Google Optimizeが終了し、無料で使える良い感じのA/Bテストツールを探していましたが、良いものが見つからず、Cloudflare Workersでもう作っちゃおうかなーって思ってたら、やはり同じことを考える人が多くいたらしく、日本でOptimaize Nextというサービスがリリースされていたので試してみました。
Optimize Nextとは
Optimize Nextは2012年3月創業のPROJECT GROUP株式会社が開発したGoogle Optimizeの後継をうたうSaaSです。2023年10月11日にリリースされ、現在はベータテスト中というステータスの様ですが、多くの企業に導入されている様です。
Optimize Nextの特徴
Google Tag Managerベース
サーバなどを準備せず、Optimize NextのGTMタグを設置するだけで使える様になります。これはメリットであると同時にデメリット、リスクでもあるので、自社のサービス、プライバシーポリシーと照らし合わせて導入可能かどうかを検討する必要があります。
UIをGoogle Optimizeに寄せる
使い慣れたGoogle OptimizeのUIを再現することで、導入障壁を下げ、スムーズに移行できることを狙っています。
シンプル、ゆえに機能数は少なめ
ベータリリースということもありますが、機能はシンプルであまり数はありません。
導入方法
Optimize Nextのアカウント作成
- サービスサイトのヘッダーの「無料で利用する」をクリック
- Google アカウントが必要なので、利用したいアカウントでログイン
コンテナの作成
- コンテナの新規作成をクリックし、コンテナを追加します
- コンテナ追加のサイドバーが開くので、管理用の名前とサイトのアドレスを入力し、「作成」ボタンをクリックします
- コンテナ作成中の画面になるので、しばし待ちます。おそらく裏でGoogle Tag ManagerのAPI叩いてこのサイト用のコンテナを作って初期化しているものと思われます
- コンテナの初期化が終わると、GA4などとの連携設定ができる様になります
GA4との連携設定
- GA4との連携ではOptimize Nextに対しGA4の権限を付与する必要があります
「Google アナリティクスの管理エンティティの表示、追加、更新、削除とレポート データの表示」
とあり、更新や削除まで含めたかなり強力な権限を付与しないといけないことに注意してください。
ひとつのGoogleアカウントで多くのプロパティの権限を持っている場合は、余計なプロパティの権限を渡さない様に、Optimize Next用のGoogleアカウントを作って利用した方が良いでしょう。
- 「続行」をクリックするとGA4のプロパティを指定する画面になります。A/Bテストを計測したいGA4のプロパティ、データストリームを選択してください
- GA4上で分析するためには、カスタムディメンションをGA4上で定義しておきます
Optimize NextのGTMタグの設置
- 表示されているOptimize NextのGTMタグをA/Bテストを行いたいサイト(ページ)の
head
内に追記します。
サイト全体の共通ヘッダーに設置すると、全ページでOptimize Nextのタグが有効になるので、必要に合わせて設置することをお勧めします。基本的には計測したいページのみ設置するのが良いと思います。
テストの設定
リダイレクトテスト
ページの構成、全体のデザインテイストなど大きな変更をテストしたい場合はこちらを選択し、比較対象のページを設定します。
リダイレクト先のURLを追加したい場合は、「変更内容」セクションで追加します。
要素変更テスト
ページの一部のみ(ボタン文言など)の変更の結果をテストしたい場合はこちらを選択します。
テストしたいページで見たまま編集をしたい場合はchromeの拡張機能が必要なのでインストールします。
拡張機能をインストール後、変更内容の設定したいパターンの鉛筆アイコンをクリックすると、対象のページが開き編集モードになります。
変更したい箇所を選択し、変更します。この辺りのUIはGoogle Opimizeと非常によく似ており使い慣れている人は助かりますね。
変更後、「保存」をクリックすると変更パターンが登録されます。
共通設定
振り分けの割合(通常は50%:50%だと思います)を変更したい場合は、「パターン」セクションで設定します。
全ての訪問者ではなく、特定の訪問者をターゲットにテストしたい場合はターゲティング条件セクションで設定します。
chromeのシークレットウィンドウで該当ページを表示し、変更が反映されていることを確認します。
ちゃんと反映されていますね。
レポーティング
テスト結果はGA4だけでなく、Optimize Nextの画面でも確認できます。
レポートメニューから目標イベントや指標を設定するとレポートが表示されます。
GA4のデータを利用しているのでリアルタイムには反映されません。おそらく1日程度遅れて反映されると思います。
Optimize Nextがやっていること
きちんと検証していませんが、各コンテナの設定情報などをfirebaseに保存し、そこからGTMのAPIを叩いて該当のタグを追加・編集しているのだと思います。(管理画面はReactベースですね)
おそらく、作りとしてはそんなに複雑で大規模なものでは無いと思います。しかし、個人的には車輪の再発明をする1のではなく、ユーザのフィードバックを上手く取り入れ、このサービスが発展していって欲しいなぁと思います。
サポート
人間が対応する様な有償サポート等は見つけられませんでした。
プレミアムプラン
2024年4月9日現在、プレミアムプランのベータがリリースされています。
単なるテストだけでなく、仮説、KPIツリーなどの概念が導入され、より実践的なWebマーケティングに使いやすいものになる様です。
ECサイト向けのテンプレートもすでに準備されており、EC-CUBEを使ったECサイトへの導入も比較的楽にできそうです。
Optimize Nextのメリット、デメリット
メリット
とにかく無料!
現状、全ての機能を無料で利用することができます。プレミアムプランのトライアルもクレジットカードの登録無しでできるので精神衛生上健康的。
使い慣れたGoogle Optimizeに近い操作性
テストしたいページのDOM要素をブラウザで見たまま変更する際など、使い慣れたGoogle Optimizeの操作性にかなり近いものを持っています。これは今までGoogle Optimizeに慣れてきた人にとっては非常に助かります。
Webマーケティングの会社が作ってる
Webマーケティングの会社が作っているので、より実践的で有用な機能の追加、改善が期待されます。
デメリット
自社データの再利用
利用規約に
当社は、利用者が当社に提供した情報、データ等を、個人や利用者を特定できない情報に変換したうえで、当社の裁量で、当該情報または当該情報に統計的処理を含む変換等を施した情報を利用および公開することがあります。利用者を特定できる形で公開する場合は、事前に利用者の書面または電磁的方法による承諾を得るものとします。
とあります。これは運営会社がOptimize Nextを通じて収集したデータを個人や利用者を特的出来ない形で自社のマーケティングや顧客への提案等に利用する可能性があります。
「絶対に競合に自社のデータは渡したくない!!」という方は慎重になった方が良いかもしれません。2
個人情報の取り扱い、セキュリティ
他者が管理するGoogle Tag Managerを導入するということは、そのサイトでほとんど何でもできてしまうということです。可能性の話ですが、例えば各種ログイン情報、顧客の個人情報を抜くことも技術的には可能です。
プライバシーポリシーには第三者提供について
(5)完全子会社への個人情報の提供、または合併その他の事由による事業の承継に伴って個人情報が提供される場合
(6)利用者の利益を侵害しない範囲内において、当社および個人情報の開示の対象となる第三者その他当事者の利益のために必要な場合
と記載されています。なので「絶対に第三者提供はしないよ!」という訳では無いので自社のプライバシーポリシーに準拠するかどうかなど注意が必要です。
僕らはGoogleという会社を信用してこれらの情報が適切に扱われる前提でGTMやGAを使っていますが、Optimize Nextのサービス提供元であるPROJECT GROUP株式会社でプライバシーマークやISMSなどの個人情報管理に関する認証を取得した情報は見つけられませんでした。
あと社長や企業風土が独特w
ゴリゴリでイケイケドンドンな香りがします。3
また、技術的な情報の発信が少ないので、この会社の技術レベルがわかりにくい。
可能性は低いですが、Optimize Nextのタグのエラーやバグによりサイトの動作に不具合が発生する可能性があります。
まとめ
Google Optimizeを使ってきた人にとっては、「こういうのが欲しかったんだよ!」という素晴らしいサービスです。
アーキテクチャに関してもパブリッククラウドの無料リソースを上手くHackし、非常に良く出来ていると思います。
ただ、ベータリリースということもあり、サービス運営体制には若干不安が残ります。 Google Optimizeは天下のGoogleさんが提供していたのである程度安心でしたが、Optimize Nextに関しては導入するサイトで扱う情報を考慮して使ってみるのが良いと思いました。