もう一ヶ月半以上前になってしまいましたが、社内向けに書いた紹介記事を、一部編集したうえで公開しておきます。
#デブサミについて
デブサミ(Developers Summit)は、翔泳社が主催しているIT技術者向けの無料勉強会。技術書出版社が主催しているだけあって、偏りのない・質の高い講演がたくさん聞けるのが魅力です。
複数の会場から聞きたい講演を選ぶ形式が多く、東京では目黒雅叙園(「桜を見る会」ツアーで有名になりましたね)という豪華なホテルで2日間にわたり開催されて、雰囲気だけでもワイワイ楽しい。
私個人の話になりますが、4年前の初参加時にIT業界の最先端の動向に触れ、自分の技術的立ち遅れを痛感。そこから地元のIT勉強会などに自主的に参加するようになり、スキルと視野を広げることができたと思います。
最近は、30歳以下の若手技術者を対象とした Developers Boost(デブスト)も行なわれていますね。若いうちに刺激を受けられて、おっさんは羨ましい。
#デブサミ関西2019
今回参加したのはDevelopers Summit 2019 Kansai、会場は神戸国際会議場。モノレールに乗って行ってきました。事前登録者は620人超、セッション数は22と、東京と比べると小規模とはいえかなりの盛況。3~4会場から選ぶ形式で、ランチとお茶もついてくる。お得!
翔泳社の本の販売コーナーもあり、15~20%割引で売ってくれていたと記憶しています。私が買ったのは「ビジネスフレームワーク図鑑」「『実践ドメイン駆動設計』から学ぶDDDの実装入門」の2冊、帰りの荷物が重くなったけどええ本や……
#参加セッション
参加したセッションは以下の通り。
- 【C-1】神戸スタートアップCTOに聞く! 関西発のチャレンジを生み出す方法
- 【B-2】新規事業を支える文化と加速させる技術~DevOps/GCP/DDD~
- 【C-3】生産性を上げる新しい役割「業務ハック」とは?
- 【B-4】名古屋でエンジニアが中心となり、ゼロからコミュニティを立ち上げた話
- 【B-5】アウトプットからアウトカムにフォーカスしたプロダクトチームの作りかた
- 【B-6】ゲーミフィケーションエバンジェリストがささやく、 世界一の賞を獲得したワクワクするアプリのひみつ♥
- 【C-7】ぶっちゃけ儲かるの? アウトプットするエンジニア大集合LT!
講演資料はこちらにまとめられています。
Developer Summit 2019 KANSAI、講演関連資料まとめ
それぞれ印象に残ったポイントを書いておきます(太字は個人的に印象に残ったキーワードです)。
###【C-1】神戸スタートアップCTOに聞く! 関西発のチャレンジを生み出す方法(吉永 隆之[神戸市]/藤原 弘行[ACALL]/林 佑樹[AlpacaJapan]/平山 流石[KURASERU])
神戸のスタートアップ企業3社のCTOの話。
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Q「求人が大変な時代。どうやって優れた人を集めるか」→A「スキルチェックの問題は解いてもらう。そのうえで、会社のビジョンや文化を見せる」
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Q「背景も人種もバラバラな人員をどうやってチームとしてまとめているか」→A「SANSANのSEOが、仲間を信頼することが大事って言ってた。『あなたがわたしをきらいでも、わたしはあなたが好き』というくらい。かっこいいよね。信頼が一番の基礎だと思います」
###【B-2】新規事業を支える文化と加速させる技術~DevOps/GCP/DDD~(大西 真央[Sansan])
スタートアップ企業が、変化の多い現代にどうやって対応しているかという工夫の話。
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現在はVUCAの時代。学習→変化→適応のループを回していかないと追いつかない。変化の中心に文化を置く。その外に技術、ツールがついてくる。そもそもメンバを変化させることはできない。せいぜいきっかけを与えるくらい。文化に触れる、楽しむ、そういう環境づくり大事
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リーダはマイクロマネジメントしない。メンバを信頼しつつ、チーム全体で確認する、一時間はペア作業する、とかがよいよ
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チーム学習 学びの共有 知らないことは当り前、恥ではない、という価値観を共有しておくことが大事
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設計方法としてドメイン駆動設計(DDD)を取り入れている。エンジニアが単なる技術者になるのでなく、ビジネスに向き合ってもらうため。インフラはGoogle Cloud Platformに任せている。楽だよ
###【C-3】生産性を上げる新しい役割「業務ハック」とは?(髙木 咲希[SonicGarden]/廣野 美里[freee])
「業務ハック」という新たな肩書きで仕事しているお二人の話。こういう仕事やりたい。
前半の髙木さんは社外の業務改善請負人。
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根性に頼るといつか機能しなくなる。人に完璧を求めない。
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イチから作るのではなく、Googleカレンダー、Trello、IFTTT、Chatworkなど既存のサービスを組み立てる
後半の廣野さんは社内改善のスペシャリスト。
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ノンエンジニアをサポートする上で、現場の人は目の前のことにいっぱいいっぱい。今の業務はちゃんと遂行しつつ、拡張可能にしていく必要あり
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改善は現場の人と二人三脚で、ひたすらコミュニケーション。まずは現状把握、何に困っていて何を達成しないといけないのかを把握する
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現実にとらわれたら改善できない。夢を語ってもらい、そこに向かっていくの大事
###【B-4】名古屋でエンジニアが中心となり、ゼロからコミュニティを立ち上げた話(葛城 友香[ヤフー])
Yahoo名古屋で、勉強会をイチから立ち上げたというインパクトある話。PMは本番当日はタスクを持たないほうがよい、というのは導入プロジェクトなども同じですね。
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名古屋は勉強会文化あまりない。でもYahoo名古屋でやりたかった
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トップダウンでなくボトムアップ。へたにやるとマイナス印象になりかねない。上層部にちゃんと丁寧に説明し、むしろ巻き込むくらいの熱量が大事
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勉強会当日、PMはタスクを持たない。判断、挨拶だけ。かならず何かトラブルが起こるから、手を空けている必要がある
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知識を継承していくため、なるべく二人以上で動く
###【B-5】アウトプットからアウトカムにフォーカスしたプロダクトチームの作りかた(上園 元嗣[RiseUP])
単に言われたことをやるだけだった社内受託的な開発チームをアジャイルに変革していく熱い話。ぜひプレゼン資料に目を通してほしい。
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信頼の欠如がチーム機能不全のはじまり。信頼の欠如→衝突への恐怖→責任感の不足→説明責任の回避→結果への無関心
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リーダ主導でなく、全体で変えていく。
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仲のよいチーム内チームがあるよりも、全員に薄いコミュニケーションのあるチームのほうが業績が上がるという研究あり
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オフィスのレイアウト、席配置なども効果あり
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HRT 信頼、尊敬、謙虚さ
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スクラムを取り入れ、16Personalitiesやドラッカー風エクササイズでチームメンバーを互いに理解。モブプロの導入、改善
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工数見積りはパフォーマンスに悪影響。相対見積り(グミ)と、価値見積り(ダイヤ)を行い、コスパを算出、優先順位をアウトカムにフォーカス
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ものごとを変えるときには混乱は生じるもの、立ち止まらず挑戦を続けてほしい
###【B-6】ゲーミフィケーションエバンジェリストがささやく、 世界一の賞を獲得したワクワクするアプリのひみつ♥(仲 功児[ナノコネクト])
ユーザを迷わせない・使いたくなる工夫が一番進んでいるのがゲームの分野。その知見を通常のアプリに生かそう! というのがゲーミフィケーション。他社と差別化するための大きな武器になりそう。12要素の詳細が聞きたい方はぜひ仲さんの講演へ。
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WheeLogというアプリをゲーミフィケーションの観点で作り直したら国連の賞とか世界中のすごい賞取ったよ
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ゲーミフィケーションは動機付けの仕組み。研究した結果、12の要素に絞り込むことができた
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集中させるための5要素(必須)……ペイン排除、レベルデザイン、ゴール設定、ヴィジュアライズ、インターフェース
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楽しませるための5要素(あるとよい)……デザイアー・ファーストキャッチ・コミュニケーション・リワード・ディレクション&エフェクト
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ユーザ像……平均ユーザレベル、チューンアップ
###【C-7】ぶっちゃけ儲かるの? アウトプットするエンジニア大集合LT!(近藤 佑子[翔泳社]/底辺亭 底辺[銭けっと]/藤原 惟[ソラソルファ]/shohei/Abe Asami[nocono])
技術同人誌の話おもしろい。自分でも書いてみたいなあ。個人開発、動画講座販売など、個人でのアウトプットがいかに人を成長させるか、自分の市場価値を上げることがどれほど重要なことか、いずれもビリビリ来るお話でした。やっぱりアウトプットだ! と言いながらやっとこの記事を書き上げるふがいない私……
#まとめ
自身の興味の変化もありますが、4年前のデブサミよりも技術特化ではなく、いかによいチームを作るか、社会に価値を提供するか、そして利益を得るか。そのプロセスに焦点の当たったセッションが多かったように思います。
チーム作りの基盤に「信頼」があることが複数のセッションで一様に語られていて、自分に欠けている部分だなあと反省。ついつい「マイクロマネジメント」してしまう。それで「自分よりできてないな」とか思い込みがちですよね。リーダ主導でなく、皆で成長していく、そんなチーム作りたい。今現在、半信半疑で試している様々な取り組みについて、もっと思いきりアクセル踏んでいいんだ、今回のデブサミはそんなふうに背中を押してくれました。
また参加する機会があれば報告記事投稿したいと思います。それまでに腕をしっかり磨いておこう……!