LoginSignup
0
0

More than 3 years have passed since last update.

SCMの別の見方

Last updated at Posted at 2019-11-29

SCM

この記事では、SCM(構造的因果モデル)の別の見方を提示します。
SCM自体の説明はおこないません。

(この例は、Bernhard Schölkopf. Causality for Machine Learning. arXiv:1911.10500. から取っています。)
二つの変数$X,Y$だけを含む、次のような$X \to Y$というSCMを考えます。

\begin{align}
X & = U \\
Y & = f(X, V).
\end{align}

ただし、$U$と$V$は外生変数で、独立とします。

さらに、このSCMが、以下のようなものであるとします。

  • $X$と$Y$は、${0,1}$の2値変数。
  • $U$と$V$は、一様なベルヌーイ変数。
  • $V$の値によって、関数$f$が$f(x) = x$となるか、$f(x) = 1 - x$となるかが決まる。

このSCMは、興味深い性質を持っています。
それは、観測データからは$X \to Y$という関係性を得られない、という性質です。
理由は次の通りです。

$X$は、$X=U$という式より、一様なベルヌーイ変数となりますが、
$Y$も一様なベルヌーイ変数となり、しかも$X$とは独立になります。
このように、$X$と$Y$が独立になってしまうので、これらの値のペアをいくら観測しても、
$X \to Y$という関係性を観測データから得ることはできません。

例の別の見方

上の例と全く同じSCMについて、別の見方を提示します。

$\Omega = \{a,b,c,d\}$について、$P(\{a\})=P(\{b\})=P(\{c\})=P(\{d\})=1/4$であるような確率空間$(\Omega, 2^\Omega, P)$を考えます。

$\{0,1\}$に値をとる確率変数$X$を、次のように定義します。

X(a)=0 \\
X(b)=0 \\
X(c)=1 \\
X(d)=1 \\

関数の集合$\{f_1, f_2\}$に値をとる確率変数$\xi$を、次のように定義します。

\xi(a)=f_1 \\
\xi(b)=f_2 \\
\xi(c)=f_1 \\
\xi(d)=f_2 \\

なお、$f_1(x) = x$、$f_2(x) = 1 - x$とします。

このとき、$X$と$\cal{F}$は独立となります。ひとつのケースについてだけ示すと、

P(\{\omega : X(\omega)=0\} \cap \{\omega : \xi (\omega)=f_1\}) = P(\{a\}) = 1/4 \\
P(\{\omega : X(\omega)=0\})P(\{\omega : \xi(\omega)=f_1\}) = P(\{a,b\})P(\{a,c\}) = 1/2 \cdot 1/2 = 1/4

となります。他の3つのケースについても同様です。

そして、確率変数$\xi$の値である関数を、$X$の値で評価した結果を$Y$とします。
このように$Y$を定義すると、以下の結果が得られます。

Y(a) = \xi_{X(a)}(a) = f_1(0) = 0 \\
Y(b) = \xi_{X(b)}(b) = f_2(0) = 1 \\
Y(c) = \xi_{X(c)}(c) = f_1(1) = 1 \\
Y(d) = \xi_{X(d)}(d) = f_2(1) = 0 \\

このとき、$X$と$Y$は独立となります。先ほどの例と同じ結果です。

おわりに

任意のSCMについて、上のように外生変数を無くしてしまい、
確率変数と確率過程(関数空間に値を取る確率変数)の言葉だけで書き直すことは、できるのでしょうか?

残念ながら、私にはこの問題に答えるための数学力がありません・・・。

0
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
0