はじめに
ノーコード/ローコード開発の注目度が高まる中、kintoneとOracle APEXは代表的な選択肢になると思います。この記事では、両者を実際に比較して、導入を検討している方に向けた情報を整理していきます。
1. 提供形態の違い(クラウド・オンプレミスなど)
比較項目 | kintone | Oracle APEX |
---|---|---|
提供形態 | クラウドのみ | クラウド (OCI)、オンプレ |
インフラ管理負荷 | 低い | 環境による(OCIなら低い) |
- kintoneはすぐに使えるSaaSで導入が楽です。
-
APEXはOCIで提供されており、オンプレ構築も可能で柔軟性が高いです。
※OCIはOracleが提供するクラウドサービス Oracle Cloud Infrastructureの略
2. コスト比較
比較項目 | kintone | Oracle APEX |
---|---|---|
課金形態 | ユーザー数ベース(月額課金) | 無償 (DBの費用が別途必要) |
初期費用 | ほぼ不要 | 不要 |
運用コスト | 低い | 低い※ |
※クラウド利用の場合は運用コストが低いです。オンプレミスで利用する場合はDBの運用が必要です。
- kintoneはシンプルなユーザー数ベースの月額課金です。
- ストレージ容量はユーザーあたり5GB割り当てられますが、追加する場合は10GBあたり月額1,000円です。
- APEXはOCIのDatabaseサービスを利用すればAPEX自体は無料ですが、DBのコストが発生します。
- すでにOracle Databaseをご利用いただいていれば追加料金不要でAPEXを使えます。
- 新規にOCIでDBを作成する場合の月額利用料金は18,971円~(利用するCPU数、ストレージ容量によって変動)です。
こちらはkintoneの利用料金です。
https://kintone.cybozu.co.jp/material/pdf/kintone.pdf
オススメとされているスタンダードコースは、ユーザーあたり1,800円で10ユーザー以上で契約可能なため、Oracle APEXと最低月額利用料金はあまり変わりません。
サポートについてはkintoneは平日10:00-12:00, 13:00-17:30となっており、Oracleサポートは24時間365日対応のため、Oracleに軍配が上がりそうです。
3. 開発のしやすさ(ノーコード/ローコード)
比較項目 | kintone | Oracle APEX |
---|---|---|
UI設計 | ドラッグ&ドロップ中心 | ウィザードやコンポーネント設定中心、AIによる設計が可能 |
コーディング | 基本不要 | SQLやPL/SQLの知識があると強みになる (AIによるサポートあり) |
カスタマイズ性 | JavaScriptで拡張可能 | PL/SQL・JavaScriptで高度なカスタマイズ可能 |
- kintoneは誰でも触れるレベルのシンプルさが売りです。
- APEXはデベロッパー向け寄りで、自由度・拡張性が高い代わりにドラッグ&ドロップだけでUI設計をするのは難しいです。
- 一方でAPEXではAIによるアプリ作成が可能なため、自然言語で指示を出すだけでUI設計を含めアプリを作成できます。
- APEXはDBが前提となっているためSQLはほぼ必須です(エラー箇所の自動修正などのAI機能があります)。
4. できることの違い
項目 | kintone | Oracle APEX |
---|---|---|
データベース連携 | 内部DBまたは外部APIなど | Oracle DBがベース(既存DB連携が得意) |
レポート/グラフ作成 | 標準で可能(やや簡易) | 高度なBI風グラフやダッシュボードも可能 |
ワークフロー機能 | 標準で搭載 | APEX単体では限定的(別途構築可能) |
外部連携 | REST APIやプラグインで対応 | REST API・Webサービス連携に強い |
kintoneは会員登録不要で操作を体験できます。
https://kintone.cybozu.co.jp/try-kintone-app-builder/
その他の機能を試したい場合は会員登録することで30日間無料で試すことが出来ます。
Oracle APEXも無料でお試しいただけます。申込みページは英語ですが、APEXは日本語でご利用いただけます。
顧客リストのようなアプリはkintoneでもAPEXでも簡単に作れます (画像はkintoneのもの)。
リストからグラフを簡単に作成できます。操作感はkintoneもAPEXもほぼ同じでした。
kintoneにはポータルページがあらかじめ用意されています。このページから使用するアプリを選択できます。
ポータルページに表示するお知らせの内容を編集できるので、社内に周知したい情報など表示することができます。
kintoneではコミュニケーションスペースがあらかじめ用意されており、TeamsやSlackのようにやり取りができます。すでにチャットツールを使っているのであればわざわざkintoneの本機能を使う必要はないかなと思いました。あくまでおまけでついてくるツールという立ち位置でしょうか。
5. 向いているユースケース
kintoneが向いているケース
- 業務部門主体でアプリを作りたい
- 導入と運用のハードルを下げたい
- スモールスタートで業務改善したい
Oracle APEXが向いているケース
- データがすでにOracle DBにある
- セキュアでスケーラブルな業務アプリを作りたい
- IT部門や開発チームが主導するプロジェクト
APEXのユースケース
6. まとめ
両者は「ノーコード/ローコード」という共通点を持ちつつも、目的・対象ユーザー・開発自由度で差があります。
ビジネス部門主導のkintoneか、エンタープライズ開発に強いOracle APEXか、用途に応じて選ぶ必要があります。
おまけ:実際に触ってみての感想(体験レビュー)
- kintone:セットアップ〜アプリ作成がとにかく速い!直感的に操作ができる。アプリに配置するテキストボックスの大きさをマウス操作で変更できる。でも細かいことをやろうとすると苦労する。少しUIが古めかしいかなという印象。
- APEX:最初はとっつきにくいが、慣れるとものすごく自由に作り込める。アプリに配置するテキストボックスの大きさは数値で指定する方式。AIを使って自然言語で作りたいアプリを作成して、手直しするとアプリ作成が簡単。