最近、Rails Upgrade のプロジェクトをやったのですが、そのとき困ったことがありました。
複数のリポジトリに分けてソースコードを使っており、それぞれのリポジトリが共通して利用している社内gemがあり、複数の Rails バージョンで動作を保証する必要が出てきました。
いままでは複数のリポジトリが同じRailsバージョンだったので、大きな問題には、ならなかったのですが
社内gem が複数の Rails で動くことを保証するため、
複数の Rails バージョンでテスト (rspec) を実行するようにしました。
「なんで "複数の Rails で動くことを保証" する必要があるのですか?」と思われるかもしれませんが、
このようなリポジトリが、Railsのバージョンが新しい順にあるとします。
- リポジトリA (ver. x)
- リポジトリB (ver. y)
- リポジトリC (ver. z)
(文字だけだとイメージしづらいので、図を置いておきます)
例えばですが、x になってから新しいメソッド def only_x
が追加された時を考えましょう。
この新しいメソッドを使っていたとして、ver. y
ver. z
では動かないとなります。
そのために my-gem.gemspec
で rails のバージョンを指定すればいいのですが、先行して各リポジトリが依存している 社内gemの my-gem
をリリースすることが出来ないということになってしまいます。
- 各リポジトリが社内gemの
my-gem
に依存している - 日々、社内gemの
my-gem
は開発が行われている (差分がどんどん出る)
そんな時に、この gem を使いました。
-
thoughtbot/appraisal: A Ruby library for testing your library against different versions of dependencies.
今回は、社内gem (my-gem という名前とします) で、下記のRailsバージョンでテスト (rspec) を実行できるようにします。 -
Rails 5.1.0
-
Rails 5.2.3
-
Rails 6.0.0
確認環境
$ ruby --version
ruby 2.5.5p157 (2019-03-15 revision 67260) [x86_64-darwin17]
調査
Github にある通りにセットアップしていきます。
Appraisals ファイルの準備
Appraisals
appraise "rails-5.1.0" do
gem "rails", "5.1.0"
end
appraise "rails-5.2.3" do
gem "rails", "5.2.3"
end
appraise "rails-6.0.0" do
gem "rails", "6.0.0"
end
インストール
my-gem.gemspec
group :development do
# 省略...
gem 'appraisal'
end
$ bundle install
$ bundle exec appraisal install
このファイルが出来上がります。
各Railsバージョンごとの依存を管理しています。
gemfiles/rails_5.1.0.gemfile
gemfiles/rails_5.2.3.gemfile
gemfiles/rails_6.0.0.gemfile
テストファイル用意
spec/models/user_spec.rb
require 'rails_helper'
RSpec.describe User, type: :model do
it '計算1 should' do
(1 + 2).should eq 3
end
it '計算2 expect' do
expect(3 + 4).to eq 7
end
end
テスト実行
それではテストを実行してみましょう。
$ RAILS_ENV=test bundle exec appraisal rspec spec/models/user_spec.rb
出力結果 はこちらになります。
(deprecation warning など不要だと思われる情報は削ったり、パスを書き換えたりしてます)
Rails5.1.0 でのテスト
>> BUNDLE_GEMFILE=/my-gem/gemfiles/rails_5.1.0.gemfile bundle exec rspec spec/models/user_spec.rb
Run options: include {:focus=>true}
All examples were filtered out; ignoring {:focus=>true}
..
1 deprecation warning total
Finished in 0.21237 seconds (files took 5.08 seconds to load)
2 examples, 0 failures
Rails5.2.3 でのテスト
>> BUNDLE_GEMFILE=/my-gem/gemfiles/rails_5.2.3.gemfile bundle exec rspec spec/models/user_spec.rb
Run options: include {:focus=>true}
All examples were filtered out; ignoring {:focus=>true}
..
1 deprecation warning total
Finished in 0.22129 seconds (files took 5.45 seconds to load)
2 examples, 0 failures
Rails6.0.0 でのテスト
>> BUNDLE_GEMFILE=/my-gem/gemfiles/rails_6.0.0.gemfile bundle exec rspec spec/models/user_spec.rb
Run options: include {:focus=>true}
All examples were filtered out; ignoring {:focus=>true}
..
1 deprecation warning total
Finished in 0.07676 seconds (files took 6.03 seconds to load)
2 examples, 0 failures
これで、Appraisals ファイルに記述してある3種類の Rails バージョンで rspec が実行されます。
ちなみに、こんな感じで、Rails 5.2.3
だけをテストすることも可能です。
$ RAILS_ENV=test bundle exec appraisal rails-5.2.3 rspec spec/models/user_spec.rb
はい。これで、特定のRailsバージョンが動かない処理が書かれたときに検知できますね!
みなさん、お気づきかと思いますが、開発する時に自動テストがきちんと書かれているから検知できるのです。
私は、自動テストの効果についてピンと来てませんでしたが、Rails Upgrade のプロジェクトを通じて、自動テストの重要性に気付かされました。