#はじめに
私は長年ポスドクとして機械学習を研究してきましたが,数ヶ月前に民間企業に転職してキャリアチェンジしました.アラフォーかつ民間企業で働いた経験がほとんどなかったため転職活動は苦戦しましたが,AIブームに便乗にしてなんとか専門性を活かせる企業に就職することができました.
ポスドクで民間企業へのキャリアチェンジを考えている方の参考になればいいなと思い,転職活動の内容,感じたこと,反省点等をまとめました.なお,自慢できる経験ではないので完全に匿名性を確保したいと考えています.そのためあえて具体的な表現を使っておりません.恐縮ですがご了承ください.
#転職に至った経緯
私は研究者になって自分の好きな研究を行うために大学院に入り学位(博士号)を取得しました.ポスドクになってしばらくは好きな研究をやれていたのですが,次第にそうではなくなり自分のやりたい研究から大きく離れた業務をやるようになりました.アカデミア(日本の)に対する魅力が薄れ,同時に,アカデミアの外の世界に対する興味が強くなったため,民間企業に転職することにしました.
#転職活動の流れ
転職エージェントに登録し人気企業を中心にいろんな企業に応募しましたが,多くは書類選考で落とされました.いくつかの企業は面接まで進みましたが,マッチングしないということで不採用となりました.面接に呼んでいただいた企業は大学等での研究経験をある程度評価していただいた印象でしたが,多くの企業はそうではない印象でした.
転職活動をはじめてから数ヶ月間,採用が決まらず苦戦していたのですが,データサイエンティストやデータサイエンスに興味のある人が集まるオンラインコミュニティ(データラーニングギルド)が縁で現在の会社に応募することになり,採用が決まりました.現在の会社は社員を大事にする会社であり,志向性も非常にマッチしているため,素晴らしい会社に入社することができたと思っています.
#転職活動で苦戦した理由
なかなか採用が決まらなかったと理由としては,以下の3つがあると考えています.
- アラフォーであること
- 民間企業での就業経験が少ないこと
- マネージメント経験(プロジェクトリーダー等)がないこと
1.に関しては選考過程で直接指摘されたわけでないのですが,状況等から年齢フィルターを感じることはありました.有名なGoogleのデータサイエンティストTJOさんもポスドクから転身された方ですが,私よりずいぶん早い30代半ばでポスドクから民間企業に移られています.
2.はR&Dを除くと言うまでもないことだと思います.ただし,面接まで進んだ企業では,R&Dの部門でなくても大学等での研究経験を十分に評価していただけていたようです.R&D以外でも,ポスドクでの研究経験を高く評価していただける企業はそれなりにあるようです.
3.に関しては,一般的な話だと思いますが,アラフォーにもなるとマネージメントを期待されます.私はプレイヤーを希望しているが応募先の企業はマネージャーとして採用したいというようなミスマッチが発生することがいくつかありました.
#やっておいてよかったこと(転職に役立ったこと)
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Pythonプログラミング(転職に備えた技術習得)
転職活動を始める一年以上前からキャリアチェンジに備えてPythonを業務で使用するようにしました.それまではRを使っていましたが,企業のデータ分析案件はほとんどPythonが使用されるときいたので,RからPythonに切り替えてPythonの実務経験を積みました.Pythonの実務経験がなければ転職活動はより苦戦していたと思います.また,技術習得の意欲のアピールにもつながったと思っています. -
オンラインコミュニティ(データラーニングギルド)に入会
データラーニングギルドには,企業でデータ分析に関する業務を行っている方が多数在籍されていますので,いろんな相談,情報交換を行うことができ,ネットでは入手できない現場の情報等を得ることができました.同時に一人で悩まなくていいという安心感を得ることができ,メンタルにもいい影響を受けました.データサイエンティストへのキャリア支援も行われており,私も相談にのっていただきました.幅広い業種を扱う一般的なエージェントと異なり,データサイエンティストとして活躍してこられた方に相談に乗っていただけるので,具体的で本質的なアドバイスをいただいたり,自分に適した求人を紹介していただき,非常に心強く感じました.最終的に,このコミュニティ内で現在の会社に応募するきっかけをいただき,採用に至ることができました. -
論文執筆や学会発表
これらは研究者の仕事で必須のアウトプットですが,自分が上げた成果の客観的な証拠となりますので,企業の採用においても評価されると思います.また,論文執筆と学会発表を通じて習得したプレゼンテーション能力や文章力は採用試験や入社後の業務で必ず役立ちます.要するに,研究者としてしっかり成果を出すことが企業への転職おいても重要だと思います.
#転職のためにやっておくべきだったこと
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研究成果をソフトウェアに実装
研究成果を学会で発表したり論文にまとめたりして終わるのではなく,ソフトウェアとして実装し,同分野の研究者に提供したり一般公開するべきだったと思っています.それにより,ソフトウェア開発の実績と証拠ができれるので,採用での評価はより上がったのではないかと思っています.また,問題提起ー>解決アルゴリズム構築―>プレゼンー>システム実装 を一通りやってきましたという総合力のアピールにも繋がったと思います. -
SQLの習得
データ分析の業務ではSQLを使うことが多く,ほとんど必須の技術です.採用試験にSQLの問題がでる企業もありました.研究でSQLを使うことはなかったので,SQLの資格を取っておくと良かったのかなと思っています. -
民間企業との共同研究
雇われポスドクには難しいと思うのですが,企業の方と積極的に共同研究を行い,しっかり成果を上げれば,そこでできた人脈が採用につながる可能性もありますし,企業でも成果をあげられるという印象を企業の採用側に与えることができるのではないかと思います.
おわりに(ポスドクの方へ向けて)
以上,私の転職活動を偏った視点から振り返ってみました.参考になるような情報を提供できたかどうか不安ですが,いかがでしたでしょうか?
私の場合は,専門分野が社会で重要視されている技術だったので,アラフォーになるまでダラダラとポスドクを続けていましたが企業に就職できました.史上空前のAIブームに便乗しできたおかげであり,非常に運が良かったと思っています.ですので,偉そうなことは何一つ言えませんが,最後にささやかな提案を1つだけ.
ポスドクで将来に強い不安を感じている方は,副業をやったりプログラミングを勉強したりするなど稼げる技術を身に着けてはいかがでしょうか.精神的に余裕ができて研究にもいい影響がでると思います.
最後まで読んでいただきありがとうございました.