1. 概要
この論文では、拡散ベースの生成モデル(diffusion model)を用いた複数の信号の分離技術を提案している。例えば、身の回りにはゲーム機やスマートフォン、ルーターやドローンなどあらゆる電波を発する機器があるが、受信機から見ると信号は複数の波が重なって見える。そこで、独立な信号源に対して拡散モデルで学習済みの統計的な事前確率(statistical priors)のみを利用して、それぞれの機器の信号の事後確率を予測することで、計算コストのかかる混合信号の学習を不要にしている。
提案手法は、無線周波数(RF:radio-frequency)システムへの応用を想定しており、ビットエラー率(BER:bit error rate)をなるべく少なくしながらエンコード後のビットから基底となる離散的な性質を持つ信号源を復元することで混合信号の分離に成功している。無線周波数の混合信号に対する分離実験では、従来の学習ベースの手法と比較してビットエラー率を95%低減できることを示している。
2. 新規性
- 学習済みの事前確率のみを用いており、混合信号自体からの学習は必要としない。
- 離散的な信号源の復元に適しており、無線周波数(RF)などの分野で応用が可能。
- 既存手法と比較して、符号化ビットの復元において著しく高い性能を達成した。
3. 実現方法
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独立な信号源ごとに事前確率を拡散モデルで生成させる。
独立な信号源ごとの事前確率として学習済みの拡散モデルを利用しており、事前確率の学習を個別にチューニングする必要が無いようにしている。また、拡散モデルにおける訓練時のノイズスケジュールをそのまま再利用しており、ハイパーパラメータの細かい調整を必要とせず、学習率のみを微調整するだけでよいようにしている。 -
混合信号に対して複数のランダムなのガウス平滑化(Gaussian smoothing)を適用する。
ガウス平滑化を入力源の混合信号に対して適用することで、ロバスト性を向上させており様々な信号に対して分離できるようにしている。 -
α-posterior estimationを用いて事後分布のパラメータ推定を行う
事後確率として個別の信号源を推定することで、混合信号から分離を行う。
4. 結果
ビットエラー率(BER)と平均二乗誤差(MSE)を用いて評価を行っており、提案手法であるα-RGS(Randomized Gaussian Smoothing)は、特にビットエラー率(BER)において従来の学習ベースの手法を大きく上回る95%低減を実現している。
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last updates: Apr. 18 2024