はじめに
Devinの能力を最大限に引き出すためには、PlaybookとKnowledgeという2つの重要な機能を理解し、使い分けることが不可欠です。
- 「毎回同じような指示を出すのが面倒...」
- 「プロジェクト固有のルールをDevinに覚えてほしい...」
こんな風に感じたことはありませんか?
本記事では、Devinをまるで優秀な新メンバーのように育てるための「Playbook」と「Knowledge」の機能について解説し、その効果的な使い分けを具体的な利用シーンと共にまとめます。
Playbookとは? - タスク自動化のための「レシピ」
Playbookは、繰り返し行う定型的なタスクを自動化するための「手順書」や「レシピ」のようなものです。特定のタスクを完了させるための一連のコマンドやゴールを定義しておくことで、Devinがその指示に沿って自律的に作業を実行してくれます。
主な特徴
- 再利用性: 一度作成すれば、同じタスクを何度でもDevinに実行させることができます。
- 共有可能: チームやコミュニティでPlaybookを共有し、ベストプラクティスを横展開できます。
- 手続き的: 「何(What)」を「どの順番(How)」で実行するのか、という手続き的な指示を定義します。
具体的な利用シーン
- 新しい機能開発時の環境構築
- データベースのマイグレーション実行
- 新規コンポーネントの雛形作成とセットアップ
- サードパーティのライブラリ導入と初期設定
決まった手順の「作業(Doing)」をDevinに任せたいときに使います。
Knowledgeとは? - Devinを育てる「教科書」
Knowledgeは、Devinがタスクを実行する際に常に参照すべき「知識」や「ルール」を共有するための機能です。これは、新しいエンジニアをプロジェクトにオンボーディングする際に、ドキュメントを渡したり、口頭でルールを伝えたりするプロセスに似ています。
ここに情報を登録しておくと、Devinはすべてのセッションを通じてその知識を記憶し、タスクを遂行する上で適切な判断を下すための参考にします。
主な特徴
- 永続性: 一度登録すれば、Devinはその知識を忘れず、関連するすべてのタスクで活用します。
- 自律的参照: 「この情報を使え」と明示的に指示しなくても、Devinが必要だと判断した際に自ら情報を参照します。
- 宣言的: 「どうあるべきか」「何を知っておくべきか」という宣言的な情報を記述します。
具体的な利用シーン
- プロジェクト固有のコーディング規約やスタイルガイド
- よく発生するバグとその解決策の共有
- 社内ライブラリや独自ツールのAPIドキュメント、利用方法
- 本番環境へのデプロイワークフローやテスト手順
- 利用すべきでないライブラリや非推奨の関数リスト
プロジェクト固有の「知識(Knowing)」をDevinに覚えておいてほしいときに使います。
具体例で考える!「アプリのバージョンアップ」タスクの判断フロー
「理屈はわかったけど、自分のタスクだとどっちか迷う...」と感じるかもしれません。ここでは、多くの開発者が行う「リポジトリで管理しているアプリのバージョンアップ」というタスクを例に、具体的な判断フローを見ていきましょう。
Step 1: まず、タスクを「作業手順」と「ルール」に分解する
「アプリのバージョンを上げてリリース準備をして」という一つのタスクも、よく見ると2つの要素に分解できます。
-
🛠️ 作業手順 (Doing / How-to)
-
package.json
のバージョン番号を書き換える -
npm install
で依存関係を更新する -
CHANGELOG.md
に変更点を追記する -
git commit
とgit tag
でコミットとタグを作成する -
git push
でリモートリポジトリに反映する
-
-
📖 ルール (Knowing / What-to-know)
- バージョン番号は「セマンティックバージョニング」に従うべき
- コミットメッセージは「
chore(release): vX.Y.Z
」の形式にすべき - CHANGELOGは「Keep a Changelog」のフォーマットで書くべき
- リリース作業は「
main
ブランチ」から行うべき
Step 2: 分解した要素を書き場所に割り当てる
分解できれば、あとは簡単です。それぞれの要素を最適な場所に割り当てていきましょう。
-
🛠️ 作業手順 → Playbookへ
- 「どうやるか(How)」という具体的な手順は、Playbookに記述します。
- これにより、一連のバージョンアップ作業が自動化されます。
-
📖 ルール → Knowledgeへ
- 「どうあるべきか(What)」という規約は、Knowledgeに記述します。
- これにより、Devinが行う作業の品質が担保されます。
Step 3: Devinの動きを想像する 🤖
この分担によって、Devinは以下のように賢く動いてくれます。
- あなたはDevinに「このPlaybookを使ってアプリのバージョンアップをして」と指示します。
- DevinはPlaybookに従って、
package.json
の更新やnpm install
を手順通りに実行します。 - コミットの段階になると、DevinはKnowledgeを自律的に参照し、「あ、このプロジェクトのコミット規約は
chore(release): vX.Y.Z
だったな」と理解し、ルールに沿ったコミットメッセージを生成します。
このように、具体的なタスクを「手順」と「ルール」に分解することで、迷うことなくPlaybookとKnowledgeを効果的に使い分けることができます。
まとめ: PlaybookとKnowledgeの効果的な使い分け
それぞれの機能を理解したところで、本題の「使い分け」を一覧表にまとめます。どちらを使うべきか迷った際の判断基準としてご活用ください。
観点 | Playbooks | Knowledge |
---|---|---|
目的 | 特定タスクの実行手順を定義し、自動化する | プロジェクトに関する背景情報やルールを提供し、タスク品質を向上させる |
情報の性質 | 手続き的・命令的(何を、どの順番で実行するか) | 宣言的・記述的: (どうあるべきか、何を知っておくべきか) |
永続性 | セッション単位(揮発性)タスク実行時に都度適用する | 永続的: 一度登録すれば、Devinが常に自律的に参照する |
比喩 | タスクのレシピ、手順書 | プロジェクトの教科書、申し送り事項** |
指示の仕方 | 「この手順でやって」 | 「この知識を覚えておいて」 |
おわりに
DevinのPlaybookとKnowledgeは、それぞれ異なる目的を持つ強力な機能です。
- Playbookで定型作業を自動化し、開発の初速を上げる。
- Knowledgeでプロジェクトの知識を教え込み、Devinの判断精度とアウトプットの品質を高める。