コーチングを学んでみた!
はじめに
インプリムでは、積極的に社員のスキルアップを目指し、「SEカレッジ」の受講ができます。
今回、コーチングについての講座を社内のメンバーが受け、「面白そう!」と興味があったため受講しましたた。
その所感などを本記事に記録します。
結論
コーチングとは
各メンバーが自己効力感を高め、目標達成に向けて自走できるように援助すること
自己効力感とは
自己分析を積み重ね、自己の能力を認知すること
自走するためには
自分事として意味づけできるような目標設定が大切
コーチングの実践
コーチングを実践するには下記のプロセスが必要
- 信頼関係を作る
→ 傾聴や質問によって信頼関係を構築 - 得たいゴールを確認する
→ 正しい方向であり、本人が目標を決定 - 課題を明確にする
→ 現状と目標の認知と分析 - 行動を決める
→ 明確になった課題からどんなアクションを起こす - フィードバックをする
→ できたことに着目し、今までの結果をフィードバック
内容
コーチングの目的やメリット
コーチングの目的
個人やグループのパフォーマンス向上を支援するために、対話や質問などを通じて、相手の自己成長や目標達成を促進する
※ ゴール(目標)が存在することが前提となる
事例
以前は業務改善をしようと積極的にチームに働きかけていた「きちんと業務をこなすまじめなメンバー」が最近は「指示されたことしかしない」「周りが困っていてもサポートしない」ようになってきた
→「投入量(Input)」に対して得られる「報酬(Outcome)」に他者と比べて不公平を感じたことが原因と考えられる
キーワード:静かな退職(クワイエット・クイッティング)
- 与えられた仕事以上のことをやらなかったり、仕事に対する熱意を失ったりすること
- キャリアアップや昇進などを目指さずに必要最低限の仕事をこなす働き方のこと
- 仕事とプライベートの境界をしっかり分け、ワークライフバランスを重視する働き方
静かな退職の背景:公平理論(エクイティ理論)
- モチベーション理論のひとつで、「投入量(Input)」に対して得られる「報酬(Outcome)」に他者と比べて不公平を感じたとき、その程度が大きいほど、不公平感を解消して公平に近づくような行動をとるという考え方
- 「自他の投入量と報酬のバランスをどのように認知するか」がモチベーションに影響する
コーチングのメリット
- 目標達成の支援
- コミュニケーションスキルの向上
- チームワークの強化
- 自己理解の促進
- モチベーションの向上
- 組織パフォーマンスの向上
- リーダーシップの強化
- 言語能力の向上
- フィードバックの提供
- 目的の明確化
脳と心の仕組みを知る
認知科学的アプローチ
- 人の思考や感情が行動や結果に影響を与えるという認知的なプロセスを理解し、それを改善することで目標を達成しようとするもの
人間の情報処理
無意識に受け取っている情報(1100万ビット/秒)
↓
フィルタ(RAS)
↓
意識に挙がってくる情報(77ビット/秒)
以上から、人間が意識できる情報は約「14万分の1」!!
※ フィルタ(RAS):内部表現により認識する情報が決定する
内部表現
- 自分の脳と心に映るすべての世界
→「すべての世界」とは、これまでの経験や思考、価値観などで構成された情報によって作られる
人によって情報の受け取り方が異なり、感じることも違う(= やる気スイッチの場所は人それぞれ!)
内部表現の例)
- 失敗すると皆に嫌われる:自分自身が完璧であることを求め失敗を許容しないため、失敗に対する恐怖心が生まれる
→「失敗」と「嫌われる」は別物と考える
→「失敗」は「成功の母」=失敗は成功のもとと考える - 自分に自信がない:自身に対いて自信を持てず、新しいことに挑戦する勇気がなくなり、自身を卑下するような思考に陥る
→ そもそも「自信」は「あって当たり前」ではない
内部表現を変えるためには
内部表現を変えるためには、感情を変える必要がある
感情を変えるためには、認知を変える必要がある
内部表現の書き換え手順
- 自己認知の把握 :自分の認知を理解する
- 内部表現の分析 :自分の認知について、「なぜ」を考える
- 内部表現の書き換え:どのように書き換えたいかを考える
- 内部表現の強化 :書き換えを強化する
信頼関係をつくるためのコーチングスキル基本のキ
一般的なコーチングの基本スキル
- 聴く力(傾聴・共感・ペーシング等)
- 問いかけ力(クローズドクエスチョン・オープンクエスチョン)
- 肯定的なコミュニケーション力(ジャッジなし)
聴く力
相手にどれだけ興味を持てるのか
- 傾聴:相手に目を向け。注意を深く聴く
- 共感:うなづき
- ペーシング:話すスピード、トーンなどを合わせる
問いかけ力
相手が何を認知し、何を感じているのか等相手を知る
- クローズドクエスチョン:Yes/Noでこたえられる質問
→ 回答者が回答することに負担を感じない質問 - オープンクエスチョン:Yes/Noでこたえられない質問
→ 回答者が回答することに負担を感じる質問
肯定的なコミュニケーション力
相手の判断や行動をジャッジせず肯定する
- ジャッジしない:正解/不正解のジャッジをしない
- 相手の価値観を知ろうとする:「ジャッジをしないこと」が前提
→ 相手の価値観を知ろうとすることが大切
目標達成に必要な5つのマネジメント
目標達成に必要な5つのマネジメント
- ゴールマネジメント
- プロセスマネジメント
- リソースマネジメント
- 感情マネジメント
- 抽象度マネジメント
1. ゴールマネジメント
ゴール(目標)を確認する
- メンバーが達成したいゴールかどうかを確認する
→ 人に決められたゴールは挫折しやすいため、ゴールを本人に決めてもらう - メンバーがゴールを自分事として意味づけできるサポートをする
→ メンバーがゴールを自分事として意味づけできるサポートする
→ 自分で決めた目標であると意味づけしてもらう
2. プロセスマネジメント
どのルート・どのやり方で達成するのかを確認する
- ゴールまでのプロセスのアイデアがメンバ本人にあるかどうか確認する
→ ない場合はティーチングを行い、アクションプランの作成と実行のサポートを行う
→ 適切なフィードバックを行い、進捗や自分自身の強みや改善すべき点を理解できるようにする
3. リソースマネジメント
リソース(資格や経験等)を確認する
- 目標達成に対して、下記を確認する
- すでに持っているリソースは何か
- これから取得すべきリソースは何か
- 提供してほしいリソースは何か
質問
しっかりゴール設定して、プロセスや必要なリソースまで確認しているのに、それでも挫折してしまうとしたら、何が要因?
- 感情がついてこない
- 不快が解消されない
4. 感情マネジメント
感情をマネジメントすることで個人の自己効力感(Self-Efficacy)や、組織の集団効力感(Collective-Efficacy)を高めることができる
不快 ⇔ 快
不安 ⇔ 安心
寂しさ ⇔ つながり・愛
退屈 ⇔ 変化・刺激
劣等感 ⇔ 特別感
※ 人間は不快を快に変換したいという根本的な欲求がある
ホメオスタシス
恒常性維持機能のこと
- 現状に変化を加えようとしても、現状に戻ってしまう
→ 現状に変化を加えるが、ホメオスタシスの機能によって変化を維持できない動物の本能
例)通勤中に音楽を聴いていたが、勉強をするようになる
→ 結果、目標を達成できず挫折してしまう
クリエイティブアボイダンス(創造的回避)
ある事柄に対して、あれこれと言い訳を考え、無意識に目標達成から遠ざかること
クリエイティブアボイダンス攻略法
- 小さく行動
→ 小さな変化から起こしてみる - 誘惑物の排除
→ 携帯などの誘惑物を視線から排除する - if thenプランニング
→ 何かがあれば何かをする(例:電車に乗ったら本を開く) - 5秒ルール
→ 5秒数えたら行動開始(余計な思考を挟まない) - 20秒ルール
→ 20行で行動できる環境を用意する
5. 抽象度マネジメント
コーチングによって、情報を整理し、知らなかったことを認知し、言葉に変換することで抽象度をあげられる
- 因果関係から脱却し、パターンを認識する
- スコトーマ(心理的盲点)を外す
- 抽象と具体を移動する
因果関係とパターンを見つける
因果関係:1つの事象がほかの事象に直接的な影響を与えること
例)雨が降ると地面が濡れる
パターン:観察されるデータの統計的な傾向や特徴を示すもの
例)毎日ジョギングをすると健康になる
コーチングの実践手順
一般的なコーチングの基本スキルをもとに、コーチングスキルを整理する
コーチングの基本
- 信頼関係を作る
- 得たいゴールを確認する
- 課題を明確にする
- 行動を決める
- フィードバックをする
1. 信頼関係を作る
傾聴や質問力が必要
2. 得たいゴールを確認する
正しいゴールを設定する
ゴールに関する質問
- それは、あなたが本当に達成したいことですか?
- それは、あなたの意思決定に基づいて設定された目標ですか?
- それは、あなたの能力や強みを生かせるゴールですか?
- その目標を達成したときにどのような成果が得られるか、明確に理解していますか?
- その目標を達成したときの風景がありありとイメージできますか?
参考
なぜそのゴールにした?
もし何でもかなうとしたら、どんなことをしたい?
それを達成することでどんな気持ちになる?
そのゴールが叶ったら、さらにどんなことがしたい?
ゴールを達成することで、何が得られる?
ゴールを達成しないで現状のままでいるとしたら、現状にメリットはありますか?
現状維持のメリットとゴール達成のメリットを比較したら?
本当にゴールを達成したい?
ゴールの達成確率は?ゴールは近すぎない?遠すぎない?
ゴールを達成したことはどうやったらわかる?
3. 課題を明確にする
フィードバック質問
- この課題にどのくらい取り組みましたか?(例:10時間)
- 目標に対する進捗はどれくらいですか?(100%中何%?)
- あなた自身がここまでの結果にどれくらい満足していますか?(100点中何点?)
- ここまでもっとも成功したことは何ですか?
- 思うようにいかなかったことは何ですか?
- あなたが今回の取り組みの中で発見したもっとも重要な気づきは何ですか?
- 今後どのように改善していけばよいと思いますか?
参考
ゴールに対して、今できていないことは何ですか?
ゴールでは当たり前にやっていて、今やっていないことは何ですか?
今一番課題を感じていることは何ですか?
ゴール達成に向けて、何が解決すると一番うれしいですか?
ゴール達成に向けて補填したいスキルはありますか?
ゴール達成に向けてサポートしてほしいことはありますか?
4. 行動を決める
- すぐに行動できそうなレベルまで、細分化できているか
- メンバーが行動することにブロックを感じていないか
- フィードバックのタイミングも行動に含めているか
5. フィードバックをする
自己効力感をキープするように留意する
- できたことに着目するような質問や自ら振り返りたくなるようなシチュエーションを作る
→ 過去を振り返って原因を追究することを強制しない
まとめ
あくまで、コーチングのスキルは・・・
- 信頼関係を作る
- 得たいゴールを確認する
- 課題を明確にする
- 行動を決める
- フィードバックをする
キーワード
- 自己効力感(Self-Efficacy)
- 集団効力感(Collective-Efficacy)
- RAS
- スコトーマ(心理的盲点)
自己効力感(Self-Efficacy)
目標達成のための行動を自身が遂行できると信じている状態
自己効力感と自己肯定感の違い
自己肯定感:自分を肯定する「感情」
自己効力感:自分の能力の「認知」
自己効力感(Self-Efficacy) | 自己肯定感(Self-Esteem) | |
---|---|---|
定義 | 特定の状況や課題において、望む結果を達成できるという自信や信念 | 自身を全体的に価値ある存在として受入れ、肯定する感情や態度 |
焦点 | 特定の課題や状況に対する自信や能力の認識 | 自身に対する肯定的な評価や感情 |
範囲 | 具体的で限定的な場面 | 広範で全体的な自身に対する感情 |
影響 | 具体的で限定的な場面 | 一般的な心理的健康や満足感、幸福感に影響を与える |
集団効力感(Collective-Efficacy)
目標達成のための行動を集団が遂行できると信じている(共有している)状態
自己効力感と集団効力感との関係
自己効力感:自分自身に対する能力の認知
集団効力感:集団内での能力の共有
集団内の各個人で自己効力感を持ち、その自己効力感を集団内で共有することで、集団として目標達成を実現する信念を持つ
RAS(Reticular-Activating-System)
五感から入ってきた多くの情報から「認識するもの」を取捨選択する脳のフィルター機能
RASによって選択された情報は認知できるが、取捨された情報は後述の「スコトーマ(心理的盲点)」として認知されない
スコトーマ(心理的盲点)
インプットされた情報を選別し取捨選択することで、「見えてはいるが、見えていない」状態のこと
「脳と心の仕組みを知る > 人間の情報処理」が該当
さいごに
冒頭でも記載しましたが、インプリムでは学習の機会が豊富にあります。今回は外部のサービスでしたが、社内イベントなどもありますので、個人的にはとてもうれしいです!
ぜひ、勉強熱心な人は一度インプリムを調べてみてもよいのでは!?
参考サイト
- 自己効力感とは? 概要から高める方法まで徹底解説
- 組織効力感とは
- スコトーマとは? 学習者が知っておきたい「心理的盲点」のこと。
- ラス(RAS/Reticular Activating System)