女コンに出るような美女」に仕立てるためにその道のプロが雇われるのですが、そのプロ(女っぽい男)とグレイシー(男っぽい女)がいがみ合う様子がめっちゃ笑えます。
コンテストに出る女の子なんて綺麗なだけで、どうせ頭は空っぽなんだろう、と思い込んでいたグレイシーですが、彼女たちの人間としての素晴らしさを知り、この子たちを絶対守りぬこうと決心します。ラストシーンで彼女たちに囲まれたとき、男勝りのグレイシーの目にも涙が。彼女と一緒に暖かい涙を流してください。
ウォルター少年と、夏の休日(Secondhand Lions 2003)
母親が男と逃げてしまい、少年は変人として知られる大伯父2人とひと夏を過ごすことになります。街のバーで不良たちと揉め事を起こす大伯父はやたらと喧嘩が強い。彼らの語る、若い頃の冒険と愛の物語に少年は夢中になるんですけど、そんな話を信じているのは少年だけ。街の人たちは、彼らを犯罪者だと決めつけています。答えはラストシーンで。どうぞ暖かい涙を流してください。
スパングリッシュ(Spanglish 2004)
メキシコから逃げるようにアメリカにやって来た母娘と、裕福なアメリカ人家族の交流の話。
どんな時にも誇りを失わない、気丈な母親が、様々な場面で笑わせたり、泣かせたりしてくれます。最後に、これは実は母と娘の絆の物語だったのだ、と気付いた時、それまでとはまた違う意味での感動に包まれる、そんな映画です。
美しいスペイン人女優、パズ・ベガのハリウッドデビュー作。この作品の後にモーガン・フリーマンと共演した「素敵な人生のはじめ方(10 Items or Less 2006)」もオススメです。
ターミナル(The Terminal 2004)
スピルバーグが監督でトム・ハンクスが主演で音楽がジョン・ウィリアムズ。彼らが力を合わせて取り組んだコメディ/ドラマ。面白くないわけがない。
東欧の小国クラコウジアからニューヨーク目指してJFK空港に降り立ったビクターですが、すぐに空港職員に拘束されてしまいます。母国でクーデターが発生し、政府が消滅、パスポートは無効、入国不可、国に帰ることさえできず、空港内での生活を余儀なくされます。
ビクターの前に立ちはだかる空港警備のディクソン。コイツがビクターをいびりまくるんですけど、まったくめげる様子のないビクターは空港内でしぶとく生き延び、いつのまにか空港内で働く人たちと仲良くなり、人気者になっていきます。
ビクターがへこたれない理由は、ニューヨークでどうしてもやりたいことがあるからなんです。人々の善意と助けのおかげで、彼はそれを成し遂げます。どうぞ彼と一緒に暖かい涙を流してください。
メリーに首ったけ(There’s something about Mary)(1998)
テッドは30歳を過ぎた今でも、高校生の頃にちょっとだけ付き合ったメリーの事が忘れられないでいる。友人の勧めで、探偵にメリーの所在を調べてもらったことをきっかけに、彼女に会いにいく決心をする…のだけれど、行った先は美しいメリーを狙うライバルだらけ、といったストーリー。
最近「グリーン・ブック(Green Book 2018)」でオスカーを獲ったファレリー兄弟による「衝撃」のコメディー。もう20年以上前の作品ですが、いわゆる「ダメ男の勝利」系の映画でこれを超えるものは未だに観たことがないです。なぜ彼が勝利出来るのか? その答えは、映画の中に明確に示されています。
ファレリー兄弟の作品にはよく障がいを持った人たちが出てきます。どんな思いがあるのかは知らないけれど、生半可な気持ちでやっているのでないことは、これに続く作品「ふたりにクギづけ(Stuck on you 2003)」を観るとよくわかります。作品のエンドロールで、障がいを持った俳優が、この作品に出演出来たことへの感謝を述べる一幕があるんです。純粋な思いの吐露です。これを観て泣かない人っていないんじゃないかな。
リトル・ミス・サンシャイン(Little Miss Sunshine 2006)
末娘が美少女コンテストの決勝に出ることになり、家族全員で車に乗って大陸を横断して会場に向かう、という話。家族のメンバーはそれぞれ問題を抱える曲者ばかりなんですけど、道中の様々な出来事を経て、家族の絆は強くなっていきます。コンテストのステージでついにその気持ちが爆発。末娘の振り付けは祖父によるもので、彼の反抗的なスピリットを感じさせる。やはり血は争えませんね。みなさんも彼らと一体になって熱い涙を流してください。
この映画の数年後に歴史に名を刻むことになるTVドラマ「ブレイキング・バッド」で大ブレイクしたブライアン・クランストンとディーン・ノリスが端役で出ていますね。他にもいい役者さんが端役で出ていたりします。キャスティングが素晴らしい映画なんです。
伝説のロックスター再生計画!(Get him to the Greek 2010)
レコード会社に勤める主人公アーロンが、伝説のロックスター、アルダス・スノーの記念ライブの企画を実現するために、ロンドンからロスアンジェルスのグリークシアターまでスノーを連れていく、という話。スノーは「大物ロックスター」らしく、わがままでやりたい放題。アーロンは、スノーに振り回され、恋人との関係も危うくなってしまいます。
数々の苦難を経て、アーロンとスノーはお互いを認め、理解しあうようになります。感謝のしるしとしてスノーが「本物のロッカー」であることを証明しようとし、アーロンもまたひとつの決断を下すことになる。彼らの選択に涙してください。
「ハンドメイズ・テイル」でいまや大女優の風格のエリザベス・モスがアーロンの恋人役でキュートな面を見せていたり、ローズ・バーンがスレた役柄で出ていたり。たくさん映画を観ているとこういう事があって嬉しいですよね。人混みで昔の友達に偶然再会した時の「お前、変わったなー。いや、でも変わってねーなー」みたいな、あのかんじ。
この頃のジャド・アパトー周辺、セス・ローゲンやジョナ・ヒルが関わった作品は全て面白いです。中でも「素敵な人生の終り方(Funny People 2009)」「無ケーカクの命中男(Knocked Up 2007)」「スーパーバッド(Superbad 2007)」は強くオススメします。
プログラマーは技術だけでなく、知性を身につけるべきだと私は思っています。知性を身につけるには、よい映画をたくさん観て、よい本をたくさん読んで、よい音楽をたくさん聴くこと。
スティーブ・ジョブズはiPodのことを”Device for heart”と呼びました。ここで私が知性と呼んでいるものは、そのハートのことです。
この記事が、これからみなさんがよいものを見つけていくきっかけになってくれればうれしいです。