言いたいことは「遊ぶだけじゃなくて意思決定できるデモアプリとレポート作れよ」ってことです。それに必要なスキルもつけようねって感じです。
生成AI時代のキャリアについて困っている方、こんにちは。「生成AI」はとんでもない勢いで確実に世の中を変えています。
その影響はITエンジニアにとどまらず「生成AI」という言葉は流行語大賞にノミネートされましたし、孫正義さんはまだChatGPTを使ってない人に対し「人生を悔い改めた方がいい」と発言までしています。
- https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202312010000296.html
- https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2310/04/news175.html
昨年の Stable Diffusion の登場や、昨年末の ChatGPT の登場から、ここ1年で生成AI への期待値はどんどん高まり、一部ではその期待を超えてきています。
私はその現状を踏まえて、働き方を大幅に変えました。正社員を辞めて法人を設立しました。
生成 AI 時代の独立チャンス
法人設立への思いの一つとして、個人でやっていたほうが生成 AI 時代では重宝されるのではないかという思惑がありました(もう一つの大きな思いはエンジニア教育事業です)。
自社サービスを運営開発する会社において、開発するべきことが多くなり、エンジニアが不足したとき何が起きるでしょうか?
自社内コミュニケーションが発生するような仕事や、自社内で閉じなければならない仕事に正社員エンジニアが忙殺されます。
4象限マネジメントで言うところの「緊急かつ重要なタスク」と「緊急だが重要ではないタスク」を正社員エンジニアが担うということです。
ITエンジニア界隈では本業とは別に副業する人が増えています。そのような副業メンバーが任されることはどんなものでしょうか?
稼働がたくさん取れるなら緊急なタスクを捌くことは可能です。しかし実態は、取れうる稼働は週8-24時間程度で稼働時間は不安定で、業務時間後の稼働が多くなりコミュニケーションがしづらくなります(ゆえに、経験のある方かつ、自走できる方だけが活躍します)。
ゆえに緊急系のタスクは任せられません。
そうなってくると「緊急ではないが重要なタスク」を任せるほかありません(「緊急ではなく重要ではないタスク」は基本的にやる必要ありません)。
個人的には正社員エンジニアこそ「緊急ではないが重要なタスク」に取り組むべきだと思っており、現状に対して強い疑問があります。
だからこそ独立を選びました。おもしろいことこそ、業務委託に任されうると。
私の考えでは、いまの時代において「緊急ではないが重要なタスク」は生成 AI の援用です。
経営者の多くは「生成 AI は有用そうだが、どうやって活用したらいいのかわからない」という状況で、コンサルタントに助言を求める人が増えています。SNS で AI について発信しているフォロワーが多い人にコンタクトを取っている方も多くいるようです。
その現状は次のような生成 AI の状況を考えると仕方ないとは思います。
- 生成 AI という言葉が曖昧であること
- まだ活用例が少ないこと
- 活用できる範囲が広すぎること
- 評価が難しい
だからといって、静観しているべきではないと考えています。活用する前提でどのように活用するべきか手をのばすべきです。
生成 AI 時代でなによりも重宝されるのは、まだ曖昧な生成 AI の活用に詳しくなり複数社の相談に乗り、力点を見つけるノウハウを手に入れることだと思います。これは1社にフルコミットしているだけでは、なかなか実現できません(深く話すことができるとは思いますが適用範囲は狭くなります)。
生成 AI に詳しいだけの人にコンサルティングに頼るように、エンジニアをより稼がせるエンジニアに育てるためには必須項目だと捉えるべきだと捉えています。
関係者を稼がせるために必要な意思決定の補助
私は「稼がせるエンジニアを増やす」ことをミッションとしています。ちょっと前までは「使われないシステムをなくす」ことを掲げていました。
「使われないシステムをなくす」は遠回りな表現だったことに気づき、考えを突き詰めて「利益を上げるエンジニアを増やす」だと気づき、改めました。ここで言う「稼がせる」という言葉は、会社や組織を稼がせるという意味で「稼げるエンジニアになる」という意味ではありません。
生成 AI に詳しいだけでは「稼がせる」ことはできないと思います。既存システムにどう組み込むべきか、現実的な利益を想定し意思決定を促す必要があります。生成 AI は広い範囲で適用できますが責任を取ることだけはできません。ゆえに、意思決定の補助する人が重要だと考えています。
データサイエンティスト協会の「データサイエンティスト スキルチェックリスト」の第5版にも生成 AI の活用が取り入れられました。
データを取り扱う専門家であるデータサイエンティスト(ここでは機械学習エンジニアやデータエンジニアなども含む包括してこう呼びます)には、生成 AI を活用することが求められていると思います。
落合さんが流行語大賞の表彰式で次の発言をしました。まさしくこれが生成 AI ではできない人間がやるべきことだと思います。
「どうやってAIを使うかということに対して、我々が自己決定したということが最も重要。生成AIは知識をサポートはしてくれるが、決断の責任をとってくれないので、そこが重要だと思う」
生成 AI を試すのではなく、使う前提で考えたほうがいい
私は2023年1月頃から生成 AI に可能性を感じはじめ Stable Diffusion を活用したイラスト作品を販売したり、日々 ChatGPT を活用してできる限り「限界」を見極めようとしてきました。これまで限界を何度も見てきましたが、日進月歩で限界を突破していくさまに翻弄されています。
エンジニアやデータサイエンティストでさえ翻弄されている現状です。世の中の経営者の多くは「活用したい」という思いはあれどどうすればいいのかわかっていないでしょう。
私は実際にいくつかの企業と契約し、AI活用のコンサルティングやリサーチをしてきました。そこで気づいたのは、リサーチやコンサルティングをしても企業がそれらの情報を有効活用できないことです。
その理由は、活用するためにエンジニアの工数がそこそこ必要だったり、エンジニアじゃなくてもギリギリできるがセットアップの手間が煩雑であったりメンテナンスが難しかったりすることでした。
あたりまえですが、使いづらいシステムや扱いづらいシステムは誰も使いません。Stable Diffusion は https://github.com/AUTOMATIC1111/stable-diffusion-webui や https://github.com/comfyanonymous/ComfyUI によって大幅に使いやすくなりましたが、まだまだ一般に使いやすいとはいえません。
使えない場合、意思決定の材料にできないということになります。まだ日本のエンジニアの多くは「技術を試している」だけにとどまっていると思います。今後は「エンジニアだけに閉じる」わけではなく、より広く普及させることが必要とされると私は考えています。
この主張は、本日読んだ記事 https://note.com/saldra/n/n20f633b7b574 に触発されています。こちらの記事の先にリンクされている記事もぜひ読んでほしいです。過激な主張が入っており同意できない部分もありますが、それ以上に否定できないことが多く書かれています。
データサイエンティストの役割の変化
データサイエンティストというのは、データから知見を見出したり、知見を見出し続けるためにデータを集める戦略を立て、なんらかの意思決定に役立てることが仕事だと思います。昨年から続く生成 AI のブームの中で「意思決定できる材料」の質が変わってきているように感じます。
従来は PDF のような文書やパワーポイントのようなプレゼンテーション資料だったところが、よりエンジニアリングに寄り、動くものが要求されるようになったのではないかと感じます。Gradio, Streamlitなどのフレームワークが整ってきたという背景もありますが、静的な文書や資料だけでは表現力が足りなくなってきたのではないかと思います。
文書やプレゼンテーション資料が不要になるとは思いませんが、それに加えて「動くもの」を使えるスキルが問われていくんだろうなと思うようになりました。
最後に
ここまでで生成 AI におけるキャリアの考え方と必要とされるスキルについて話してきました。生成 AI の変化は、私の働き方を大きく変えましたし、世界を変え続けています(国際レベルの議論が絶えません)。
その中で、データサイエンティストに要求されるスキルも変わってきているように感じます。生成 AI 時代のキャリアについては真剣に考えるべきだと思います。
私の文章が少しでもヒントになることを願っています。