私がシビックテックというものに関わって早くも5年が経ちました。
Code for Kanazawa、Code for Japanの設立から始まり、各地でシビックテックのコミュニティが続々と立ち上がって、現在では80を超える団体が活動しています。各団体の活動のスタイルも様々で、市民活動団体を基本に、一般社団法人やNPOなど、様々な形で活動されています。多くの活動がある分、考え方やアプローチの仕方が違うので、アドベントカレンダーを機にまとめてみようと思います。
そもそも、シビックテックって何だっけ
原点回帰ではないけれど、シビックテックというものを再確認してみよう。
シビックテックは、Civic(市民)とTech(技術)を掛け合わせた造語で、市民が自らの手を動かしながら、行政サービスの問題や社会課題を解決していくという活動である。この活動は、市民が望むもの・必要と思うものを自発的に(DIY的に)作るもので、対価を求めて行動するものではなく、まず欲するがままに行動するというところが特徴的である。
シビックテックとよく一緒に出てくるのが「オープンデータ」である。
オープンデータは、改変・商用問わず誰でも自由に利用できるデータのことで、例としては、国や行政のデータ(みんなのデータ:税金が充てられていることに由来)が挙げられることが多い。
一時期、オープンデータを使って課題を解決しよう、というデータドリブン(データ起点)の動きが流行ったが、本来のシビックテックは課題ドリブンの動きであって、課題を解決するために何ができるか、であったり、地域を盛り上げるためにはどうテクノロジーを使ったらいいか、という考え方である。
つまりシビックテックは、基本的に草の根から始まる動きを指す。
前途のように、シビックテックは基本的に「対価を求めて行動するものではない」ので、成果物が本当に必要とされるモノであった場合、社会の中で運用・維持していくために、維持管理コストの負担や運営体制の面で現状確立されているものがない、というのが課題である。
シビックテックが与える様々な影響
シビックテックが与える影響は非常に多様なものがある。
Civic Tech Forum 2018で生駒の事例を取り上げてお話したが、シビックテックは単なるボランティア活動ではなく、周囲のコミュニティのあり方・コミュニティ間の繋がり・人の考え方など、様々な面で影響を与えている。お金に換算できない価値を生みだしているモノである。
シビックテック・インパクト 〜生駒から生まれた繋がり〜
https://speakerdeck.com/takuya310/2018-dot-6-2-sibitukutetukuinpakuto-sheng-ju-karasheng-maretaxi-gari
デジタルガバメントとシビックテック
日本では、「官民データ活用推進基本法」が2016年に成立した。
この法律は、行政データの流通環境の整備や行政手続きのオンライン化の原則化など、日本の行政でIT化が遅れている部分の底上げが期待される法律だ。そして、これを具体的に推進していくために「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」が閣議決定されている。ここには書ききれない容量なので、下記URLを参照されたい。
デジタル・ガバメント計画
https://cio.go.jp/node/2422
世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画
https://cio.go.jp/data-basis
これらに基づき、行政側のデジタル化を支援することで地域を良くしていく・変えていくという手法がある。
政府(ガバメント)側にテクノロジーを導入する支援をしたり、政府側が内部に抱えている課題を解決していく、GovTech(ガブテック)である。
Code for Americaで、フェローを行政内部に派遣して行政のカタチを変えていくように、Code for Japanでも、自治体の中でのデータ利活用の推進、自治体とスタートアップを融合したサービス開発、行政が開発するシステムにアジャイル開発手法を持ち込むなど、様々なアプローチでチャレンジしている。
GovTechにおいても、最終的には行政の成果物をつくるという上で、市民側の意見や考え方を捉えるシビックテックの考え方が重要になってくる。Code for Japanでは、それらを繋ぐ架け橋となるべく挑んでいる。
シビックテックはどうやって維持していくか
最後に、シビックテックの成果物についてまとめておきたい。
シビックテックの成果物は、前途のようにコストの負担や運営体制の面が課題となり、どうやって維持していくかが課題となっている。
アーバンデータチャレンジや、LODチャレンジ、インフラデータチャレンジ、MashupAwards(シビックテック部門)など、シビックテックに関するアプリコンテストが多く開催されている。年々応募数は増加し作品のレベルが向上しているだけに、維持できないというのでは、かけたパワーが勿体無い。
アーバンデータチャレンジ
http://urbandata-challenge.jp/
LODチャレンジ
https://2018.lodc.jp/
インフラデータチャレンジ
http://jsce-idc.jp/
MashupAwards
https://ma2018.we-are-ma.jp/
草の根から生まれたモノを、きちんと世に送り出していきたい。
その想いが、様々なシビックテックの活動が集まる「Civic Tech Forum」で語られ、「Civic Tech Japan」の立ち上げが発表された。
Civic Tech Japanは、各地でシビックテック活動によって生まれたものをきちんと育て、維持していく仕組みづくりに挑戦するという団体だ。
会社で作ったわけでもないアプリが広まり、全国展開という段階になったら、誰がどう維持管理していったらいいのだろう。そんなシビックテック側の悩みに寄り添う団体を目指している。
総じていうと
アプローチは違えど、どの活動にも共通しているのは「社会を良くしていこう」という想い。
「みんなでつくる」という考え方のもと、5年前には考えられなかった、新しい社会が少しずつ作られていく。
できる範囲で大丈夫。ぜひあなたも一緒に行動してみましょう。