はじめに
プロジェクトでは、ソフトウェアの設計やドキュメントにシーケンス図やステートマシン図を頻繁に利用しています。
しかし、作成者によってモデルの粒度やスタイルがバラバラであることで、以下のような課題があると感じています。
- 図の記述ルールが統一されていない
- モデル化の対象範囲や抽象度にばらつきがある
- 適切な図の選択基準が明確でない
その結果、関係者間の認識共有が十分に行えていないケースが多くあります。
数年前に一度UML学んだことがありますが、実務で上手く活用できていないのが実情です。
そこで、UMLの基礎からしっかりと学び直し、プロジェクトで役立つ形にアウトプットしていきたいと考えました。
自分自身の理解を深めるとともに、同じような課題を感じている方々の一助となれば嬉しいです。
UMLとは
概要
Unified Modeling Language(UML)とは、ソフトウェアシステムを視覚的にモデル化するための統一された記法です。
様々な種類の図や図式を用いて、ソフトウェアの構造や振る舞いを表現することができます。
UMLには以下のような特徴があります。
- 使用する図記号とその意味合いが厳密に規定されている
- ソフトウェア開発プロセス全体をカバーできる図の種類が揃っている
- ビジネスモデリングからコード生成まで、幅広い用途に対応している
- 汎用性が高く、様々なプログラミング言語やプラットフォームで利用可能
表現できること
UMLには様々な種類の図が用意されており、ソフトウェアの構造や振る舞いを多角的に表現することができます。
主な図の種類と表現できる内容は以下の通りです。
カテゴリ | 図の種類 | 表現できる内容 |
---|---|---|
静的モデル | クラス図 | クラスの構造、属性、操作、関係性 |
オブジェクト図 | インスタンス化されたオブジェクトの構造 | |
コンポーネント図 | ソフトウェアコンポーネントの構造と依存関係 | |
パッケージ図 | 論理的なグループ分けと階層構造 | |
動的モデル | ユースケース図 | システムの機能と利用者の役割 |
シーケンス図 | オブジェクト間のメッセージの流れ(時系列) | |
コミュニケーション図 | オブジェクト間の関係と相互作用 | |
ステートマシン図 | オブジェクトの状態遷移と内部振る舞い | |
アクティビティ図 | ビジネスロジックの制御フロー | |
その他 | デプロイメント図 | 物理的な配置構成とネットワーク構成 |
このような多様な図から表したい内容に応じて最適な図を選択する必要があります。
メリット
1. 関係者間での共通理解が促進される
UMLのモデルは視覚的である点が最大の強みです。
図を共有・確認することで、関係者間で同じ認識を持ちやすいです。
2. 要件の漏れやモデルの矛盾を発見しやすくなる
モデル化を通じてシステムを多角的に検討することで、要件の洗い出しや設計の確認が行いやすくなります。
要件の漏れや、モデル間の矛盾を発見しやすくなります。
また、文書でも見落としがちなバグの可能性にも早期に気づけます。
3. 設計品質の向上と生産性の向上が期待できる
適切なモデリングを行うことで設計品質が向上します。
その結果、実装工数の削減やバグの減少など、生産性の向上が見込めます。
また、モデルを繰り返し改善することで、設計力そのものの底上げにもつながります。
4. ドキュメントの一元化と再利用が可能
UMLのモデルはそのままソフトウェアのドキュメントとして機能します。
図を中心にシステムの仕様を一元的に残すことができ、コード化した際のトレーサビリティも保たれます。
また、モデルは再利用も可能で、類似システムの開発時に活用できます。
5. 記述に迷うことなく設計内容に集中できる
設計図を書くときに、どのように表現すればわかりやすいのかを考え何度も書き直していると無駄に時間がかかります。
UMLを使うことで表現方法が固定されるので、表現方法に迷うことなく、設計内容に集中することができます。
さいごに
UMLは開発の様々な場面で役に立つツールの1つです。
様々な図の用途を理解し、表現したい内容に合わせた図を使うことが大切です。
次回以降、具体的な図の種類と書き方をまとめていきます。