はじめに
株式会社TechSword CTOの宮本大輝@i7i5です(4文字IDいいでしょ。またCore i9が発売されていなかった中学時代に取ったIDです。)
2021年5月19日にTechSwordを創業し、半年が過ぎました。
その半年間を振り返りたいと思います。
こんな人におすすめ
- AIスタートアップ創業のリアルを知りたい方
- 学生でCTOを務めるとはどういうことなのかを知りたい方
- エンジニアとしての劣等感を感じている方(途中でこの話題に触れます)
忙しい人向け
- 元々、別のアプリを一人で作って起業しようとしてた
- その中で、**「自分はCEOよりもCTOになりたい」**ということに気が付いた
- **「AIも自分で作ったほうが早くない?」**ということで今の事業に至った
- 実務経験もなく、アーキテクチャの不透明性も高い中でスピード感を持って開発しなければならないという焦り
- エンジニアこそ**「非エンジニア」と共同創業**がおすすめ
- 「若さ」は武器
また、この記事は創業初期どんなことを考えていたのか、数年後の自分に宛てるポエムでもあります。
Meetyも公開しています
自己紹介
改めて、株式会社TechSwordでCTOをしている宮本大輝と申します。
岡山大学のM1(今年10月から休学中)で、休学前は楕円曲線暗号を用いたデジタル署名に関する研究をしていました。
また、大学3年生の時にアメリカのロードアイランド大学で研究インターンシップを行い、画像認識技術を用いた産業支援システムの構築をしていました。
加えて、2021年にはIoTプラットフォーマーであるソラコムでもインターンシップを行っていました。
好きな言語はPythonで、好きなAWSのサービスはSageMakerとGreengrassとAmplifyです。
TechSwordを創業するまで
TechSwordを創業したのは2021年(大学院1年)ですが、2020年(大学4年時)は別のアイデアで起業を試みていました。
ノーリスクで好きを伝える「スキッテ」
「同じクラスのあの人に告白したい」
「同じ職場のあの人をデートに誘いたい」
でも、同じコミュニティだからこそ思いを伝えてダメだったときのリスクは大きいですよね。
とはいえ、マッチングアプリで知り合った数回しか会ったことがない相手よりは、普段の様子や人柄をよく知っている同じコミュニティ内の相手の方がなんとなく恋愛対象になりやすい。
そこで私は「ノーリスクで好きを伝える スキッテ」というアプリを考えました。
概要
「すでに出会っている人同士でのマッチング」を実現するために、LINEの友だちを使ったマッチングを考案しました。
流れ
- ① LINEの友だちの中からあなたの気になる人を最大3人選択
-
- この時、あなたが誰をチョイスしているかは誰にも公開されません
- また、LINEの友だちであれば年齢も性別も国籍も関係ありません
- 同じコミュニティ内ならお互いのLINEくらいは知っていますよね
- また、LINEを使うことによってサクラの防止にもなります
- ② もし相手も自分のことを「気になる」に選択してくれた時に通知
-
- お互いが「気になる」という状態になったことが担保されたときに通知されます
- これにより、「思いを伝えたが相手は私に全く気がなかった」という最悪な事態を回避できます
仮説検証・ヒアリング
アイデアを思いついたらすぐ実行することが大切です。
そこで、MVPを用いた仮説検証とヒアリングを同時並行で行いました。
MVPによる仮説検証をどのように行ったかは秘密です
ヒアリングでは
- あなたがこれまで気になった相手はどんな人ですか?
- その人はどこで出会いましたか?
- あなたはその時、どんな行動をしましたか?
といったことを質問し、仮説を検証していきました。
男性受けの方が良かった印象です。「そんなので告られてもなー」っていう女性は一定数いました。
ほかにも、「マッチング時のお互いの好感度に差がありそう」なんて意見も。
色々な意見をもらいつつ、自分の中ではいける気がしていました。
ヒアリングの参考書
ヒアリングに関してはこの本が参考になりましたhttps://honto.jp/netstore/pd-book_27068233.html
岡山イノベーションコンテスト大賞受賞
起業を志す大学生あるあるかもしれませんが、ビジネスプランコンテストにいくつか応募しました。
その1つが「岡山イノベーションコンテスト」です。
いくつか部門にわかれており、私は「大学・専門学生の部」で出場しました。
審査は
- 書類審査
- 2次審査(3分ピッチ)
- ファイナル
の3段階となっており、私の代は書類審査で約30組→6組に絞り込まれ、その中からファイナリスト3組が選ばれました。
光栄にも私はそのファイナリストに選んでいただき、最終的に「大学・専門学生の部」で大賞をいただきました。
https://twitter.com/i7i5/status/1340272072803504128?s=20
こうして少しずつ軌道に乗っていたわけですが…(続く)
スキッテを進めていく中での迷い
そんなこんなで「スキッテ」の開発を進めていたわけですが、自分の中で少し迷いがありました。
「作る」という行為が楽しい
エンジニアあるあるだと思うのですが、何かサービスを作るというその過程を楽しんでしまうんですね。これは別に悪いことではないと思うんです。でも、ビジネスはプロダクトを作って顧客に売って利益を生んでなんぼです。
その点、私はスキッテの開発をすることに楽しみを覚えていて、あまりその後のことを考えられていませんでした。それを感じていたのが2021年の3月頃です。
この頃からふと「自分はCEOよりもCTOの方が向いているんじゃないか」と考えるようになりました [*1] 。
[*1] CTOが経営感覚を持ってなくてよいという意味ではありません。スタートアップで何か新しいプロダクトを開発し、顧客に価値提供をするにあたって、エンジニアとしての強みを生かすならばCEOよりもCTOだろうという意味です。
「もっと宮本くんの良さを生かせることをしてみたら?」
そんな迷いがあったころ、普段お世話になっている広島のSさんとお話しする機会がありました。
その頃といえば宮本がスキッテとかいうアプリを作ろうとしていることは岡山の創業コミュニティの皆さんに認識していただいており、会うたびに「スキッテどうなの?」と聞かれていました。
案の定、そのSさんにも聞かれて私は「正直、ちょっと迷いがあるんですよね。」ってことを伝えました。
その時のSさんからの返答が
「もっと宮本くんの良さを生かせることをしてみたら?」
だったわけです。
ここで**「やっぱり私はCTOになる」**その思いが固まりました。
長島との出会い
きっかけ
後に共同創業者となるCEOとの出会いは2月、前項のSさんからの言葉を受ける前です。
彼が「医療×AIの事業を起こしたい」という相談を学内のある組織に行ったことがありました。
私もその組織と関わりがあり、ちょうどイノベーションコンテストで大賞を受賞してイキっていた頃(笑)だったので、彼と先生の面談に同席することにしました。
その時、ちょうど私の通っていた岡山イノベーションスクールの応募〆切間近だったので彼に応募を促し、のちに彼もスクール生となりました。がしかし、それっきり特に連絡を取ることはありませんでした。
エンジニアとしてのジョインを断る
その後、彼は医療×AIから中高生向けのアプリへとプランを変更したのですが、私がコードを書けるということを知っていた彼は私に「エンジニアとして参画してくれないか」という声掛けをしてくれました。4月半ばくらいの出来事だったと思います。
がしかし、私は断りました。なんだか彼のプランあんまりおもんないなと率直に思っちゃったんですよね笑。
そうやって断りはしたのですが、「自分はいつかCTOになりたい。」ということをその時彼に話していました。
「一緒にAIスタートアップをやろう」
「また宅飲みしない?」
と誘われた私。人の誘いには基本乗ってしまう私はもちろんYES。
来る4月29日。21時に集まり乾杯🍺
そこで「一緒にAIスタートアップをやろう」と誘われたのです。
前回、エンジニアとしてのジョインは断ったものの、彼の営業力や弁が立つこと、またスタートアップのファイナンスも自分で勉強していることはとても魅力的に映っていました。
そんなこともあって、普段は優柔不断な私が「よし、会社作るか」と即答したのです(自分でも不思議)。
そこからのスピードは速く、登記手続きをパパっと進めてお日柄の良い5月19日に一緒に法務局へ行きました。
創業してから
大きく「AIスタートアップ」として始めたものの、具体的にどんな事業をするかは創業してから考えました。
「AIを活用した業務改善に興味ないですか?」と営業電話をかけてみたり、「自動採点AIいけるんじゃね?」と思って近隣の中高にアンケート取りに行くほか、知り合いの先生にオンラインでヒアリングしたり…。
で、営業電話をかけたときにある中小企業の方のシステム部の方の一言が印象的だったんです。
「私自身はAIに興味があるんだけど、なにせ人手が少ないから御社みたいなところと定期的に打ち合わせをするような余裕はないんだよね」
コミュニケーションコストが高くて困るのなら、AIも自分たちで作っちゃえばいいんじゃない?そう思って始まったのが**「ノーコードAIプラットフォーム TechSword Platform」**です。
(厳密にいうと、今の事業に至った理由は他にもいくつかあります)
プロダクト開発を始めてみて
現在、私と後輩エンジニア4人の計5人で開発をしています。
学生でAIスタートアップをやるにあたっての苦労を率直に書きたいと思います。
苦労した点
1. 実務経験がないこと
ここが一番大きいです。
どんなアーキテクチャにすればよいのか、どんな技術を使えばいいのか、といったことに関しては完全に0からのスタートでした。
また、Gitのブランチの運用の仕方など、開発環境も模索しながら構築しました。
2. エンジニアとしての劣等感
CTOはコードを書くことだけが仕事ではありません。しかし、会社の1人目のエンジニアであり、テックリードであることには違いありません。
周りと比べれば私は比較的コードが書ける方だという自負はありますが、やはり上には上がいます。
機械学習回りとバックエンドは得意ですが、フロントはまだまだです。
なかなか思い通りにプロダクト開発が進まないことに対して苛立ちを感じることもあります。
でも、適度な劣等感はスパイスだと思っています。
劣等感を感じるということは、成長のチャンスでもあると思います。
技術力は一朝一夕で身につくものではありません。
劣等感を感じつつも、毎日プログラムと向き合い、勉強を続けることで少しずつ成長していくものだと思います。
3. 焦り
スタートアップにとってスピードが命です。
私たちはプロダクトが完成する前に実験導入に協力してくださる企業を確保し、〆切を設定しました。
ただでさえリソースが少なく、またアーキテクチャや使用する技術の不透明性も高い中でどうにか〆切に間に合わせなければならない状況は非常に焦りを感じました(今も感じています)。
4. エンジニアとの繋がりが少ないこと
LINEやCyberAgentみたいなITメガベンチャーにはエンジニアがたくさんいますが、地方かつ学生起業ともなるとエンジニア(特にスタートアップに興味がある層)との繋がりがほぼありません。
情報交換できるエンジニアが欲しいなと思うことは多々あります。
(ちょっとでも宮本に興味を持ってくださった方は連絡してくれると嬉しいです)
とはいえ
なんとかなるなという印象です。
昔に比べればクラウド等のおかげでWebサービスは格段に作りやすくなっています。
また、一緒に働いてくれているメンバーみな優秀で、毎日助けられています。
加えて、AWS Activateのおかげでクレジット上限に達するまではクラウドリソースおよびテクニカルサポートを無料で利用できるのは大変重宝しています。
学生でAIスタートアップを創業したCTOから伝えられること
曲がりなりにもCTOとして半年間やってきた身として、この記事をご覧になっている皆さんに共有したいことです。
非エンジニアと共同創業がおすすめ
これは一番伝えたい。
エンジニアって「どういう実装にしよう」とか「この技術の方が面白い」とか、割と開発の過程を楽しんでいると思うんです。それは別に悪いことではないし、新しい技術に挑戦していくことはディープテックカンパニーにとって必須です。
しかし、残念ながら顧客にとってはどうやって作ったかなんて知ったこっちゃないんです。
結果だけ出ていればいいんです。
それに、エンジニアは完璧主義が多い気がします。(これは私の性格的なものかも)
「この機能がないと使い物にならないのではないか」
「こういう事態が起こる可能性は0%とは言えないから、事前に対処しておいた方がいいのではないか」
そんなこと考えていたらキリがありません。
プロダクトに完璧はありません。
「ワンチャン使うかもしれない機能」を5つ中途半端に作るくらいなら、「確実に使う、顧客のUXに大きくかかわる機能」を1つきちんと仕上げましょう。
こうしたエンジニアの良くも悪くもこだわりが強い側面に対して、非エンジニアのCEOがビジネス的な視点から適宜、軌道修正していくことが大事だと思います。
エンジニアの起業について
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頼ろう、人に、モノに
わからないことは、AWSのSAや周りのエンジニアに聞きましょう。
Google人工知能チームには「15分ルール」といって、『15分自分で考えてわからないことは人に聞くように』というルールがあるようです。
ただ、私はまだ人に頼るのがあまり上手くないので今後改善していきたいところです。
便利なものは多少お金がかかっても買いましょう、使いましょう。Time is Moneyです。
エンジニアなのでコーポレートサイトぐらい一から作ろうと思えば作れますが、STUDIOみたいなノーコードツールの方が早くて綺麗です。
巻き込まれ力を鍛えよう
世の中「巻き込み力が大事」という言葉をよく聞きますが、私は「巻き込まれ力」の大切さも強調したいです。
「巻き込み力なんて私ないよ…」っていう人は多いのではないかと思います。
だったら、巻き込み側の人間が「何かをしよう!」っていうときに、「この人と一緒にやりたい」と思い浮かべてもらえるような人になりましょう。
ただ、巻き込まれ力をあげる具体的な方法については私の中でまだ解が見つかっていません。
言語化できるように努めます。
若さを生かそう
「若さ」は武器です。最も大きな武器かもしれません。
私にはまだ養う家族もいませんし、ローンもありません。(奨学金は返済せな)
朝までプログラム書いてても平気なくらい体力があります。
また、世の中の多くの人は若者を応援してくれます。
今が一番若い。
おわりに
長文(駄文)となってしまいましたが、最後までご覧いただきありがとうございました。
また、Meetyも公開していますので、もし「もっと話を聞きたい」と思ってくださったのであればお気軽に面談申請していただけると幸いです🐧