TransformerとGPTの仕組みを理解するのは確かに難しいです。でも、正しい順序で、身近な例を使って理解すれば、必ず思い出せるようになります。今回は「忘れても大丈夫」な説明を心がけました。
まず大前提:GPTは「次の単語当てゲーム」のプロ
GPTを一言で表すと:**「文章の続きを予測する天才的なプログラム」**です。
例えば:
- 「今日の天気は」→ 「晴れです」
- 「私の名前は田中」→ 「です」
- 「大学で勉強している科目は」→ 「数学です」
これだけです。すべてはこの「次の単語予測」から始まります。
Step 1: なぜTransformerが生まれたのか?
昔の方法の問題点
昔は**RNN(Recurrent Neural Network)**という方法を使っていました:
私は → 今日 → 大学で → 勉強 → します
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
処理1 処理2 処理3 処理4 処理5
問題:左から右へ順番に処理するため、並列処理ができない
Transformerの革命的アイデア
「全部同時に見ちゃえばいいじゃん!」
私は 今日 大学で 勉強 します
↕ ↕ ↕ ↕ ↕
全ての単語が同時にお互いを見て関係性を理解
これが**Self-Attention(自己注意機構)**の基本アイデアです。
Step 2: Self-Attentionを完璧に理解する
身近な例:クラスでの自己紹介
クラス5人の自己紹介を想像してください:
- 田中:「数学が得意です」
- 佐藤:「プログラミングを学んでいます」
- 鈴木:「ゲームが好きです」
- 高橋:「数学とプログラミングに興味があります」
- 山田:「ゲーム開発をしたいです」
Step 2-1: 誰が誰と関連があるかスコア計算
各人が「自分と他の人がどれだけ似ているか」を点数化:
田中 佐藤 鈴木 高橋 山田
田中 5 2 1 4 1 ←数学つながりで高橋と関連度高
佐藤 2 5 1 3 4 ←プログラミングつながりで高橋・山田と関連度高
鈴木 1 1 5 2 4 ←ゲームつながりで山田と関連度高
高橋 4 3 2 5 3 ←数学・プログラミングで田中・佐藤と関連度高
山田 1 4 4 3 5 ←ゲーム開発で佐藤・鈴木と関連度高
Step 2-2: Softmaxで確率に変換
各行の数字を確率(合計1)に変換:
田中: [0.4, 0.2, 0.1, 0.25, 0.05] ←高橋に最も注目
佐藤: [0.1, 0.4, 0.05, 0.2, 0.25] ←自分と山田に注目
...
Step 2-3: 重み付き平均で新しい表現を作成
各人の情報を、注意度に応じて混ぜ合わせます:
田中の新しい情報 =
- 0.4 × 田中の情報 + 0.25 × 高橋の情報 + 0.2 × 佐藤の情報 + ...
結果:田中は「数学が得意で、プログラミングにも関心がある人」として表現される
Step 3: Multi-Head Attentionの魔法
なぜ複数の「頭」が必要?
一つの視点だけでは情報が足りません:
- Head 1:「専門分野」の関連性を見る
- Head 2:「趣味」の関連性を見る
- Head 3:「将来の目標」の関連性を見る
並列処理で効率化
入力文章
↓
┌─────────┬─────────┬─────────┐
│ Head 1 │ Head 2 │ Head 3 │ ←並列実行
│専門分野 │ 趣味 │ 将来性 │
└─────────┴─────────┴─────────┘
↓
結合して最終的な表現を作成
Step 4: Transformerの全体構造
エンコーダー(理解部)とデコーダー(生成部)
GPTは実はデコーダーのみを使用します:
入力: "今日の天気は"
↓
┌─────────────────┐
│ Embedding │ ←単語を数値ベクトルに変換
├─────────────────┤
│ Positional │ ←位置情報を追加
│ Encoding │
├─────────────────┤
│ Multi-Head │ ←複数視点で関係性分析
│ Self-Attention │
├─────────────────┤
│ Feed Forward │ ←情報を整理・加工
│ Network │
├─────────────────┤
│ ... │ ←このブロックを何層も重ねる
├─────────────────┤
│ Output Layer │ ←次の単語の確率を計算
└─────────────────┘
↓
"晴れ" (85%)
"雨" (10%)
"曇り" (5%)
Step 5: 学習プロセス「先生なしで学ぶ天才」
自己教師あり学習
GPTは教師データなしで学習します:
元の文章: "私は大学で数学を勉強しています"
学習用に変換:
入力: "私は大学で数学を勉強して"
正解: "い"
入力: "私は大学で数学を"
正解: "勉強"
入力: "私は大学で"
正解: "数学"
ポイント:インターネット上の大量テキストから、この「穴埋め問題」を自動生成して学習
スケールの魔法
- GPT-1:117M パラメータ
- GPT-2:1.5B パラメータ
- GPT-3:175B パラメータ
- GPT-4:推定1兆パラメータ以上
パラメータが多いほど、より複雑なパターンを学習できます。
忘れないための覚え方
1. キーワード暗記法
- Transformer = Teacher(全員が全員を教え合う)
- Attention = All to All(全部が全部を見る)
- GPT = Great Prediction Tool(素晴らしい予測ツール)
2. ストーリー記憶法
「クラスの5人が自己紹介→お互いの共通点を探す→情報を混ぜ合わせて新しい自分を作る→これを何度も繰り返す→最終的に『次に何を言うべきか』がわかるようになる」
3. 図解記憶法
文章 → 数値化 → 関係性分析 → 情報統合 → 次の単語予測
↑ ↑ ↑ ↑ ↑
埋込み Self-Attention 重み付平均 確率計算 出力
よくある勘違いと正しい理解
勘違い1:「GPTは文章を理解している」
正しい理解:パターン認識の天才。統計的に「次に来やすい単語」を予測
勘違い2:「Attentionは人間の注意と同じ」
正しい理解:すべての要素間の関係性を数値で計算する仕組み
勘違い3:「Transformerは翻訳のための技術」
正しい理解:汎用的な「系列変換」技術(翻訳、要約、対話、コード生成すべて可能)
まとめ:核心を忘れないで
次に忘れそうになったら、この3つだけ思い出してください:
- GPT = 次の単語当てゲームのプロ
- Attention = 全員が全員を見て関係性を理解
- 学習 = インターネットの文章で穴埋め問題を解きまくる
これが理解できれば、あとは詳細を少しずつ思い出していけばOKです。
忘れても大丈夫。理解への道は何度でも歩けます。
次回忘れたときも、このブログを読み返してくださいね。きっと「あ、そうだった!」と思い出せるはずです。