AM音(周期的振幅変調音)とは
振幅が周期的に変化する音。以下のような数式および波形で表せます。
( $f_c$:搬送周波数、$f_{mod}$: 変調周波数)
AM(t) = A\lbrace1 + A_m\cos(2\pi f_{mod}t)\rbrace\cos(2\pi f_ct)\\
= A\lbrace cos(2\pi f_ct) + \frac{1}{2}A_m\cos\lbrack 2\pi (f_c - f_{mod})t\rbrack + \frac{1}{2}A_m\cos\lbrack 2\pi (f_c + f_{mod})t\rbrack \rbrace\
実装
早速Pythonで実装してみます。
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
import soundfile as sf
fs = 48000
t = 3
n = np.arange(t * fs)
#変調周波数
fmod = 20
#搬送周波数
fc = 500
#振幅
A = 1
Am = 3
#周期的振幅変調音
AM = A * (1 + Am * np.cos(2*np.pi*fc*n/fs) + 1/2 * Am*np.cos(2*np.pi*(fc-fmod)*n/fs) + 1/2 * Am*np.cos(2*np.pi*(fc+fmod)*n/fs))
plt.plot(n / fs, AM, label='fmod=200[Hz], fc=500[Hz]')
plt.xlabel('time[s]')
plt.xlim(0, 0.1)
plt.legend(loc='lower right')
plt.show()
plt.savefig("AM.png",format = 'png', dpi=300)
sf.write("AM.wav", AM, fs)
変動強度とラフネス
人間は5Hz以下の変調周波数においては物理的に追従できますが、20Hzくらいになってくると時々刻々の変動には追従できなくなります。
低い変調周波数のときに感じられる変動感のことを変動強度といい、高い変調周波数のときに感じられる変動感のことをラフネスといいます。
$f_{mod} = 4\ \mathrm{[Hz]},\ f_{c} = 500\ \mathrm{[Hz]}$の音
https://www.dropbox.com/s/khdbt4saebgbsxz/AM_4_500.wav?dl=0
はっきりウワンウワンなっているのがわかります。ちなみに変動強度は$f_{mod} = 4\ \mathrm{[Hz]}$のとき最大だそうです。
$f_{mod} = 20\ \mathrm{[Hz]},\ f_{c} = 500\ \mathrm{[Hz]}$の音
https://www.dropbox.com/s/4z2cwcwlexsba2q/AM_20_500.wav?dl=0
ウワンウワンというよりはズバババって感じですね(語彙)。これがラフネスという感覚なのでしょうか。
変調周波数を挙げていくとラフネスが最大になり、それを超えるとラフネスが消失します。
$f_{mod} = 150\ \mathrm{[Hz]},\ f_{c} = 500\ \mathrm{[Hz]}$の音
https://www.dropbox.com/s/a7rdtsp3d2b79yr/AM_150_500.wav?dl=0
ものすごくザラザラした印象を受けます。
$f_{mod} = 300\ \mathrm{[Hz]},\ f_{c} = 500\ \mathrm{[Hz]}$の音
https://www.dropbox.com/s/gpy9sd3j3saeky2/AM_300_500.wav?dl=0
ブーって感じですが、確かにザラザラ感はなくなっています。
ラフネスの消失境界は臨界帯域(参照リンクhttps://www15.atwiki.jp/ad06/pages/76.html)
によって規定されており、1kHz以下のの搬送周波数では変調周波数が臨界帯域幅を超えると側波成分($\frac{1}{2}A_m\cos\lbrack 2\pi (f_c - f_{mod})t\rbrack + \frac{1}{2}A_m\cos\lbrack 2\pi (f_c + f_{mod})t\rbrack $の部分)聴覚フィルタ内の干渉がおきなくなるため、ラフネスを感じなくなります。
ところが、搬送周波数が2kHzを超えると臨界帯域幅にかかわらず250Hz以上の変調周波数でラフネスが消失します。250Hzは周期的な変動の時間分解能であると考えられており、これより変調周波数が高くなると変動を知覚できなくなるためです。
$f_{mod} = 300\ \mathrm{[Hz]},\ f_{c} = 2500\ \mathrm{[Hz]}$の音
https://www.dropbox.com/s/j8ab31q3obgdrf6/AM_300_2500.wav?dl=0
確かにあまりザラザラ感はありませんね。
2kHz以上の搬送周波数では変動周波数が40~70Hzでラフネスが最大になります。
$f_{mod} = 50\ \mathrm{[Hz]},\ f_{c} = 2500\ \mathrm{[Hz]}$の音
https://www.dropbox.com/s/j8ab31q3obgdrf6/AM_300_2500.wav?dl=0
ものすごくカオスな音になりました。
参考文献
[1] 岩宮眞一郎. 図解入門 よくわかる最新音響の基本と応用. 秀和システム, 2011 年.