はじめに
「解像度」という言葉が、仕事においてここ1年ほどとても便利だなあと感じています。ここでいう「解像度」とは、ひとことでいうと「物事に対する理解の精緻さ」です。何かをあまり深く理解していない自身を表現したり、他者に対する評価として使えますし、自己分析においても使えます。たくさん使っていきましょう。
そこで、1.解像度という言葉はなにか、2.どこが良いのか、について書いてみたいと思います。
解像度という言葉はなにか
あらためて「解像度」とは、辞書から引いてきたわけではありませんが、ここでは「物事に対する理解の精緻さ」のこととさせてください。「理解」や「言語化」とかなり近いですが、「解像度」独特のニュアンスを含みます。もちろん、このニュアンスを必要としない場合は不適切ですが、詳細な理解を求めたり、理解が浅いことを示すのに、自他の感情を傷つけず正確に状況を捉えられることが多いと感じます。AさんがXについて解像度が高い、低い、などというように使います。
AさんがXについて解像度が高いというのは、次のような状況(全てを満たさなくても良いが多くを満たしている状況)をいいます。
・AさんはXのことを、シンプルに表現できます。
・AさんはXに関する経験があります。
・AさんはXの大事なポイントを簡潔に説明できます。
・AさんはXについて、さまざまな観点(幅、深さ)からの質問に答えることができます。
・AさんはXについて、Yという他のものごとと比較して差分を説明することができます。
・AさんはXについて、具体的にも抽象的にも色々な質問に答えることができます。
などです。AさんがXについて解像度が低い場合は逆です。
・AさんはXのことを、シンプルに表現できません。
・AさんはXに関する経験がありません。
・AさんはXの大事なポイントを簡潔に説明できません。
・AさんはXについて、さまざまな観点からの質問に答えることができません。
・AさんはXについて、Yという他のものごとと比較して差分を説明することができません。
・AさんはXについて、具体的にも抽象的にも色々な質問に答えることができません。
上記のようなニュアンスを一度に含むのが「解像度」という言葉です。
直感的にも、比喩ですが写真の解像度が低ければ、写真はよく見えません。同じ物事に対する理解として、Aさんの解像度が高い場合はAさんは、その物事に対して色々な角度からの質問に答えられるでしょう。その物事に対して、抽象化して答えることも、具体的に細かな点についても答えられるでしょう。文字通り、見えている世界が他の人と違うのです。
使い方の例
- Aさんは、エンジニアキャリアに関する解像度が高い
- Bさんは、自分の好きな食べ物に対する解像度が低い
- Cさんは、自分の体調管理に対する解像度が高い
- Dさんは、ビジネスサイドとエンジニアの違いに関する解像度が高い
- Eさんは、国語ができない人に対する解像度が高い
- Fさんは、自信とはなにか?に対する解像度が高い
- Gさんは、わかりやすい文章に対する解像度が高い
などです。
どこが良いのか
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多くの人に伝わりやすい
私はエンジニアとして普段よくエンジニアと関わりながら仕事をしていますが、エンジニア以外の業界の方、つまりスポーツの方、芸術の方、ビズサイドの方、大学生などさまざまな方に伝わる印象があります。
特に優秀な方と接する中で、解像度という言葉がよく出てくると感じます。
共通言語というのは大切なテーマで、ここがブレるとなかなか5人以上の組織で意思疎通が難しいですが、この言葉は多くを語らずともお互いの中にある具体的な概念を抽象化しているので、伝わりやすさがあります。 -
イメージがしやすい
ニュアンスもある程度具体的なのに汎用性が高い点です。物理的な実体の比喩である点が大きいでしょう。誰であっても、ぼやけている写真は分かりずらいし、解像度にはレベルがありより高い解像度や低い解像度があることも直感的に分かるからです。逆に言えばこのニュアンスを利用したくない場合は、不適切です。
他の言葉とのニュアンスの違いをまとめておきます。
解像度: 写真や動画のアナロジーを強調。
理解: やや抽象的に、分かることを強調。共通言語が少ない。理解が浅いと言われてもピンとこないし、理解が浅いと言われるとバカだと言われているようで腹が立つが、解像度が低いと言われるとあくまで自己を尊重してくれている感覚がある。
言語化: 言葉で表現することを強調。言語化だけだと、薄っぺらくてもただ言語化すればいいというニュアンスを含んでしまう。いくら言葉を尽くせていても、深くないと意味がない場合が多い。