はじめに
こんにちはトドです。はじめてのQiita投稿はやはりServiceNowでした。
普段はとある外資系企業でServiceNowコンサルチームの部門長を務めております。
今日は、ServiceNowでヒト・モノ・カネの管理をということで、
Technology Workflowのソリューションである
Strategic Portfolio Management (SPM 戦略ポートフォリオ管理)
Application Portfolio Management(APM アプリケーションポートフォリオ管理)
Common Service Data model(CSDM CMDBにおける共通データモデル)
の3つについて触れつつ、イマイチ日の当たらない、ServiceNowで実現するDXの戦略推進・コスト合理化について語ってみようと思います。
文面、説明のほとんどをあえて公式資料からのコピペを使わずに、私の言葉で解釈して書いています。公式から怒られたら修正します。
SPM・APMとは何をするソリューションなの?
まずどの業務領域をカバーするかと言うと、予算編成~執行プロセスです。
企業はITの予算化について既存のシステムの取り換え計画を考え、システム化要望を把握し、予算案を作成し、年次予算を決める。プロジェクトの進捗把握と共に期中に中間見直しを行う。また、必要に応じてリソースのアサインや要件管理をしていく…
幅広いですが、これらのプロセスをトータルにサポートするソリューションです。
・SPM(Strategic Portfolio Management 戦略ポートフォリオ管理)
旧称をITBM(IT Business Management)と言います。
現在はTechnology Workflowの一部で、主に戦略立案~PPM(Project Portfolio Management)領域をカバーします。DX戦略の立案から、ビジネス部門のアイディア収集、予算案作成、採否判定、プロジェクト化、プロジェクト執行、アジャイル型・ウォータフォール型プロジェクト管理、リソース管理まで一通り行えます。
※割と表記揺れを起こしがちですがSPM=PPMと暗黙知があったり、
SPM-PPM SPM-APMとなっていることもありますが、本記事では、SPM=SPM-PPMとします。
・APM(Application Portfolio Management ※現在はEnterprise ArchitectureにRename)
アプリケーションをビジネスの軸で管理するソリューションです。
ビジネス機能とアプリはどう紐づくか。
アプリケーションごとにリスク、満足度はどうなっているか。
アプリはどこで利用終了するのか?SaaSか?オンプレか?
いくら使っているか?使用しているソフトウェアは保守期限を迎えるか?
同じ領域に複数のシステムが重複して存在しないか?
ユーザーやビジネスの目線でアプリケーションはどの様に評価されているか?
など、アプリケーションの評価、合理化、刷新計画に欠かせない評価・分析を提供します。
(上記二製品とも、既に名前の通りIT向けだけの製品だけでは無いですが、分かり易く説明する為上記はITに絞りました。グローバルでは事業部予算や製薬業界のR&Dの開発費管理でも割とポピュラーだったり。)
SPMの各機能と役割
・Idea(Innovation) Management アイディア管理
ユーザーからIT化のアイディアを収集します。
最近Innovation Managementに名前が変わったようで…
・Demand Management デマンド管理
予算案、システム化要求(デマンド)を作成します。
デマンドは承認されるとプロジェクト化します。
下図の様にバブルチャートでデマンドの評価も行えます。
(OOTBに則した実装が必要ですよ!)
・Project Management プロジェクト管理
プロジェクトの進捗管理を行います。
細かいスケジュール管理やタスクの依存関係管理はあまり得意ではありませんが、
プロジェクトの進捗に合わせて予算の消化を見ていくことが出来ます。
・Resource リソース管理
リソース管理、割り当てを行います。いわゆるヒトの管理。
・Agile Development
SAFeのプロセスに則ったアジャイルでのプロジェクト管理を行います。
・Strategic Planning
IT戦略と各デマンド、プロジェクトとの紐づけとプランニングを行います。
アジャイルとウォーターフォールのプロジェクトの統合や、ゴールと目標の階層を含め整備するなど、戦略と各プロジェクトの一貫性を保つ目的で使用します。
(Proライセンスが必要)
一般的なプロセスの順番はIdea⇒Demand⇒Projectです。
会社の中でシステム化アイディアを収集、その中でIT部門は予算化要望を作成、承認されればプロジェクト化すると言う流れですね。
Idea~Demandだけでも、一般的な予算編成のプロセスはカバーできるのでこの二つの機能だけでも、企業の年次予算策定に対応出来ます。
複雑な原価計算や決算処理には向きませんが、積み上げた予算を割り当てつつ優先順位を決めることや、年度での消化をモニタリングしていくプロセスに向いています。
ダッシュボードの例
CAPEXやOPEXの分類や、戦略投資や維持投資などのカテゴリ分けも可能
その他Investment Funding等、投資判断に役立つツールは多数存在しますが、長くなり過ぎるので割愛します。
SPMの事例 何に役に立つの?
いくつか事例を見てみましょう。
参天製薬さん。まさしく代表的な使い方。海外事業の拡大とともに増え続けるITプロジェクトの全容を「見える化」。
みずほ銀行の事例。海外のデマンドの可視化、ガバナンスのシナリオですね。
横浜市の事例。何と既に自治体の予算編成プロセスでも利用されている。
APMの機能 効果、事例
APMの機能としては、
Business Application Inventory
仕訳したアプリケーションの一覧をダッシュボードで。
会社の中でいくつアプリがあるか知らない会社さん、意外と多いですよね…
CostやUsageの情報を組み込んだり、インベントリ作成後にアプリケーション評価を行うことでBusiness Applicationのユーザーからの評価を整理することも出来ます。
Technology Portfolio Management
主にアプリケーションのライフサイクル管理。ソフトウェア資産、ハードウェア資産の情報と紐づき
保守期限や取り換え時期を把握し、プロジェクト計画を立案することに役立ちます。
勿論SPMと繋がり、デマンドを起票することも出来ます。
Capability Map Business Capability Management
後述するビジネス機能(Business Capability)ごとのビジネスアプリケーションのマッピング。会社の機能:たとえばCRM(顧客管理)の配下のアプリケーションで現在リスクが生じていないか、機能強化していく必要は無いか。機能ごとにアプリケーションが充実しているか、等を整理します。
APMは日本の事例発表こそ少ないですが、先日のServiceNow World Forum2023での日産自動車さんの事例が記憶に新しいと思います。こちらはZdNetさんの記事から見れます。
・企業変革には優れたユーザー体験が必要--ServiceNowが業務改革を後押し
APMのど真ん中事例で、数千のアプリケーションを仕分け、新規のプロジェクト化の判断に役立てるユースケースです。非情に素晴らしい事例でした。
CSDM(Common Service Data Model)
出ましたCMDBにおけるServiceNowの基礎データモデル。この記事書き始めると3記事くらいは消費するので、今日はドメインの話とSPM/APMに関連する部分のみに触れます。
CSDMはCMDBのServiceNowにおける標準モデルですが、Design(計画)、Manage(運用)、SELL・Consume(サービス)、Build(開発)、Foundation(基礎データ)の5つのドメイン(ざっくり言うとデータベースの利用用途別の領域)に各クラス(Business ServiceやApplication Serviceといったテーブル)が配置されています。
SPM/APMにおいて登場するのは主にDesignのドメインで
‐Business Application-ビジネス観点でのアプリケーション
‐Business Capability-ビジネスアプリケーションが持つ機能
の二つを主に使用します。特にAPMの利用にあたり、まずBusiness Application=企業が保有しているアプリケーションの仕訳、インベントリ作成から行います。
この時点で、実は複数の部門が同じ様な機能のアプリケーションを持っていたり、別々にローカルで契約していることが分かったりもします。なんてこったい。
ちなみにBusiness Applicationはインシデント等のオペレーションでは使用しません。Application Serviceと対になり、運用情報はそちらで管理します。
それぞれのクラスに対して想定されるペルソナ≒担当者が定義されており
Designのドメインでは、Enterpirse ArchitectやApplication Ownerといったペルソナが用意されています。いわゆるEA-エンタープライズアーキテクチャの領域なのです。
終わりに
最初に課題と効果を書こうか迷いましたが、こんな課題でお困りの会社さん、自治体さんには効果があります。
・IT戦略と各プロジェクトが紐づけ出来ておらず、投資戦略が曖昧になっている。
・一般的な予算編成プロセスにムダと手間が多く、集計、自動化し効率化したい。
・社員、リソースの稼働状況の把握をしたい。
・プロジェクトの進捗を管理し、ガバナンスを強化したい。
・将来のシステム取り替え計画に向けてアプリケーションを仕分けしたい。
導入のポイントは、予算案作成と承認のプロセスの工数削減のみに目を向けるのではなく、適切な予算運用と想定外のコスト支出を防ぐ。緊急時に予算組み替えや割り当てを行える。会社全体の予算状況把握、海外のIT支出のガバナンス、可視性を上げる等、マネジメント視点で考えることが必要です。
ビジネス部門予算やIT部門予算の仕訳にも利用できるので、ビジネス主導のプロジェクトも多い中、CIOまたIT部門にとっては必須のツールとも言えると思っています。
ということで、ServiceNow SPM・APMのご紹介でした。あれ?ヒト・モノ・カネは?ええ、読み取ってください!!!最後まで読んでいただいたあなたにはきっと理解頂けるはず!
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