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「プレゼンテーション」について改めて気づかされたこと

Last updated at Posted at 2018-12-21

プログラミングでも技術でもない話であるが、興味深い結果に出会ったので書いてみる。

だらだら書くのもあれなので、まず結論として何に気付かされたかということを書くと、

「プレゼンテーションはプレゼンターの気持ちが入っている事(情熱)がやっぱり大事なんだ」

ということ。

前段として上記のことに気づいた筆者の事を書くと

  • 仕事としてはメインにインフラ技術者の啓蒙、兼業としてキャリアコンサルティング業を営む
  • 年間3,40のTech、NonTechのプレゼンテーションを社内外で行なってる
  • 社内でプレゼンテーションの勉強会を十数回開いている
  • 基本的には技術者だが下記のようなスキルがある
    • キャリアコンサルタントの有資格者であり、カウンセリング・コーチングのスキル
    • Rを使いこなしデータ分析(主にビジネス分析)

され、本題のプレゼンテーションの成功の秘訣は、いろいろあるが、今回は説明しやすく有名な弁論術のフレームワーク(とここでは呼ばせてもらう)としても用いられるアリストテレスの3つのポイント、「ロゴス」「エトス」「パトス」を用いて表現していく。これらの解釈も文献によって様々あるが筆者はこう理解している。

  • ロゴス・・・論理性、理にかなっているか、矛盾はないか、組み立て、ストーリーの構造などのスムーズさ
  • エトス・・・人柄、人物の特徴、信頼にいたる情報、その内容を話すのに値する情報
  • パトス・・・心情、感情、情熱、思い入れ、好き嫌い

この内、プレゼンテーション実施後、相手に印象を与え、内容が伝わり、なんらか動かす、変える動機付けをするには**「パトス」**の影響力はかなり大きいのだと感じたわけである。

その理由を以下3つの例から見ていくことにする。

3つの例

1、大規模修繕工事のコンペのプレゼンにて

筆者はマンションの管理組合の理事長であった経験がある。そのマンションに大規模修繕工事を行うタイミングがやってきて、その工事をお願いする業者を選ぶことになった。いわゆるコンペによるプレゼン会が行われたのである。最終的に残ったのは2社(A社、B社とする)で、それぞれ、プレゼンテーションをやってもらった。聴講者は私を含め住人5,6人。IT技術者の想像するパワポをつかったプレゼンテーションではなく、資料を紙で渡され、目の前で業者の営業と現場責任者が説明する形式である。

評価するために住人はなれない評価項目シートのようなものを渡され(20項目くらいあった・・・)プレゼンを聴きながらチェックするのである。評価項目の中にはマンションならでわの気になるポイントを評価するものもあったが、その場にいる工事の現場責任者の評価項目もあった。人柄や印象といった項目である。

ぶっちゃけ住人はみんな素人だし、聴いたってわかりゃしないわけである。しかもA社もB社も工事内容や特徴などはたいして変わらない(ただ金額は2、300万くらい違っていた)。となると自然に、決め手になるのはその場の説明する人間の印象、つまりこの人指揮する現場にまかせてもいいと思うか否かという点になる。そこにはA社、B社に違いがあった。

A社は若い責任者、それなりに経験もある、服装はおそらく現場監督・指揮をとるときの姿を想像させる作業着!?である。かなり緊張されている風であり、基本的には営業が7,8割説明して、その若者に対しての質問も営業が半分くらいフォローしていた。
B社は40後半のベテラン責任者、営業と共にスーツ姿で説明も自信のある様子で、質問にも自ら回答していた。営業は資料を使ったトークに「この件ぜひお任せください」という意気込みが見えていた。A社もそこはなかったわけではないが、その度合と、丁寧さ、姿勢には差があったと私はするどく感じ取っていた。それは、配られた資料とその説明にも差があったからである。結局こっちは素人なので細かい点なんてわからない、がB社には「ここだけわかってくれれば大丈夫」というような思いで作っているんだろうなという点がみてとれた。さらにB社の説明には視点誘導をしながら丁寧に解説をする姿勢が営業と現場責任者にあったのである。

結果は、多数決でA社は誰もおらず、B社に決まった。価格はB社のが安かった。よーわからんので安い方にという観点で選んだ人もいるかもだが、そこにはプレゼンテーションのスキルに裏付けされた印象も影響していると私は思っていた。

このケースではフレームワークでいうところの**「エトス」、「パトス」**がポイントになっていたのだと感じた。

##2、ある業務改善の成果報告イベントにて
このケースは、ある企業の業務改善をいろいろな部門がとりくみその成果について発表・プレゼンテーションし、最後はオーディエンスの投票によって最優秀賞が選ばれる、という仕組み、いわばコンテスト形式の出来事である。

会場は段差のあるホール・講堂形式で、観客も3、400人(もっとかも)いたかもしれない。発表部門も10~20くらいあったとおもう。そんな中、発表の内容(ロゴス)そのものは、どれも素晴らしい。もはやそれだけではまったく差がでないくらいのものばかりであった。・・・となるとあとはプレゼンター次第ということになる。しかも審査員は自社の人間だけでなく、ほんとに様々な会社の人たちがそれを聴いて、投票するのである。当然すべてが初見。決め手となるのは結果としてエトス・パトスであっただろう。このうちたくさんのプレゼンターが出てくるわけなので、すべての人物、人柄というのは人間も覚えきれないものである。となると強く印象に残ってしまう要素としてはパトスということになる。今、理論的に書いたが、実際もやっぱりそうだったのである。
優秀賞に選ばれたのは、成果もそうだが熱い想いとともに上手なコンテンツ、その内容を解説する振る舞いと声のトーンに思いがのせられて伝えるプレゼンテーションをした部署であった。私もその部署に投票をした。

ちなみに改善効率が極端に高く(優秀賞とった部署よりも)、資料内容も非常に明瞭でわかりやすかった・・・(つまりロゴスは最高)けれどもプレゼンターがあまり普通に淡々と説明をしただけで終始抑揚もなく、情報が頭に入らず流れるようになっていた(ガチガチ緊張していたのかもしれませんが)部門もあったがそこの部門は3位にすら入っていなかったのである。

##3、新人総括プレゼン大会(の部門選抜会)
自社では新人さんが部門に配属されてしばらく経つと、それまでの振り返りと今後の目標を語るプレゼン大会が催される。その部門選抜会での出来事である。私はこれの企画・運営をやっていた。プレゼン大会についてもう少しほ補足すると、何回かの選考を通じて最終的には「新人総括研修発表会」というイベントで同じ新人達の前で発表するというのが行われる。その一発目が部門選抜会である。

部門には5人の新人(A~E)が配属されており、選抜するために定量評価指標が用意されており、評価者(10名:部門長、プロジェクトでの上長、OJT担当、育成担当等)はそれぞれについて1~4の点数付けていく。なおこの指標はこれは会社で用意されているものである。細かくは書かないが、いわゆる内容についての部分とプレゼンスキルについてのものが合計7項目用意されている、なのでポイントのMaxは28である。

集計には時間がかかるので、且つ、せっかく聴いてもらうのに10人だけだと面白くないだろうということもあり、間つなぎ半ば余興として下馬評をもらうためにリアルタイムアンケートDirectPollを使ってその場にいる人のアンケートをとってみた。(記録をしていなかったので以下は実施したときのイメージです。)

質問:「誰のプレゼンがよかったとおもいますか?」
キャプチャ.JPG

これによると、下馬評としては「A」に軍配があがった。
さて、一方で評価シートを集計をしたところ下記のような結果となった。

評価者 A B C D E
1 25 20 24 19 18
2 23 22 26 27 22
3 23 19 22 20 21
4 19 19 20 18 16
5 24 27 27 26 25
6 18 19 24 22 21
7 22 19 21 20 21
8 16 23 28 22 20
9 21 26 28 28 26
10 27 23 26 23 24
合計 218 217 246 225 214

これによると、「C」に軍配が上がりました。下馬評でも2位ではありましたが、異なる結果となった。
結果として部門候補者は「C」にはなったのですが、そこに至るまでの話を以下に。

どうも例年このポイント評価集計後には微調整が毎度入るとのこと。(なんだそれは?これが悪しき文化・・・)要は、デジタルでわからないところを評価してどうのこうのという話し合いが行われるとのこと、今回運営でもあるので、それにも参加した。私個人としてはこの結果についてはサンプル数が少ないとはいえ、プレゼンテーションの指導者という観点からみても、妥当なところだと思っていた。この話し合いの中ではそもそも会社の旧態依然な文化をほのめかすコメント、いい意味で真面目さ、組織観点の配慮というのが垣間見れましたが、こと、プレゼンテーションが成功したか否かという意味ではこのポイントの結果の現れた通りだと考えており、**「プレゼンテーションの本質」**を理解させつつ、今回は余計な微調整が入ることなくこの結果の通りとなった。

もう少し基本統計によるデータを見ると以下のような感じ。

統計値 A B C D E
最小値 16.0 19.0 20.0 18.0 16.0
第一四分位数 19.5 19.0 22.5 20.0 20.1
中央値 22.5 21.0 25.0 22.0 21.0
平均値 21.8 21.7 24.6 22.5 21.4
標準偏差 3.36 3.0 2.88 3.47 3.06
第三四分位数 23.8 23.0 26.8 25.3 23.5
最大値 27.0 27.0 28.0 28.0 26.0

データから、「A」「D」については獲得ポイントのばらつきが大きい、つまり高く評価した人もいるし低く評価した人もいる、ということである。「C」は逆に一番ブレが小さい、これはどの評価者からも安定的にポイントを稼いで、且つ高得点をとっているということ。

内容プレゼンスキルの部分で分けると(以下平均)

新人 内容 プレゼンスキル
A 3.0 3.3
B 3.2 3.0
C 3.3 3.8
D 3.2 3.3
E 3.1 3.0

「C」はどちらも他のものよりも一番高いポイントとなっているが、プレゼンスキルについての評価は特に大きな差がでていた。

これまでは「振り返りがちゃんとできている」「内容がしっかりしている」(これらはロゴスなところ)という点で微調整加減点等が行われていたようだ。実際、含めなければいけない情報というのはアジェンダレベルで決まっているため、どうしてもみんな同じ流れ・似たような内容で発表しがちで、プレゼンの序盤では差がつきづらい。それでもこの5人は事前に私が勉強会をしたこともありそれぞれ個性がうまく出せていたとおもう。

確かに「振り返りがちゃんとできている」「内容がしっかりしている」な部分はもちろん大事ではあるが、そこだけを大きな決定打として重視するのは違うと思っている。「プレゼンテーションの本質は、相手を動かす」こと。ここでいう「相手とは」最終的に発表会の相手となる新人たち、つまり「発表者の同期」である。お偉いさんや人事や自他部門の社員に「今年の新人はしっかりしたできのいいのがそろってるな」とか思わせるためにやるわけではない(はず)。自分自身の振り返りをしつつ、聴いている同期に自分の部門の情報とやったことやれなかったこと失敗や成功の経験を語り、聴いている側もそれを疑似体験をするかのように気づきを与え、互いの成長の糧にできるかどうかというのがこの最終的な新人総括発表会では大事になってくるのだと考えている。なので私は自部門の新人らにはそのような本質についても事前に勉強会で伝え、助言した上で今回の部門選抜回に臨んでもらっていたのである。

下馬評では結果が異なっていたが、いくつかの視点から評価を重み付けしてプレゼンテーションを深掘りしデータを丁寧に読んでいったことにより、本質的にプレゼンテーションの目的を成せた(あるいは、成せる可能性が高い)のが誰であったか、というのが見えてきた事に、この評価シートを元にした選抜は意味のあるものであったと感じた。

そして、プレゼンスキルについてはフレームワークでいうとパトスに値する部分が影響をあたえたものであり、この評価データとしてもそれは顕著に表れていた。

なお、個人的なコメントをさせていただくと事実、内容もさることながら客観的に「C」が5人の中では表現力は優れていたと思う。

まとめ

3つの例を紹介してきたが、もともと感覚と経験でプレゼンテーションの効果を感じていたところに、3つ目の例のように定量的な評価も合わせてしっかり深掘りをしていくと、プレゼンテーションの伝える力は「パトス」の部分が影響してくる事がやはり多いのではないか!?と気づいたのである。よって

「プレゼンテーションはプレゼンターの気持ちが入っている事(情熱)がやっぱり大事なんだ」

ということにたどり着いた。

よって、これを読んでいるみなさんも今後プレゼンテーションを行うときの参考としてもらるとありがたい。私としてはこのような結果を踏まえて、一生懸命内容(資料作成)、論理に注力しすぎるよりも、印象、発声、言いたい部分の再確認(情熱ポイント)、振る舞い、特に練習・リハーサルに力を入れることをお勧めする。

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