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画像検査の費用対効果について考える回

Last updated at Posted at 2024-06-30

モチベーション

あまり考えてこなかったので、一度、調べておこうと思いました。

問題点

巨視的

  • 医療費の増大
  • 適切な医療費の分配(費用対効果について客観的に説明をしたもの)

画像検査についての課題

  • 画像診断機器は検査対象が広く、包括的な費用対効果分析が難しい
  • 検査の感度や特異度の評価は可能だが、患者の長期的なアウトカム(予後)評価を行うことが難しい
  • 機器の開発にかかった費用、医療サービスとしての運用性、検査の適用範囲(どの疾患にどの検査はOKか)などの観点から、費用(診療報酬の点数)はどこまでを含めるべきか。

このような課題に対処していくためには、将来的に包括的な評価が行えるように、対象疾患に対する特定の検査方法にフォーカスして、一つずつ費用対効果の分析を行い、エビデンスを蓄積するしかない。

分析の種類

費用効果分析(Cost Effective Analysis: CEA)

QALY以外の様々なアウトカム指標(生存率やイベント回避)を用いる分析

費用効用分析(Cost Utility Analysis: CUA)

QALYによる分析

費用便益分析(Cost Benefit Analysis: CBA)

アウトカムを金銭化して分析(CEAの一部として解釈されることがある)

費用最小化分析(Cost Minimization Analysis: CMA)

アウトカムを同等と置いて費用のみを検討する分析

画像検査の利用に関する費用対効果

診断機器の場合、「対象疾患が改善した」「合併症のリスクが減った」などといったアウトカムを短期的に評価するのではなく、疾患の早期発見、早期治療により得られる有病状態の減少による利益(質的利得)、死亡率の減少による利益(量的利得)を考慮した長期的なアウトカムを評価することが求められる。

そのためには、QALYsによる分析が有用であるとされる。

また、NIHは、薬機承認の判断材料として、費用効用分析の結果を用いることをガイドラインにしていることから、ここでは、費用効用分析を対象にする。

QALY

QALY(Quality-Adjusted Life Years)は、質調整生存年数。健康を1、死亡を0とした健康状態により重み付けされた生存年数のこと。
例えば、喘息の治療を受けながら過ごす1年と、健康に過ごす1年を同じ生存年1年と考えない。前者を0.8年、後者を1年として、患者のQOL(Quality Of Life)を考慮した生存年で考える。これらを積み上げた数値がQALYsとなる。

DALY

DALY(Disability-Adjusted Life Years)は、障害調整年数。これは、失ったQALYsのこと。
例えば、QALYによる評価の際に、完全に健康なまま過ごせたら120歳まで生きられたが、実際には、65歳でがんが見つかり、闘病して、90歳まで生きたとすると、65歳以降のQALYは健康なまま過ごしたQALYよりも小さくなる。この失ってしまった差分のQALYがDALY。

image.png
(Figure A1, Love-Koh, James & Walker, Simon & Kataika, Edward & Sibandze, Sibusiso & Arnold, Matthias & Ochalek, Jessica & Griffin, Susan & Revill, Paul & Sculpher, Mark. (2019). Economic Analysis for Health Benefits Package Design. )

HALY

HALY(Health-Adjusted Life Years)は、健康調整生存年数。健康状態や障害を考慮して調整された寿命を表す指標。単に生存年数だけでなく、健康で過ごせる年数を評価するために利用される。

費用効用分析

増分費用効果比(Incremental Cost Effectiveness Ratio: ICER)という考え方を用いて結果を示す。

\displaylines{
ICER = \frac{検査Bの費用 - 検査Aの費用}{検査BのQALYs - 検査AのQALYs}
}

例題

ある病気の早期発見のために、Aという検査とBという検査があります。Aは従来の検査方法で、Bは新しいCT検査です。それぞれの検査について以下の情報が与えられています。

  • 検査A
    コスト: 10,000円
    健康調整生存年数(QALY):0.8年

  • 検査B(CT検査)
    コスト: 50,000円
    健康調整生存年数(QALY):1.2年

この場合のICERを求めてみる。
新しい検査Bと従来の検査Aのコストの差を計算します。

\displaylines{
\begin{align}
Incremental Cost &= コストB - コストA\\
&= 50,000 - 10,000\\\
&= 40,000円
\end{align}
}

効果の増分(Incremental Effectiveness)
新しい検査Bと従来の検査Aの健康調整生存年数(QALY)の差を計算します。

\displaylines{
\begin{align}
Incremental Effectiveness &= 1.2 y - 0.8 y\\
&= 0.4 y\\\
\end{align}
}

ICERの計算
コストの増分を効果の増分で割ります。

\displaylines{
\begin{align}
ICER &= \frac{Incremental Cost} {Incremental Effectiveness}\\
&= \frac{40,000円}{0.4 y}\\
&=100,000 [円/QALY]
\end{align}
}

この例題では、従来の検査方法Aに対して新しいCT検査BのICERは100,000円/QALYとなる。
これは、1QALYを獲得するために追加で100,000円のコストがかかることを意味する。
この値がコスト効果的かどうかは、医療制度や社会的価値観に依存する。

例えば、薬価の価格調整(抗がん剤などを除く)は、500万円/QALY以上とされている。
何かの疾患を患ったとき、何も治療を受けずにQOLを下げるよりも、1QALYを獲得するために追加で500万円のコストをかけることを前提にしていることを意味するのだが、日本では健康保険で1~3割負担なのと、技術開発や医療サービス基盤を支えるという意味では、妥当なのだろう。

Stay visionary

References

  • 佐藤 美帆, 別所 俊一郎, 町田 好男, MRIの利用に関するモデルを用いた費用効用分析の手引き(前編), 日本放射線技術学会雑誌, 2024, 80 巻, 6 号, p. 686-691.
  • Love-Koh, James & Walker, Simon & Kataika, Edward & Sibandze, Sibusiso & Arnold, Matthias & Ochalek, Jessica & Griffin, Susan & Revill, Paul & Sculpher, Mark. (2019). Economic Analysis for Health Benefits Package Design.
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