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VS-RC003HVとArduinoでI2C通信してIXBUS拡張基盤を自作する

Last updated at Posted at 2021-11-17

概要

VS-RC003HVとArduino(Arduino互換ボード)でI2C通信をする方法です。
UARTで通信する例は多いですがI2Cの例はあまり見当たらなかったので書こうと思います。

当時を思い出しながら書いている部分もありますので、一部不正確な部分もあるかと思います。ソースコードや設定をご使用なさる際は自己責任でお願いいたします。

前提

VS-RC003HVには拡張端子としてIXBUSポートが搭載されています。VS-RC003HV 取扱説明書には以下の記載があります。

CN7 IXBUS拡張
 外部に IXBUS の拡張機器を接続するための端子です。IXBUS はフィリップス社の提唱するI2CバスとUART、電源(バッテリ電圧、5V、3.3V)、リセット信号等から成り、特にI2Cバスにより豊富な拡張性を確保しています。基板右下、ロータリースイッチ側が 1番ピンです。

このポートにはI2C端子があり、VS-RC003HVの純正拡張基盤「VS-IXxxx」シリーズはVS-RC003HVとI2Cで通信をしています。

仕組み

ArduinoをVS-RC003HVのIXBUS拡張基盤として認識させます。
Arduinoは自身を任意アドレスのI2Cスレーブとして設定できるので、IXBUS拡張基盤のI2Cアドレスとして起動してあげることで、VS-RC003HVは純正基盤だと認識して通信してくれます。

単純な方法ですのでI2Cポートがついているマイコンならどれでも可能だと思います。

できること

  • RobovieMakerのポーズスライダ値を使用した条件分岐
  • Arduinoに接続したセンサ値のVS-RC003HVでの利用(未検証)

などが可能です。

私がプログラムを担当した「METAL GEAR REX 参号機」では、この方法でVS-RC003HVでモーション再生と音声出力、ArduinoでLED発光を同期して行いました。

本編

ここでは「VS-RC003HV用 LED拡張ボード VS-IX004」として認識させる設定で進めます。
取扱説明書はダウンロードしておくと分かりやすいです。

VS-RC003HVとArduinoの接続

IXBUSのピンアサイン

ピン番号 端子名
1 TXD0
2 RXD0
3 RESET
4 SDA1
5 SCL0
6 SDA0
7 VBATTD
8 +5V
9 +3.3V
10 GND

5番ピン SCL06番ピン SDA0をそれぞれArduinoのSCLとSDAに接続します。
10番ピン GNDも接続しておくと良いです。
電源が欲しければ8番や9番ピンから取れます。便利ですね。

RobovieMaker2の設定

取扱説明書1. LED拡張ボードの基本設定2. ポーズスライダの設定 に従って設定してください。
1の途中で「I2Cバスアドレス」を設定する部分があると思いますが、ここでは0xc0に設定しておいてください。ほとんどの場合はデフォルト値だと思います。

2-1.ポーズスライダのプロパティ設定 が終わると、33~38番のポーズスライダが追加されるはずです。

プログラムの書き込み

Arduinoに以下のプログラムを書き込みます。
Wire.begin();のカッコ内には任意のI2Cスレーブアドレスを指定できますが、ここではWire.begin(0x60);にしておいてください。

#include <Wire.h>

/* カウンタ変数 */
int count = 0;

/* 一時格納するためのバッファ */
byte dt;

/* 送られてきた数値を格納する配列 */
/* reg_add, PSC_0, PWM_0, PSC_1, PWM_1, LS_0, LS_1, LS_2, LS_3 */
byte reData[9];

void setup(){
    Serial.begin(115200);
    Wire.begin(0x60);
    Wire.onReceive(receiveEvent); //割り込み関数の設定
}

void loop(){
    for(uint8_t i=0; i<9; i++){
        Serial.println(reData[i], BIN);  // 値の確認
    }
}

/* データを受信すると処理される割込み関数 */
void receiveEvent(int howMany){
    while(Wire.available()){
        dt = Wire.read();
        reData[count] = dt;  //reData[count]にRobovieMakerのスライダ値が入る
        count++;
    }
    count = 0;
}

「I2Cバスアドレス」と「スレーブアドレス」違う理由

RobovieMakerで設定した 「I2Cバスアドレス」 は 0xc0 なのに、Arduinoスケッチでは Wire.begin(0x60); と書いています。

これはVS-IX004に使用されているIC「PCA9532PW」の仕様によるためです。
データシートによると、接続時にマスターから送信して欲しいデバイスアドレス8bitのうち、スレーブアドレスは上位7bitなようです。

image.png

RobovieMaker2で設定した 「I2Cバスアドレス」 0xc0 = 11000000 の最下位1bitを削除すると 0x60 = 1100000 になり、これがArduinoで設定する本当のI2Cアドレスになります。

最下位1bitはICの動作を切替(1:Read / 0:Write)するために使用されます。マスター側が必要に応じて切り替える必要があるのでデバイスアドレス8bitは最下位ビットのみコロコロ変わり、RobovieMakerで設定する「I2Cバスアドレス」とは正確には違うアドレスになると思うのですが、設定ダイアログで7bitのスレーブアドレスのみにしない理由はよくわかりません。

接続確認

Arduinoの電源を入れ、PCとVS-RC003HVを接続しRobovieMakerの通信開始ボタンを押してください。
「プロジェクトの設定」>「CPUの設定」をクリックし、「拡張機器」タブから、先程追加した「VS-IX004」を選択し、「変更」をクリックしてください。
「拡張機器の追加 / 変更」ダイアログが開いたら、「デバイスの詳細設定」をクリックし、設定ダイアログを確認してください。「現在の接続状態」がOKであれば成功です!

ArduinoIDEからシリアルモニタを開き、ArduinoがVS-RC003HVから受け取っている値を確認します。上手くいっていればRobovieMakerのポーズスライダを動かしたとき、次の表のように対応した値が変化するはずです。

10010 Register_Address reData[0] ポーズスライダ番号
0 PSC_0 reData[1] 35
0 PWM_0 reData[2] 33
0 PSC_1 reData[3] 36
0 PWM_1 reData[4] 34
10101010 LS_0 reData[5] 37
10101010 LS_1 reData[6] -
11111111 LS_2 reData[7] 38
11111111 LS_3 reData[8] -

まとめ

ここでは「VS-IX004」としてArduinoを接続しましたが、肝は Arduinoが純正拡張基盤と同じアドレスになること です。
VS-IXxxxシリーズの情報は説明書から回路図まで全て公開されているので、使用されているICのデータシートを見に行けば今回と同じ方法で「デジタル入出力拡張ボード VS-IX007」だろうと「アナログ入力拡張ボード VS-IX008」だろうと自作できてしまいます。

「あるモーション中の決まったタイミングで目を光らせたい」、「あるモーションではガトリングを模したLEDを点滅させたい」などのロボットの動きと発光のタイミング合わせが重要な場合に、RobovieMakerのポーズスライダで制御してモーションに組み込むことができるのは相性がとても良いです。

最後に

METAL GEAR REX参号機に携わってから3年経ちましたが、当時頑張っていたことをようやく書き出せてすっきりしました。

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