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地盤工学のための数値解析の第一歩

Last updated at Posted at 2021-12-02

#はじめに
はじめまして。
当方は建設業界でエンジニア・研究者をしています。

数値解析の書籍(例えば1))では代表的な弾塑性構成式として金属材料と地盤材料のモデルが挙げられることが多いと思います。
QiitaではFEM等の解析手法の記事は多数ありますが、地盤材料のモデルについては記事が少ないようなので投稿したいと思います。
最終的には有限要素法を用いた解析プログラム作成まで投稿できればと思います。

#弾塑性体の基礎

###そもそも構成式とは
構成式(constitutive equation)とは、材料の応力-ひずみ関係を表し、材料の力学的性質を特徴づける関係式と定義されます。これは、材料試験結果をもとに人間がモデル化します。

静力学では、以下の条件を満足することが求められます。

  1. 釣り合い条件
  2. 変形の適合条件
  3. 材料の構成式
  4. 力学的・運動学的境界条件

ここで、連続体力学では場の方程式(1, 2, 4)は材料に依りません。従って構成式の違いによって金属や地盤の違いが表現されます。
ちなみに釣り合い条件、変形の適合条件、材料の構成式を力学的・運動学的境界条件のもとで解くという問題を境界値問題といいます。

###現象論からみた弾塑性体
単純引張(圧縮)した材料の応力-ひずみ曲線の例を以下に示します。

応力ひずみ曲線.png

引張条件下の材料は線形弾性挙動(O0→Y0)を示し除荷しても残留変形(塑性変形)を生じません。この時の挙動は以下のようにフック則に従い、応力-ひずみの傾きをヤング率と呼びます。

$$\sigma = E\varepsilon$$

荷重が増加しある応力を迎えると弾性限界(Y0)を迎えます。この現象を降伏と呼びこのときの応力を降伏応力と呼びます。
降伏応力を超えて更に荷重を受けると塑性降伏が生じて塑性ひずみが発生します(Y0→Z1)。
塑性ひずみが増加すると、降伏応力が大きくなることが観察されます(Y0<Y1)。この現象を硬化と呼びます。
ちなみに、一度ある方向に塑性変形を与え、その後逆方向の荷重を与えると、塑性変形が低い応力で生じることが知られています。この現象をバウシンガー効果(Bauschinger effect)と呼びます。

###ひずみの加算分解
先程の図のように材料に生じたひずみ(全ひずみ)をεとすると、全ひずみ(total strain)は以下のように弾性ひずみ(elastic strain)と塑性ひずみ(plastic strain)に加算分解(additive decomposition)できます。

$$\varepsilon = \varepsilon^e + \varepsilon^p$$

弾性ひずみは先程示したようにフック則に従うので、塑性ひずみを求めることができれば、弾塑性状態の全ひずみを求めることができます。

###降伏関数
材料が弾性状態か弾塑性状態かを区別するために、以下のように応力で表された基準を導入します。この基準を降伏関数(yeild function)と呼びます。

$$降伏関数 f = |\sigma| - \sigma_y$$

ここで、$|\sigma|$は現応力の絶対値、$\sigma_y$は降伏応力を表します。弾塑性状態では、現応力は必ず降伏応力と等しいので、降伏関数$f$は必ず0になります。
ちなみに、応力空間上では降伏応力の集合(塑性包絡面)は超曲面2)で表されます。これを降伏曲面(yeild surface)と呼びます。

###塑性流れ則
降伏曲面が滑らかな場合には、塑性ひずみ増分と応力が対応します。この時、塑性ひずみ増分の発展則は以下のような流れ則(plastic flow rule)として表されます。

$$\dot\varepsilon_{ij}=\dot\gamma{\frac{\partial\psi}{\partial\sigma_{ij}}}$$

ここで、上付きのドットは時間微分を表しています。
$\psi$は古典力学のポテンシャルに似ていることから、塑性ポテンシャル(plastic potensial)と呼ばれます。
また、$\dot{\gamma}$を塑性乗数(plastic multiplier)と呼びます。
この塑性ポテンシャルが降伏関数と一致する場合を、特に関連流れ則(associative flow rule)と呼びます。

#さいごに
今回は数値解析のための第一歩を解説しました。
次回は具体的に地盤の解析モデルについて触れたいと思います。

###参考文献

  1. EA de Souza Neto, D Peric, DRJ Owen: Computational Methods for Plasticity: Theory and Applications, WILEY, 2008.
  2. Hazewinkel: Hypersurface, Encyclopaedia of Mathematics, Springer, 2001.
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