はじめに
今日、京極夏彦さんの「地獄の楽しみ方」という本を読みました。
その内容について、感じたことを自分なりに纏めたいと思ったので記事に残します。
今回読んだ本
電子版も出ているようなので、ぜひ読んでみてください。
どんな本なの?
京極夏彦さんといえば、「姑獲鳥の夏」や「魍魎の匣」などといった京極堂シリーズなどのイメージをお持ちの方が多いかと思います。
(いずれも非常に面白い作品です)
しかし今回の「地獄の楽しみ方」は小説ではなく、京極さんが小説家として考えている「言葉」というもの、その扱い、考え方について講演形式でまとめられた内容になっています。
どう活かせそうなの?
エンジニアは
- 仕様書、設計書などのドキュメントを残す
- ユーザー様やメンバーとのコミュニケーション
など、エンジニアという職業がもつイメージ以上に言葉を多く使う職業であると考えます。
その中で、「わかりやすく伝えよう」「誤解のないように伝えよう」と言葉を選びますが、
その結果伝わらなかったときにどうしても「おれがこんなに言葉を尽くしているというのにどうして伝わらないんだ」と考えたり、逆に「言葉が伝わらないのは自分の頭が悪いからだ」など自分を必要以上に責めたりしてしまうことがしばしばあります。
(僕自身相手に伝わらないとき、必要以上に自分を責めて、苦しい思いをしたことがあります)
もちろん、相手に必要な情報を伝えたり、自分の考えていることを伝える努力を怠ることをよしとするわけではありません。
相手に伝えるために「言葉」の力を磨くことは絶対に必要だと思います。
しかし、言葉というものは自身の中にある膨大な量の感情や知識を抽出したものにすぎません。
抽出されなかったものは相手には伝わりませんし、それらを抽出せずに伝えるには言葉というツールはあまりにデジタルであると思います。
(これがまさに「筆舌に尽くしがたい」というものなのだと実感しています)
なのでまずは「言葉というものは意思疎通のための重要なツールであるが、欠点も多く、
相手に伝わらないことが前提」であるという考え方を持って日々言葉の力を磨くことが
相手に自分が考えていることを伝えるための一番確かな方法であると感じました。
自分が役に立てたいと思った言葉
これ覚えておきたいなって特に思ったことを書いておきます。
語彙を増やすこと。それを使いこなすわざを身につけること。それを駆使して自分のやりたくないことをできるだけやらずに済ませる。そういうたくらみを持って、絶対に叶わない夢など追わず、きちんと手の届く目標を持ち、自分の人生に勝ち負けを持ち込まなければ、地獄は案外楽しいものです。
この考え方、エンジニアの根本にも通ずる考え方な気がします。
言霊は、心以外には効きませんが―――心にだけは効くんですよ。
この一節が書いてあるところ、「人間は自分がなりたいものになる」という節の中のさらに一節なんですが、ここの節は個人的にものすごい刺さりました。
こうやって自分を大事にするんだよね、って思いました。
ここは何度も何度も読み返したいところです。
おわりに
京極さんの「言葉」を大切にしているという思いがすごく伝わってきた一冊でした。
その言葉に対する思いの深さに触れたことで、より京極夏彦さんという作家が好きになりました。
「絡新婦の理」以降の作品は読んでいなかったのですが、これを機に全巻読破したいと感じました。
また、自分もこの人のように言葉を大事にできるようになりたいと思いました。