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3次方程式の解:実数解なのに、厳密解は虚数を用いないと表現できない例

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大栗博司氏の著書「数学の言葉で世界を見たら」の第8話『本当にあった「空想の数」』に虚数の話があった。

2次方程式

x^2+1=0

を例に、「虚数は、このように実数の解を持たない2次方程式を解くために考えられたという解説がよくされるが、そうではない。歴史的には、虚数の考え方が数学で真剣に考えられるようになっってきたのは、2次方程式ではなく、3次方程式の解法の研究からだった。」と述べている。

そして3次方程式

x^3-6x+2=0

の例が挙げられていた。


Mathematicaでの検証

まず

y=x^3-6x+2

のグラフを書いてみる。

Plot[x^3-6x+2, {x,-3,3}]

fig1.png

3次曲線がx軸に3箇所で交わっていること(3つの実数解を持つこと)がわかる。

次に3次方程式を解いてみる。

x/.Solve[x^3-6+2==0,x]

\left\{\frac{2}{\sqrt[3]{-1+i \sqrt{7}}}+\sqrt[3]{-1+i \sqrt{7}},-\frac{1+i \sqrt{3}}{\sqrt[3]{-1+i \sqrt{7}}}-\frac{1}{2} \left(1-i \sqrt{3}\right)

\sqrt[3]{-1+i \sqrt{7}},-\frac{1-i \sqrt{3}}{\sqrt[3]{-1+i \sqrt{7}}}-\frac{1}{2} \left(1+i \sqrt{3}\right) \sqrt[3]{-1+i \sqrt{7}}\right\}\

Mathematicaは思ったように分母の有理化をしてくれないのだけれど、実は

\frac{2}{\sqrt[3]{-1+i \sqrt{7}}}=\sqrt[3]{-1-i \sqrt{7}}

である。これは

ToRadicals[FullSimplify[2/(-1 + I*Sqrt[7])^(1/3)]]

で確認できる。従って

\left\{\sqrt[3]{-1-i \sqrt{7}}+\sqrt[3]{-1+i \sqrt{7}},-\frac{1}{2} \left(1+i \sqrt{3}\right) \sqrt[3]{-1-i \sqrt{7}}-\frac{1}{2} \left(1-i

\sqrt{3}\right) \sqrt[3]{-1+i \sqrt{7}},-\frac{1}{2} \left(1-i \sqrt{3}\right) \sqrt[3]{-1-i \sqrt{7}}-\frac{1}{2} \left(1+i \sqrt{3}\right)
\sqrt[3]{-1+i \sqrt{7}}\right\}

となる。3乗根の中に虚数単位 i が残っている。ところが、例えば最初の解

\sqrt[3]{-1-i \sqrt{7}}+\sqrt[3]{-1+i \sqrt{7}}

の2つの3乗根は実は複素共役であって、その和は実数。

関数Nを使って近似解を求めれば、

\{2.2618,-2.60168,0.339877\}

と実数である。なんとも不思議な話。


追記

先ほどの3次方程式の3解は各々2つの3乗根の和になっているが、それを分けた6つの数を考える。

\left\{\sqrt[3]{-1-i \sqrt{7}},\sqrt[3]{-1+i \sqrt{7}},-\frac{1}{2} \left(1+i \sqrt{3}\right) \sqrt[3]{-1-i \sqrt{7}},-\frac{1}{2} \left(1-i

\sqrt{3}\right) \sqrt[3]{-1+i \sqrt{7}},-\frac{1}{2} \left(1-i \sqrt{3}\right) \sqrt[3]{-1-i \sqrt{7}},-\frac{1}{2} \left(1+i \sqrt{3}\right)
\sqrt[3]{-1+i \sqrt{7}}\right\}

実はこの6つの数は全て方程式 $x^6+2x^3+8=0$ の解。

方程式 $x^3-6x+2=0$ とは何らかの関係があるのだろうけれど、これ以上は追求しません。(^_^;)


複素平面乗での6次方程式の解の配置

6次方程式 $x^6+2x^3+8=0$ の解は、絶対値と偏角で表示すると対称性があることがわかる。

\sqrt[3]{-1-i \sqrt{7}}=\sqrt{2} e^{-\frac{1}{3} i \left(\pi- \tan ^{-1}\left(\sqrt{7}\right) \right)}

\sqrt[3]{-1+i \sqrt{7}}=\sqrt{2} e^{\frac{1}{3} i \left(\pi -\tan ^{-1}\left(\sqrt{7}\right)\right)}

\frac{1}{2} \left(-1-i \sqrt{3}\right) \sqrt[3]{-1-i \sqrt{7}}=-\sqrt{2} e^{\frac{1}{3} i \tan ^{-1}\left(\sqrt{7}\right)}

\frac{1}{2} \left(-1+i \sqrt{3}\right) \sqrt[3]{-1+i \sqrt{7}}=-\sqrt{2} e^{-\frac{1}{3} i \tan ^{-1}\left(\sqrt{7}\right)}

\frac{1}{2} \left(-1+i \sqrt{3}\right) \sqrt[3]{-1-i \sqrt{7}}=\sqrt{2} e^{\frac{1}{3} i \left(\pi +\tan ^{-1}\left(\sqrt{7}\right)\right)}

\frac{1}{2} \left(-1-i \sqrt{3}\right) \sqrt[3]{-1+i \sqrt{7}}=\sqrt{2} e^{-\frac{1}{3} i \left(\pi +\tan ^{-1}\left(\sqrt{7}\right)\right)}

複素平面上に $Re(x^6+2x^3+8)=0$ の線(水色)と $Im(x^6+2x^3+8)=0$ の線(橙色)を描いてみると下図のようになる。水色線と橙線の交点(赤色)は方程式 $x^6+2x^3+8=0$ の解。絶対値 $\sqrt{2}$ の円上にある。

fig.gif

これは偶然、ではないですよね。


随時更新します。