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OSSの特許侵害リスクと、その解決に向けたコミュニティによる取り組み

Last updated at Posted at 2019-12-11

はじめに

OpenChain Japan WGのアドベントカレンダー、本日は13記事目になります。本アドベントカレンダーは、OSSコンプライアンスに関わる取り組み「OpenChain」プロジェクトの日本ワーキンググループのメンバーが日替わりで記事を書いています。

参考:FacebookやGoogleも参加するOSSコンプライアンスのプロジェクト、「OpenChain」とは

今回は「OSSの利用に伴う特許侵害リスク」について書いてみたいと思います。(セキュリティの話も一緒に書こうと思ったんですが構成がうまくまとまらず…今回は特許の話に特化して書かせていただきます)

自己紹介

国内外のIT関連分野について、特許や現地メディアを通じて技術動向の調査をしたり、それらをまとめた記事を書いたりしています。

twitter:テクノ大仏
ブログ:中国ITの森

OpenChain Japanは2019年夏に存在を知って、全体会合に一度参加しただけのまだまだ初心者です。OpenChain Japanでは、OpenChainやOSSコンプライアンスの普及を担うPromotionグループに参加しています。

OSSと特許権侵害

あるOSSが第三者の特許権を侵害している場合、OSSの提供元だけでなくそのOSSを利用した製品やサービスも特許権侵害の対象となります。つまり、損害賠償金を請求されたり、特許ライセンス費用を要求されたりする可能性があります。

過去には、スマホ用OSとしてOSSの代表格であるAndroidが特許権侵害をしているとして、提供元のGoogleだけでなくAndroidスマホの開発企業が訴えられる事例も発生しています。

Microsoft、Android端末の特許侵害でMotorolaを提訴

Android関連の特許訴訟が相次いだGoogleは、上記ニュースでも話題になっているモトローラを買収。その後、多くの特許を保有したまま携帯事業部門を中国・レノボに売却したことから、訴訟に耐えうる特許取得が目的の企業買収と話題になりました。

モトローラ買収とグーグルの法的戦略の方向性--特許ポートフォリオ強化に至る背景

OSSの特許リスクを解消するためのコミュニティ・OIN(Open Invention Network)

特許によってOSSの円滑な利用が阻害される状況を懸念して、その問題を解決しようとするコミュニティ活動も同時に始まりました。今回はその1つとして「Open Invention Network(OIN)
」およびその関連組織である「Linux Defenders」の活動を紹介します。

OSS_PatentRisk.jpg
オープンイノベーション促進のための新たな知財課題 より引用

OINは「OSSに関する特許のクロスライセンス」を促進するコミュニティ活動です。

OINはLinuxに関連する特許を保有し、「Linux関連技術を利用する企業に特許訴訟を行わないこと(自社特許を開放すること)」に同意した参加企業に対して無償でライセンス提供を行います。2018年にはマイクロソフトがOINに参加、OSSと特許訴訟を巡る状況の1つの転換点となりました。

マイクロソフト、オープンソース特許ネットワーク(OIN)に加盟、特許6万件を開放

さらに、OSSに関して不当な特許が発生するリスクを減らすべく、OINの下部組織として「Linux Defenders」という活動が行われています。

主な取り組みとしては

Defensive Publications:既存の技術を積極的に公開し、不当な特許の成立を防ぐ材料とする
Prior Art Activities:特許審査が適切に行われるように関連技術資料を提供、OSSコミュニティのリスクとなる特許の再審査を推進

などがあります。

エンジニア以外の専門家もOSSへ関わることが不可欠な時代へ

知財部門の仕事の1つとして、「自社の事業を円滑に進めるために、他社の特許にどう対処するか」が挙げられます。

「他社の特許を調査して、問題となる特許を把握する」「問題となる特許について回避方法を検討する、無効化を仕掛ける」「回避案が見つからないときのために、他社との交渉材料となる特許を仕込んでおく」といった業務が中心になりますが、今後はそれらに加えてこういったコミュニティ活動への対応も必要になっていきます。

OSS_PatentDiff.jpg
オープンイノベーション促進のための新たな知財課題 より引用

ウェブサービスやスマホアプリだけでなく、家電や自動車など全てのものにソフトが組み込まれる時代。OSSの導入はますます加速していきます。

エンジニアだけではなく知財関係者など様々な専門家がOSSコミュニティに貢献していくことが、国や企業の競争力に繋がっていく(そして、その人自身のキャリアにも繋がっていく)。そんな時代になっていくのかなと最近考えています。

p.s.
OpenChain Japan内で知財関連のワーキンググループが出来たらぜひ参加したいと思ってます。

明日の記事の紹介

明日は本記事内で紹介した資料の作成者でもあるトヨタ自動車の遠藤さんが担当。自動車業界でのOSSコンプライアンスをテーマとして2019年7月に設立されたOpenChain Automotive WGについて紹介いただく予定です。

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