せっかちのために
LINEに編集機能の実装がされておらず、紋々とするそこのあなたへの処方箋です。LINE はメッセージ送信後の「編集」を実装していない。理由は Letter Sealing による E2E 暗号化と改ざん防止の設計思想が根底にあるのではないか。
対して Microsoft Teams と Slack はいつでも (または管理ポリシー下で) 編集/削除が可能で、企業向けコンプライアンス機能 (eDiscovery・データ保持・DLP) とトレードオフで真正性より柔軟性を重視。
本記事では 3 つのサービスを①機能面②実装アーキテクチャ③運用・監査への影響の 3 点で比較していく。
※本記事はLINE関係者に直接聞いたわけではないので、一個人の見解として参照していただきたい。
1. サマリ
項目 | LINE | Microsoft Teams | Slack |
---|---|---|---|
編集 (Edit) | × 提供なし | ◎ いつでも可 (組織ポリシーで制限可) | ◎ いつでも可 (ワークスペース設定で制限可) |
取消 (Unsend/Delete) | 〇 24h 以内 Unsend | ◎ いつでも可 | ◎ いつでも可 (Undo Send は 15 秒以内) |
暗号化モデル | E2EE (Letter Sealing) | 転送/保存時暗号化 1:1 通話のみ E2EE |
転送/保存時暗号化 (E2EE なし) |
改変履歴の保持 | 端末のみ | サーバで全履歴を保持 | サーバで全履歴を保持 (管理者 API 取得可) |
監査・コンプライアンス | 限定的 | Microsoft Purview Retention 等 | Slack EKM・Audit API |
2. LINE における「編集機能」要因分析
2‑1. Letter Sealing と改ざん防止
- 2016 年以降すべての 1:1/グループチャットをデフォルトで Letter Sealing により E2E 暗号化 Line Encryption Whitepaper。
- 送信時点でメッセージは各端末固有の鍵で暗号化・署名され、「あとから内容を書き換える=再暗号化+再署名」が必要になる。
- 履歴における整合性を崩さないため、LINE は改変不可能なチャットログを原則としている。
2‑2. 誤送信対策は Unsend で代替
- 2017 年に追加された Unsend は 24 時間以内であれば双方からメッセージを削除できる LINE 公式ヘルプ。
2‑3. プッシュ通知・証跡管理
- LINE は個人利用が中心のため、通知置換や監査ログより UX とセキュリティを優先か。
3. Microsoft Teams ― エンタープライズ優先の柔軟性
3‑1. Edit/Delete の仕様
- 送信後、[…] メニュー → Edit で即時編集。ショートカットは
Ctrl/Cmd + Shift + E
Microsoft Q&A。 - 削除も常時可能だが、テナント管理者はチーム/ユーザー単位で編集・削除を禁止できる。
3‑2. Retention / eDiscovery
- Microsoft 365 Purview の Retention Policies で「編集前後を含む全チャット履歴」を保持/自動削除できる 公式ドキュメント。
- 監査ログは eDiscovery で検索・エクスポート可能。
3‑3. 暗号化モデル
- メッセージは転送・保存時に暗号化。1:1 通話でのみ 任意で E2EE を有効化できる (チャットは非対応)。
4. Slack ― カスタマイズ性とワークフロー連携
4‑1. Edit/Delete と Undo Send
- デフォルトでは誰でも編集/削除が可能。Workspace オーナーが「無制限/◯分以内/禁止」を設定できる Slack Help。
- デスクトップ版は
Ctrl/Cmd + Z
で 15 秒以内の取り消し (Undo Send) が可能 Zapier 記事。
4‑2. 管理者制御と EKM
- Slack Enterprise Grid は Enterprise Key Management (EKM) で AWS KMS の独自鍵を使い、管理者がメッセージ単位で鍵を無効化できる Slack EKM。
- Audit Logs API で編集・削除履歴を取得し、SIEM 連携が可能。
5. セキュリティと運用へのインパクト
観点 | LINE | Teams | Slack |
---|---|---|---|
真正性 | 送信=不変で高 | 履歴改変可 (保持可) | 履歴改変可 (保持可) |
誤字修正 UX | Unsend→再送 | その場で即編集 | その場で即編集 |
監査ログ | 端末依存 | Purview で保全 | Audit API・EKM |
導入想定 | B2C 個人/小規模 | M365 企業 | 開発・SaaS 組織 |
6. 参考リンク
- LINE 公式ヘルプ: Unsending/deleting messages
- The Verge: Line now lets you unsend messages
- LINE Encryption Whitepaper v2.1 (PDF)
- Microsoft Q&A: How can I edit a message in Teams?
- Microsoft Docs: Manage retention policies for Teams
- Slack Help: Edit or delete messages
- Zapier Blog: How to delete Slack messages—and other tips
- Slack EKM: Encryption Key Management for Enterprises
- WhatsApp Blog: Now you can edit your WhatsApp messages
- GQ: Soon you'll be able to edit messages on iPhone
- Wikipedia: Telegram (software) – message edit limit
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