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熱力学第一法則と状態方程式

Last updated at Posted at 2018-07-01

本記事の目的

「熱力学第一法則」「状態方程式」を用いて熱力学を理解することを目的とします。

熱力学の印象

熱力学という学問は物理の中でも”個人的”にとても曖昧な学問のように感じています。
理由は、元の原理がなんなのかよくわからないからです。

力学であれば、ニュートンの第三法則
第一法則:慣性の法則
第二法則:運動方程式($m\bf{a}=0$)
第三法則:作用反作用

電磁気学であれば、マクスウェルの方程式
$\nabla\cdot \bf{B}=0$
$\nabla\times \bf{E}+\frac{\partial \bf{B}}{\partial t}=0$
$\nabla\cdot\bf{D}=\rho$
$\nabla\times \bf{H}-\frac{\partial D}{\partial t}=\bf{j}$

量子力学なら、シュレディンガー方程式
$i\hbar\frac{\partial \psi(\bf{r},t)}{\partial t}=-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2\psi(\bf{r},t)+V(\bf{r})\psi(\bf{r},t)$

相対性理論なら重力場の方程式
$G^{\mu\nu}=\frac{8\pi G}{c^4}T^{\mu\nu}$

相対論的な量子力学なら・・・・クラインゴルドン方程式とか・・・
(あまり詳しくないが・・)

と、このように現象に対して解くべき方程式が用意されています。
要するに上の偏微分方程式を解けば時々刻々と変化する現象を理解することができるです。

それが熱力学ときたら?

急に「熱力学第一法則」だとか言い出して、
$dQ=dU+pdV$・・・(1)

こんな感じで、いきなり全微分の変化量として法則を定義しています。

仕方が無いので、(1)を認めるとして永遠にこの全微分と偏微分のまま式変形を繰り広げて、現象論を学ぶ必要があるので、数学が苦手な人は、まー慣れるのに時間がかかります(´・ω・`)

ひとまず、(1)は認めるとして、それと馴染みのある「状態方程式」を使って現象を整理したいと思います。

熱力学第一法則

熱力学第一法則は、数式で書くと
$dQ=dU+pdV$・・・(1)

であるが、これは単に「エネルギーの保存則」を言っているに過ぎません。

すなわち、

と言っているです。

なんにも難しいことではないですね。
でも、とても曖昧な感じがしませんか?

一体、「内部エネルギー」とは何でしょうか?

内部エネルギーとは何か?

「内部エネルギー」と言われてもピンとこないでしょう。

具体的に言えば、内部エネルギー、すなわち内部の状態とは、温度$T$、圧力$P$、体積$V$などの状態量のことを指します。

それでも曖昧さが残るのはなぜか?

だいたい温度とか圧力とか実態は何なのでしょうか?
そこを話さなければならない気がします。

話し出すと長くなるので、簡単に言えば、「気体分子運動論」によると、

圧力は、粒子の壁に与える「単位面積当たり、単位時間当たりの運動量変化」であり、
温度は、粒子の運動エネルギーの平均値×粒子数(運動エネルギー)であり、
体積は、その名の通り閉じた空間のことである。

これらを内部的な状態として、人が観測するのです。

観測するときに、圧力や温度を観測するがそれは本質的には同じものを測っているようにも思える。

なぜなら熱力学的な状態は、温度$T$、圧力$p$、体積$V$などの独立な2つの変数さえ指定すれば、状態は決定されるのである。

だから、視覚的に考えやすい体積$V$(閉じた空間)を変数として選ぶとすれば、あとひとつを状態変数として選択すれば、考えるべき状態と言うのは決定されるのである。
だから、例えば圧力$p$を観測すれば(変数として選択すれば)、温度$T$は測定しなくても「測定したと圧力$p$と体積$V$」との関係式から決定することができるのです。

では、その温度$T$は体積$V$と圧力$p$との関係式とは、なんでしょうか?

それは、、熱力学的な状態関数は、
$f(P,T,V)=0$・・・(2)
として関係式のことです。

お分かりでしょうが、温度$T$、圧力$p$、体積$V$などの独立な2つの変数さえ指定すれば良いと言った意味は(2)式のような関係式があるために、
未知数:3つ
式:1つ

なので、未知数を2つ指定すれば問題は解けるということを言いたいのだ。

さて、ここで
$f(p,T,V)=0$・・・(2)
とは具体的には何でしょうか?

理想気体の状態方程式

馴染みのあるものとして挙げられるのが、理想気体の状態方程式でしょう。
理想気体の場合は、(2)式は下記のように書けます。

$pV=nRT$・・・(3)

(3)式はもともとは、

ボイルの法則
$PV=一定$

と、
シャルルの法則
$\frac{T}{V}=一定$?
$\frac{V}{T}=一定$?
どっちが分母だったか??
とにかく割れば一定だからどうでもいいか(笑)

とを気体定数$R$というのを導入して、ひとつの式まとめたものです。

個人的に「状態方程式」と言わずに、あえて「理想気体の」と付けて、しっかり前提条件を暗に含めて語るように心がけていますね。

それは、「理想気体の状態方程式」は次のような仮定のもと成立している式であると理解されているからである。

理想気体の状態方程式が成り立つ仮定

(A)分子間力を考慮しない

これは、その名の通り分子間力を考慮していないので、たとえ分子同士が接近してもやはり「分子間力を考慮しない」と言う意味であり、”希薄な状態”であるを指しています。
”希薄な状態”とは多くは気体などのことである。

つまり、水などは分子同士があまりにも接近しているため、分子間力を考慮しなくてはならず、その時点で「理想」とはかけ離れているので、「理想気体の状態方程式」を適用することはできない。
もうひとつ、分子間力が無視できる場合は、「温度が高い状態」の時です。

希薄と言っても、当然粒子同士はある確率で接近するわけで、その場合でも分子間力を考慮しないという意味だけではなく、粒子同士が接近しても運動エネルギーが大きいため、分子間力を感じることなく引力を振り切ってしまいます。
そのような状態であれば、分子間力は無視されます。

(B)粒子の大きさが体積に比べて十分小さい

$PV=nRT$の$V$は粒子の大きさを考慮されているでしょうか?
答えは、考慮されておらず、単に閉じた空間の体積のみを指しています。

そういう意味で、粒子数が大きくなると(希薄でなくなると)、全粒子の体積($b$とする)は、閉じた空間の体積$V$に対して無視できなくなります。
しかし、理想気体を考えている以上は、粒子の大きさは無視できるほど希薄であると考えている。

さて、この2つの仮定が成り立たない場合はどうなるのでしょうか?

その前に協調しておきましょう。

このような「理想気体」というものは、そもそも存在しない。

存在しないからと言って愕然とすることはなく、物理現象を理解する上で(3)式のようにシンプルな関係式を使って現象を理解すれば、それで十分なのです。

何も複雑に考えて、物理現象を理解しようとしても無駄な場合も多いです。

少ない情報で、多くのことを理解できれば、むしろその方が賢いやり方であることを肝に銘じつつ、(3)式が成り立つのは(A)(B)の2つの仮定が十分成立すると考えられるときであるというのを認識しておけば良いのです。

そして、(A)(B)が成り立たない場合は、(3)式を補正するれば良いだけだと、軽い気持ちで考えておけば良いでしょう。(良いかは知りませんが・・・・)

気体の状態方程式

今度は「理想」という言葉を取ってみました。

簡単のために1モルあたりの気体を考え、その体積を$v$と置くことにします。

状態方程式を次のように修正する。

$\frac{pv}{RT}=1+\frac{b_{2}(T)}{v}+\frac{b_{2}(T)}{v^2}+・・・$・・・(4)

難しく考えると、難しく感じるものであるが、これは単に第一項までなら「理想気体の状態方程式」であるが、実際の気体はそこから幾分かずれているだろうと考えて、第二項以降を足しているだけです。

$b_{2},b_{3}(T)・・・$などは、ビリアル係数と言い、気体の種類によって異ります。

ビリアル係数$b_{i}$に比べて体積$v$が大きい場合は、(4)式の右辺は第一項のみとなり、やはり「理想気体の状態方程式」に帰着します。

このように、実在気体は、「理想気体」から幾分かずれるのです。

だから、実在気体を正確に表現するために、幾つか状態方程式が提案されていますが、今回はその中でも最も有名なのが「ファン・デル・ワールスの状態方程式」のみ紹介しておきましょう。

ファン・デル・ワールスの状態方程式

1モルの気体に対して、ファン・デル・ワールスの状態方程式は、
$(p+\frac{a}{v^2})(v-b)=RT$・・・(5)

と書きます。

これは次のようにして理解することができます。

理想気体の状態方程式(3)式をまず考えます。

$pv=RT$

これは分子を大きさのない質点だと考えていたので、実際は分子の容量は$b$あるのだよってことを加えればよいので、

$p(v-nb)=RT$

ここで、分子間力が働く場合は、どのように変更が加えられるでしょうか?

理想気体の場合は、壁に与える力が圧力$p$として書かれていましたが、分子間力で分子同士が引き合っていると、実際の圧力${P}'$は理想気体の圧力$p$より減っているでしょう。

では、どれくらい減るのでしょうか?

分子の単位体積当たりの数$\frac{n}{v}$の分だけ比例して減りそうですね。

数と言っても、本当の数は「$n$×アボガドロ数」だがアボガドロ数は定数として考えているので無視します。

今は1モルあたりで考えているので、$\frac{1}{v}$の分だけ比例して減りそうであるということがわかりました。

さらに、分子間力は相手があっての分子間力なので、$\frac{1}{v}$に比例するのではなくて、$\frac{1}{v}\times \frac{1}{v}=\big(\frac{1}{v}\big)^2$という形で比例することになります。

比例定数を$a$とおくと、実際の圧力は、

${p}'=p-a \big(\frac{1}{v}\big)^2$

と、このように書けます。

よって、ファンデルワールスの状態方程式は、理想気体の状態方程式から補正されて、

ファンデルワールスの状態方程式

$\big({p}'+\frac{a}{V^2}\big)\big(v-b \big)=RT$

⇔あるいは

${p}'=\frac{RT}{v-b}-\frac{a}{v^2}$

と書けます。

ここで${p}'$を$p$と書けば、
$\big(p+\frac{a}{V^2}\big)\big(v-b \big)=RT$・・・(5)

⇔あるいは

$p=\frac{RT}{v-b}-\frac{a}{v^2}$・・・(6)

となります。

さて、内部の状態に対する基礎的な方程式を得ることができました。

内部の状態(内部エネルギー)のまとめ

熱力学的な状態関数は、

$f(P,T,V)=0$・・・(2)

として関係式が成り立ちます。

理想気体の場合
$pV=nRT$・・・(3)

理想気体でない場合(ファン・デル・ワールスの状態方程式)

$p=\frac{RT}{v-b}-\frac{a}{v^2}$・・・(6)

気体についてはこの2つを覚えておくとだいたい良いだろう。

熱力学第一法則を式変形

「熱力学第一法則」は
$dQ=dU+pdV$・・・(1)

でありましたが、これを理解できるような形に式変形していきましょう。

次の3つの環境下で考えることにします。

No. 環境下 0の変化量
A 圧力も体積も変化 -
B 体積一定 $dv=0$
C 圧力一定 $dp=0$

まず、一般(A)を述べた後で、具体的な(B)(C)と説明することにします。

一般論(A)

一般論とかたいそうな名前を付けました。

特に特別な環境下(体積一定、圧力一定など)を仮定しないという意味で「一般論」と呼んでいます。

具体的な話は(B)(C)を考えれば良いが、それでは論理が飛躍してかえって誤解を招きますので、特に何も仮定をしない一般論を述べた後、具体的な状況下を考える方が良いと考えています。

熱力学状態は、温度$T$、圧力$p$、体積$V$などのうち独立な2つの変数を指定すれば良いと述べましたが、内部エネルギー$U(T,V)$については独立な変数として、温度$T$、体積$V$を指定することにします。

内部エネルギー$dU$の全微分を考えると、
$dU=(\frac{\partial U}{\partial T})_{V} dT+\big(\frac{\partial U}{\partial V}\big)_{T} dV $・・・(7)

と書けるので、(1)式に代入しましょう。

すると、(1)式は、

$dQ=(\frac{\partial U}{\partial T})_{V}dT+\big((\frac{\partial U}{\partial V})_{T}+p\big)dV$・・・(8)

となります。

(8)式が、左辺$dQ$のように加えられたエネルギーに対して、右辺の変数$T$,$V$として変化する量となります。

これで一般論(A)の解説が終わりました(^^)

あとは、「(B)体積一定」「(C)圧力一定」の場合を考えることにしましょう。

この時にはじめて、定積比熱$C_{v}$や定圧比熱$C_{p}$という物性値を導入することになる。

気体定数$R$や定積比熱$C_{v}$や定圧比熱$C_{p}$のような、物性値は色々な物理量を結びつけるために導入した物質特有の量であって、それさえデータベースとして押さえておけば、あとはデータベースから引っ張り出して、便利なように異なる物理量を結びつけることができるのである。

例えば、「理想気体の状態方程式」は
$pV=一定$と$V/T=一定$から、$p$,$V$,$T$を結びつけるために気体定数$R$を導入したりしたが、こんな感じで導入される。
(※熱伝導率は物質特有の値であるため物性値と呼ばれるが、熱伝達係数は物質特有の値ではない。熱伝達係数は流れによって値が変わるからである。このように、必ずしも物質特有の値とは限らないということには注意しておく必要がある。)

(B)体積一定の場合

体積一定なので、$dV=0$と考えれば良いので、(8)式より第二項がすべて消えてしまいます。

$dQ=(\frac{\partial U}{\partial T})_{V}dT$・・・(9)

特に、

$(\frac{\partial U}{\partial T})_{V}=nC_{V}$・・・(10)

と置くとき、$C_{V}$を定積比熱と呼びます。

すなわち、(9)式が、

$dQ=nC_{V}dT$・・・(11)

のように書けることになります。

ここでの$C_{V}$定積比熱の単位は、$(J/mol K)$です。

特に、両辺$dT$で割って、
$\frac{dQ}{dT}=nC_{V}$

とすれば、

定積比熱は、「体積一定のもとで、1molあたり・1Kあげるのに必要なエネルギー」と解釈することができます。

(C)圧力一定の場合

圧力一定なので、圧力$p(T,V)=一定$とすることができます。

ここで、$T$の変化に伴って容積$V$が変化するので、

$dV=(\frac{\partial V}{\partial T})_{P}dT$・・・・(12)

このように書けば、(8)式は、

$dQ=\bigg((\frac{\partial U}{\partial T})_{V}+\big((\frac{\partial U}{\partial V})_{T}+p\big)(\frac{\partial V}{\partial T})_{P}\bigg)dT$・・・(13)

ここで、
$dQ=nC_{p}dT$・・・(14)

$nC_{p}=(\frac{\partial U}{\partial T})_{V}+\big((\frac{\partial U}{\partial V})_{T}+p\big)(\frac{\partial V}{\partial T})_{P}$・・・(15)

と置くとき、

$C_{p}$を定圧比熱と呼びます。

これは圧力一定(定圧)のもとで、導入した定数と言う意味で定圧比熱と呼ばれている。

(A)(B)(C)のまとめ

大事なのは「(A)一般論」では定積比熱$C_{v}$、定圧比熱$C_{p}$も一切登場していません。

定積比熱$C_{v}$は、無理やり登場させることができます。

しかし、かなり限定的な場合に限ることを認識しなくてはなりません。

限定的な場合とは、理想気体の場合である。

多くの場合は、理想気体として扱ってよい場合が多いので、ここから理想気体に限ったお話をしていこうと思います。

理想気体における、U(T,V)の体積依存性

理想気体の場合は、内部エネルギー$U$を温度$T$、体積$V$を変数として、$U(T,V)$と書くとき、

$(\frac{\partial U}{\partial V})_{T}=0$・・・(16)

が証明できます。

それゆえに、定積比熱$C_{v}$を使うことができます。
もう少し詳しく説明しましょう。

理想気体の場合

(16)式は次のようにすると導出できます。

熱力学第一法則

$dQ=dU+pdV$・・・(1)

に対して、$T$を固定して、$V$で偏微分することを考える。

ここで、エントロピー$S$を導入すると、$dQ=TdS$なので、

(1)式は、
$T(\frac{\partial S}{\partial V})_{T}=(\frac{\partial U}{\partial V})_{T}+p$・・・(17)
となる。

ここから、マクスウェルの関係式を導入します。

今回使うのは、
$(\frac{\partial S}{\partial V})_{T}=(\frac{\partial P}{\partial T})_{V}$・・・(18)

これを(17)式の左辺に適用すると、(17)式は、

$T(\frac{\partial P}{\partial T})_{V}=(\frac{\partial U}{\partial V})_{T}+p$・・・(19)

$(\frac{\partial U}{\partial V})_{T}=T(\frac{\partial P}{\partial T})_{V}-p$・・・(20)

さてここで、理想気体の状態方程式

$pV=nRT$

を用いると、(20)式の右辺は消えてします。

よって、

$(\frac{\partial U}{\partial V})_{T}=0$・・・(16)

が証明できました。

ここで、
「理想気体を考えている条件下では、内部エネルギー$U(T,V)$は$V$に依存しないのか('_')ならば、$\frac{dU}{dV}=0$」か?
というのが気になります。

良く見てほしいが、温度$T$が一定下であれば(16)式が成立するということしか言っていないからです。

何が言いたいのかというと、本来$\frac{dU}{dV}$と$\frac{\partial U}{\partial V}$とは意味が違うのである。

↓全微分と偏微分の違いはこちらを参考にしてください。

【解析学】全微分と偏微分の違いを視覚的に理解しておく

だがしかし、きっと$\frac{dU}{dV}$は0になるんだろうなと。

$\frac{dU}{dV}=(\frac{\partial U}{\partial V})_{T}\frac{dV}{dV}+(\frac{\partial U}{\partial T})_{V}\frac{dT}{dV}$

$\frac{dU}{dV}=(\frac{\partial U}{\partial V})_{T}+(\frac{\partial U}{\partial T})_{V}\frac{dT}{dV}$

(16)式によって、第一項は消えます。

$\frac{dU}{dV}=(\frac{\partial U}{\partial T})_{V}\frac{dT}{dV}$

このようにすると簡単に考えると、$U(T,V)$だったものを、$U(T)$とおいて$V$で全微分したものとまったく同じ形をしています。
「$U$は$V$に依存しないので、その偏微分だろうが全微分だろうが0になる」ことがわかりますね。

さらに、(16)式で言えることというのは、

$(\frac{\partial U}{\partial T})_{V}$が何か温度に依存したものに書けそうだということがわかっただけなのである。

それが、

$(\frac{\partial U}{\partial T})_{V}=nC_{v}=C_{v}$(1モルで考えるなら)

と置けることができて、定積比熱$C_{v}$と書けるのです。

後述していますが、定積比熱$C_{v}$や定圧比熱$C_{p}$は温度依存性があるのです。
※「温度依存性があってもおかしくない」という言い方が正しいかもしれない。

これらのことを別の解釈では、「内部エネルギー$U$が体積関係なくと言いつつ、温度$T$が一定下であれば」という条件は、「体積は関係ないけど、温度は一定にしてほしい」と言っているのと同じです。

それは「圧力一定の条件下」と同じことを言っていますね。

そこで、次のことに気づくはずです・・・・

「ということは、圧力一定で考えた(15)式に定積比熱$C\_{v}$を登場させることが可能ではないか」と・・・

そして、(15)式第一項をよく見ると・・・
$nC_{p}=(\frac{\partial U}{\partial T})_{V}+\big((\frac{\partial U}{\partial V})_{T}+p\big)(\frac{\partial V}{\partial T})_{P}$・・・(15)

(10)式と同様

$(\frac{\partial U}{\partial T})_{V}=nC_{v}$・・・(10)

と書くことができます。

さらに、(15)式の第二項の$(\frac{\partial U}{\partial V})_{T}$は、理想気体を考えている場合は、0になることが(16)式で示したのでした。

そして、理想気体の条件下では、(15)式は下記のようにとても簡単に書くことができます。

$nC_{p}=nC_{v}+p(\frac{\partial V}{\partial T})_{P}$・・・(21)

さらに・・・

$pV=nRT$

を使うと、(21)式は・・・

$nC_{p}=nC_{v}+nR$

$C_{p}=C_{v}+R$・・・(22)

と書ける。

この(22)式を「マイヤーの関係式」と呼びます。

理想気体の状態方程式を定積比熱を用いて表現してみる

理想気体の状態方程式$pV=nRT$を定積比熱$C_{v}$を用いて表現することを考えます。
定積比熱は、
$(\frac{\partial U}{\partial T})_{V}=nC_{v}$・・・(10)
のように書けるので、$pV=nRT$と内部エネルギー$U$の関係が分かりそうです。

まず比熱比というものを定義します。
比熱比:$\gamma=\frac{C_{p}}{C_{v}}$
そうすると、(22)式のマイヤーの関係式より、

$R=C_{v}(\frac{C_{p}}{C_{v}}-1)=C_{v}(\gamma -1)$・・・(23)

これを、理想気体の状態方程式$pV=nRT$に代入してみます。

$p=(\gamma-1)\frac{nC_{v}T}{V}$・・・(24)

さらに(10)式を積分すると、
$U=\int nC_{v}dT$・・・(25)
となります。

ここで、比熱の温度依存性がないとした場合は、
$U=nC_{v}T$・・・(26)
となるため、(24)式に代入することで下記のように「圧力」と「内部エネルギー}の関係式を得ることができました。

$p=(\gamma-1)\frac{U}{V}$・・・(27)

そうすると、理想気体の状態方程式は単純に「圧力」「温度」「体積(密度)」などの熱力学的変数による関係式、いわゆる内部状態を表現しているだけに過ぎませんでしたが、そこに熱力学第一法則というエネルギー保存則を加えることで、力学的な理論へと発展していくことができます。
力学的な理論とは熱力学一法則$dQ=dU+pdV$の$pdV$の部分です。
熱力学的な圧力と力学的な圧力は(あまり深くは議論しないが)同じであることがわかっています。

要するに、

$dQ=dU+pdV$・・・(1)
$p=(\gamma-1)\frac{U}{V}$・・・(27)
このふたつを連立させると、ある平衡状態から別の平衡状態を記述する理論が構築できるのです。

定積比熱と定圧比熱の温度依存性について

(16)式の導出の際に、

「定積比熱$C_{v}$も定圧比熱$C_{p}$も一般的には温度依存性がある(あってもおかしくない)。」と述べました。

定数ではないということを述べたのですが、そのような時にどのように扱えば良いのでしょうか?

その場合っでも何も慌てる必要はです(笑)・・・

繰り返しになりますが、理想的な状態(定数)から少しずれるのですから、ちょっと補正してやれば良いだけなです。

ただ、どのように温度に依存するかはわからりませんよね。

線形に変化するのか、非線形か??

わからないから、とりあえず多項式で書けば良いでしょうね。

$C_{v}=a+bT^2+cT^3+dT^4+・・・$・・・(23)
$C_{p}=\alpha+\beta T^2+\gamma T^3+\delta T^4+・・・$・・・(24)

こんな感じです。

これはテーラー展開とは違うということは一応言っておきます。
テーラー展開は、「ある点のまわり(ある温度のまわり)で多項式で近似する」だけであって、全領域で適用できる展開ではないです。

そして、(23)(24)式の多項式の定数を物性値として与えてやって、それをデータベースして物性値としてまとめておけば良いのです。

まとめと感想

熱力学もただ式変形するだけで、ずいぶんと面白い結果が得られるんだなと・・・

これが、「熱力学の基本中の基本」なのだが、だいたい理解できました。

めでたし、めでたし(^^)

解析力学とのつながり

完全に余談であるが、ここで解析力学との関連性について触れておこうと思います。

独立な2つ変数を決めれば、熱力学による状態は決定するという話をしました。

これは、単なる数学的な手続きでもあるが、別に熱力学に限った話ではありません。。

力学的状態も一般座標$q$と一般速度$\dot{q}$(あるいは、一般座標$q$と一般運動量$p$)の独立な2変数さえ指定すれば、力学的な状態は決定することができます。

力学的な状態が決定されるとは、すなわちハミルトニアン$H(q,p)$が決定されるという意味であり、解析力学では「ハミルトンの正準方程式」を用いれば運動方程式が与えられるという解釈になります。

「運動方程式さえ与えられれば、数学的手法を用いて、解を求めることができるので、力学的状態は決定される」と、ここでは言っています。

このように熱力学も解析力学も独立な2つの変数を指定すれば、おのずと状態は決定されるという意味において、ほとんど同じ数学的な手続きによって現象を理解することができます。

そして、「熱力学」と「解析力学」という学問の隔たりはなくなり、単なる数学的な手続きにおいて両者の学問を区別する意味はほとんど感じられなくなる・・・・・かな。
(めちゃくちゃ偏った見方かもしれないが・・・)

ちなみにせっかく選んだ2つの変数を、あとで別の変数に置き換えたいときどうするのでしょうか?
例えば変数として、圧力とと温度を選んだが、やっぱり体積と温度を変数にした方が議論がしやすい・・・など。

それは、数学的には「ルジャンドル変換」を施してやれば良いですね。

せっかくなので、ルジャンドル変換を簡単に説明しておきましょう・・
ある関数$f(x)$があったとする。
「$f$の曲線の形を表現する」というのは、今の場合だと「変数$x$を変化させる」ということになります。

しかし、「$f$の曲線の形を表現する」というのは、「その接線を作り、y切片を変化させる」ということでも表現できるのである。
そうすることで、「変数は$x$」から「y切片(変数$p$と置く)」へ変数変換することができたと解釈することができます。

説明が雑過ぎましたか(笑)
ルジャンドル変換

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