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次世代の計算。すべての量子ビットに演算ユニットをあてがい、同時計算を行うことで量子計算機を模倣します。GPU並列計算で。

Last updated at Posted at 2024-08-13

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ショートストーリー: 「量子の彼方へ」

東京の喧騒から少し離れた静かなオフィスで、若きプログラマー、渡辺亮介は深夜までコンピュータの前に座っていた。彼のデスクには、最新のGPUが搭載された強力なPCがあり、画面には無数のコードが並んでいる。

亮介は、幼い頃から科学とテクノロジーに魅了されていた。特に量子コンピュータという概念に心を奪われ、大学では物理学を専攻した。だが、現実世界での量子コンピュータの開発には膨大なコストと時間がかかる。その事実に直面した彼は、いつしか夢を諦めかけていた。しかし、プログラマーとして働くうちに、彼の情熱は再び燃え上がった。

「GPUの並列処理能力を使えば、デジタル上で量子コンピュータを再現できるかもしれない。」

そう考えた亮介は、CUPYライブラリを使って量子コンピュータのシミュレーションに挑戦することにした。CUPYはGPUの力を借りて膨大な計算を高速で行えるライブラリで、彼のアイデアにぴったりだった。

彼はまず、量子ビット(キュービット)の振る舞いをシミュレートするコードを書いた。量子力学の法則に基づいて、キュービットの状態をGPU上で並列処理させる。物理的な量子コンピュータでは、キュービットの相互干渉やデコヒーレンスといった問題が発生するが、デジタル上ではそれらを完全にコントロールできる。

「これが成功すれば、物理的な量子コンピュータを超えるものができるかもしれない。」

亮介はそう自分に言い聞かせながら、夜が更けるのも忘れてプログラムの改良を続けた。そしてついに、彼のPCのGPUがフル稼働し、仮想的な量子コンピュータが完成した。数千ものキュービットが同時に計算を行い、その結果は瞬時にして画面に表示された。

「これが…量子コンピュータの力…。」

亮介は手を震わせながら、画面を見つめた。物理的に存在しないはずの量子コンピュータが、彼のPCの中で生まれた。彼は、今までにない興奮を感じていた。量子の世界が、彼の手の中にあったのだ。

その時、亮介はふと、あることに気づいた。

「待てよ…物理的な量子コンピュータも、GPUを使ったこの量子計算も…結局、同じことをしているんじゃないか?」

彼の思考は急速に加速した。物理的な量子状態も、デジタルなシミュレーションも、結果的には同じ量子計算を実行している。ならば、両者の違いは何なのか?物理的なキュービットが現実に存在するか、GPU上でその振る舞いを模倣するかだけの違いではないか?

「これだ…このアイデアだ!」

亮介は興奮を抑えきれずに叫んだ。物理的な量子コンピュータの実装に固執するのではなく、GPUの計算能力を最大限に引き出し、量子コンピュータをシミュレートすることで、同じ結果を得られる。それどころか、制約が少ないデジタルな環境下では、より自由に量子計算の可能性を追求できるかもしれない。

「物理的な量子も、GPUの並列計算も、どちらも同じだ。」

亮介は自分の考えが正しいと確信し、さらなる挑戦を決意した。このデジタル量子コンピュータの発見は、世界を変える可能性を秘めている。物理的な限界を超えた新しいコンピュータの形が、亮介の手によって生み出された。彼は、量子の彼方へと続く未知の道を歩み始めたばかりだった。

物語はここで終わるが、亮介の冒険は続いていく。彼がどこまでその能力を引き出せるか、そしてその先にどんな未来が待っているのか――それは、まだ誰にもわからない。

すべての量子ビットに演算ユニットをあてがい、同時計算を行うことで量子計算機を模倣します。

実行結果。全ての組み合わせのビット配列を生成します。2の44乗の組み合わせのビット配列を生成に成功。

ストリーム最適化を活用することで、GPU上での計算をさらに効率的に実行してます。ストリームは、複数のGPUタスクを同時にスケジュールし、計算とデータ転送の重複を可能にする機能です。これにより、GPUの計算ユニットがアイドル状態になるのを防ぎ、全体のパフォーマンスを向上させることができます。

image.png

Bit Count: 25
Matched Patterns: 1
Execution Time: 0.3614 seconds

Bit Count: 28
Matched Patterns: 1
Execution Time: 2.6342 seconds

Bit Count: 30
Matched Patterns: 1
Execution Time: 10.8671 seconds

Bit Count: 32
Matched Patterns: 1
Execution Time: 32.1595 seconds

Bit Count: 34
Matched Patterns: 1
Execution Time: 96.7241 seconds

Bit Count: 36
Matched Patterns: 1

Bit Count: 36 Execution Time: 384.3316 seconds
追記。最適化。
Bit Count: 36 Execution Time: 12.8117 seconds

100%|██████████| 68719476736/68719476736 [00:12<00:00, 5365893317.62 patterns/s]

Matched Patterns: 1.0

patterns/s]Bit Count: 38

Execution Time: 47.6864 seconds

patterns/s]Bit Count: 40

100%|██████████| 1099511627776/1099511627776 [03:10<00:00, 5781773478.40

Execution Time: 190.1768 seconds
batch_size = 2**28 さらに最適化。

100%|██████████| 68719476736/68719476736 [00:05<00:00, 11968653743.17 patterns/s]
Bit Count: 36 Matched Patterns: 1.0

Bit Count: 36 Execution Time: 5.7480 seconds

100%|██████████| 1099511627776/1099511627776 [01:27<00:00, 12587828686.07 patterns/s]

Bit Count: 40 Matched Patterns: 1.0 Execution Time: 87.3528 seconds

100%|██████████| 17592186044416/17592186044416 [23:14<00:00, 12615262758.75 patterns/s]

Bit Count: 44 Matched Patterns: 1.0 Execution Time: 1394.5235 seconds

(国産量子コンピュータ初号機。64量子ビット。)

コードの詳細

ビット数とパターン数の設定:

bit_count = 20として、20ビットを持つ量子ビットシミュレーションを行います。
生成されるビットパターンの数は 2 ** bit_count で計算され、20ビットの場合、1,048,576通りのパターンが生成されます。

CuPyによるビットパターン生成:

cp.arange(num_patterns, dtype=cp.uint64)を使用して、0から num_patterns - 1 までのパターンをGPU上で生成します。

ターゲットパターンとの一致チェック:

target_patternを設定し、すべてのビットパターンがこのパターンに一致するかをチェックします。ここでは交互のビットパターン(0b101010...)を例にしています。
results = (patterns == target_pattern)で、全パターンを一度にチェックします。

結果の表示:

一致したパターンの数をカウントし、実行時間を表示します。

実行時の注意
メモリ使用量: 20ビットの場合でも、生成されるパターンの数は膨大です。メモリが不足する場合は、ビット数を減らすか、計算を部分的に分割して行う必要があります。
GPUの活用: Google ColabでGPUを有効にすることで、この大規模な計算を高速に実行できます。Runtime > Change runtime type > Hardware accelerator から GPU を選択して実行してください。

ここでは、バッチサイズを指定して、全体を複数のバッチに分割して処理してます。

量子ビット数の計算を行い、異なるビット数に対する処理時間を比較するコード。

import cupy as cp
import time

# ビット数のリストを定義(例えば、10ビットから20ビットまで)
bit_counts = [25, 28, 30, 32, 34, 36]

# バッチサイズの設定
batch_size = 2**15  # 32,768個のパターンごとに処理(調整可能)

for bit_count in bit_counts:
    num_patterns = 2 ** bit_count  # 2^nのパターン数

    # チェックする条件: 例えば、特定のビットパターンに一致するか
    target_pattern = int('10' * (bit_count // 2), 2)

    # 計算開始時間を記録
    start_time = time.time()

    # 一致したパターンのカウントを保持する変数
    matched_count = 0

    # ストリームの作成
    stream = cp.cuda.Stream()

    # バッチごとに処理
    for start in range(0, num_patterns, batch_size):
        end = min(start + batch_size, num_patterns)
        
        # ストリームを使用して非同期にデータ転送と計算を実行
        with stream:
            # 現在のバッチを生成
            batch_patterns = cp.arange(start, end, dtype=cp.uint64)
            
            # 条件に一致するかをチェック
            batch_results = (batch_patterns == target_pattern)
            
            # 一致したパターンの数をカウント
            matched_count += cp.sum(batch_results).get()

    # ストリームが全ての処理を完了するのを待つ
    stream.synchronize()

    # 計算終了時間を記録
    end_time = time.time()

    # 結果と実行時間を表示
    print(f"Bit Count: {bit_count}")
    print(f"Matched Patterns: {matched_count}")
    print(f"Execution Time: {end_time - start_time:.4f} seconds")
    print('-' * 40)

Google ColabのGPUを使用する場合、計算可能な量子ビットの数は、GPUのメモリ容量と、CuPyで生成するビット配列のサイズに依存します。

各ビットパターンを保存するために、CuPyは通常64ビット整数(uint64)型を使用します。したがって、1パターンあたり8バイトのメモリを消費します。

計算可能なビット数の目安
Google ColabのGPU(例えば、NVIDIA T4やP100)は約12〜16GBのメモリを持っています。このメモリ容量から、以下のようなビット数のシミュレーションが可能です:

20ビット:

メモリ使用量: 約8MB

30ビット:

メモリ使用量: 約8GB

31ビット:

メモリ使用量: 約16GB

32ビット以上の計算
32ビット以上になると、必要なメモリが16GBを超えるため、Google ColabのGPUではメモリ不足が発生する可能性があります。32ビットでは約32GBのメモリが必要となり、これはColabの標準的なGPUメモリ容量を超えます。

ここでは、バッチサイズを指定して、全体を複数のバッチに分割して処理してます。

追記。限界まで最適化。

100%|██████████| 68719476736/68719476736 [00:12<00:00, 5365893317.62 patterns/s]Bit Count: 36
Matched Patterns: 1.0
Execution Time: 12.8117 seconds

bit_count = 36

import cupy as cp
import time
from tqdm import tqdm

# 64ビットのシミュレーションを行う
bit_count = 36
num_patterns = 2 ** bit_count  # 2^64のパターン数
batch_size = 2**20  # 1,048,576個のパターンごとに処理

# ターゲットパターン(例えば、「1010...」の繰り返し)
target_pattern = int('10' * (bit_count // 2), 2)

# カーネル関数:ビットパターンをチェック
bit_check_kernel = cp.ElementwiseKernel(
    'uint64 x, uint64 target', 'uint8 y',
    'y = (x == target) ? 1 : 0',
    'bit_check_kernel'
)

# 計算開始時間を記録
start_time = time.time()

# 一致したパターンのカウントを保持する変数
matched_count = 0

# ストリームの作成
stream = cp.cuda.Stream()

# プログレスバーの作成
with tqdm(total=num_patterns, unit=" patterns") as pbar:
    # バッチごとに処理
    for start in range(0, num_patterns, batch_size):
        end = min(start + batch_size, num_patterns)
        
        # ストリームを使用して非同期にデータ転送と計算を実行
        with stream:
            # 現在のバッチを生成
            batch_patterns = cp.arange(start, end, dtype=cp.uint64)
            
            # 条件に一致するかをチェック
            batch_results = bit_check_kernel(batch_patterns, target_pattern)
            
            # 一致したパターンの数をカウント
            matched_count += cp.sum(batch_results).get()

        # プログレスバーを更新
        pbar.update(end - start)

    # ストリームが全ての処理を完了するのを待つ
    stream.synchronize()

# 計算終了時間を記録
end_time = time.time()

# 結果と実行時間を表示
print(f"Bit Count: {bit_count}")
print(f"Matched Patterns: {matched_count}")
print(f"Execution Time: {end_time - start_time:.4f} seconds")
print('-' * 40)

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