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放射線被ばく線量が記録されたRDSRを閲覧できる簡易アプリケーション(CT編)

Last updated at Posted at 2020-12-16

RDSR(Radiation Dose Structured Report)

放射線を利用する医療機器は、例えばCT装置であればCTDIvolなど、標準化された規格で、被ばく線量を記録しています。
昨今では、2020年に医療法施行規則の一部改正が行われて、診療用放射線に係る安全管理体制の項目が変更されました。これにより、医療施設において、被ばく線量管理体制の構築が進められています。
これまで集められなかった大規模な医療被ばくデータを収集し、人体への影響を調べるためのコホート研究などの実現に向けて、確実に前進しているようです。
画像検査に関する医療被ばくの記録は主に、DICOMデータとして管理されます。
具体的には、DICOMデータの規格のうち、RDSRというオブジェクトとして管理されます。
RDSRとは、放射線被ばく構造化レポートです。

CTを対象としたRDSRビューワ

RDSRは様々な放射線医療機器で作成されますが、今回はCT装置を対象に、RDSRを取り扱ってみたいと思います。
RDSRは、たくさんのメタデータで情報オブジェクトがまとめられているので、被ばく線量を調べたいときに、直接、DICOMタグを調べるなどをしているとかなり大変です。
なので、簡易的なツールを開発してみました。
ここで紹介するツールは、RDSRに記録されている情報を表示する、CTDIvol・DLPをcsvで出力する、CT検査ごとにグラフに表示する、機能を持っています。

KMII2020_RDSRViewer.PNG

ソース(java)

即席コードのため、細かなところはお許しください。
Answer packageが真です。
教育・研究用に自由にお使いください。
共同研究などご希望の方は、筆者まで直接ご連絡ください。
Eclipse + Java JDK 1.8 above
https://www.dropbox.com/sh/5clpuwvmo0uxnze/AAA7XcUbWh1k6lSfwIuHa-5oa?dl=0

雑感

医療被ばく線量の管理で得られるメリットは、DNAレベルの損傷の最小化だろう。長期にわたる被曝は、たとえ低線量であっても、がんのリスクを増加させるリスクを高めるという疫学研究の仮説に基づく考え方だ。若い人ほど放射線の感受性が高い傾向があることも理由の一つになる。

それはそうなんだ。ALALAの原則を大切にしようと啓蒙することはいいことだと思う。しかし、まだ筆者の中では、この分野のさらなる研究に対する真のメリットがなにかということについて靄がかかっている。

その理由は、(低線量の)医療被曝と、この医療被曝によるDNA損傷に起因した発がんリスク増加とに因果関係があるのかを明らかにできるのかが疑問だからだ。

相関関係があるのは事実だろう。致死線量という概念があるのだから、被曝が多すぎることは良くないことであるという論拠のアプローチは正しいのだが、懸念はそこではない。
例えば、アイスクリームの販売量が増えると、溺死者が増加するという事実があるとしよう。実際に、相関関係にあるということになる。しかしそこに因果関係があるかというと、実は無い。どういうことかというと、アイスクリームが売れ始めるということは、季節が暑くなってきているということであり、暑くなっているということは、川遊びや海水浴に出かける人が増えるということだからだ。なので、「アイスクリームがよく売れたから、溺死者が増えた」とはならない。
医療被曝に話を戻すと、「医療被曝によって発がんリスクが高まる可能性がある」というのは、理論的に相関は主張できるのだが、因果関係はあるといえるのだろうか。実際にがんを罹患した人は、必然的にCTなどの検査数は増える。疫学研究で、このあたりのバイアスが統計学的に正しく反映されているのだろうか。「たくさんCT検査を受けた人が最後はがんで天命を全うされました。」というデータが多く含まれていたら、その解析結果の信頼性は高いとは言えないだろう。

筆者が抱える頭の中の靄は、この先、この分野の研究が「医療被曝は飛行機に乗っているときの自然放射線の被曝みたいなものです」で終わるかもしれないという懸念を持っているからだ(そうこうしているうちに低線量化もさらに進むため)。
筆者が期待するのは、まさに因果関係の説明だ。因果関係が説明できるなら、個別化医療に落とし込めるだろうし、「この方の血液検査結果から分析しましたら、放射線感受性が高い方であることがわかりました。リスクグループ分類でもHighリクス群に属す確率が高いので、CTではなくMRIファーストな方です」みたいに、医療従事者間でコミュニケーションがとれる時代が来るのかもしれない。そうなると、医療経済が動くので、研究への評価も上がるのだろう。

Note

本アプリケーションは医用画像情報実習の教材として本記事の作者によって開発されました。

References

改定履歴

  • 2020 初版
  • 20241002 修正・追記
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