6年ぶりに TOEIC を受験して825というスコアを取得してみて900を目指すべきだなと思った理由をメモっとく。日本のプログラマーが TOEIC の勉強する価値はあるんじゃないと思ったので記事にしてみた。
日本のプログラマーにおける TOEIC の価値
日本のプログラマーにおける TOEIC の価値を考えてみる。
日本のプログラマーのざっくり定義
漠然と TOEIC の価値について話をすると紛糾すること間違いなしなので、日本のプログラマーという対象に絞って話をするよ。日本のプログラマーというのを日本語が母国語のプログラマーで日本語が主要言語である職場で働いているということにさせてもらう。
日本のプログラマーにおける英語の価値
さてそんな日本のプログラマーにおける TOEIC の価値についてだが、まずは日本のプログラマーにおける英語の価値を考えてみたい。
まず、英語が全くできないけどプログラマーやってますという人は少数だと思う。プログラミング言語は特殊なものを除いて英語の単語が使用されるし、ドキュメントは英語で書かれていて、エラーメッセージをググれば Stack Overflow が検索に引っかかる。一次情報が英語であることがほとんどだし、日本語に翻訳されていないことも多い。とくにオープンソースの技術はそういう傾向が強い気がする。
でも、日本のプログラマーは英語がすごくできるとは限らない。すごくできる人も多い業界だとは思うけど、みんなができるわけじゃないし、苦手意識を持っている人もそれなりにいる。
ただ、日本のプログラマーとして仕事するにあたって英語がある程度できた方が良さそうなのは、前述のとおり英語の情報に触れる機会がある点で明らかだ。ということで、もう少し分割して考えてみることにする。つまり、読む/聞く/書く/話すに分割する。
英語を読めるという価値
日本のプログラマーとして英語が読めるということはプログラマーに求められる英語の技術の中で一番大事なことだろう。
もちろん日本語の情報もあるが、英語の情報の方が総数としては多い。プログラム自体が英語を主体とした言語で書かれていることもそうなのだけど、プログラムのコメントも英語であるし、コミットログも英語であるし、本やドキュメントも英語であるし、フォーラムの議論も英語である。
英語を読めることは収集できる情報の量を素直に増やせる。また、一次情報に触れられるという大きな利点もある。そういうこともあって英語を読めるということには大きな価値があり、実務面で必須に近い。
英語を聞けるという価値
日本のプログラマーとして英語が聞けるということは近年になって価値が上がってきたことだ。
これまでは通信の制約からほとんどの情報を文字としてやりとりすることが多かったので、読めることの次に書けることに価値があった気がする。
しかし、近年では通信の低価格化と高速化で音声や映像で情報を得る機会が増えてきた。大学の講義が無料で閲覧できたり、カンファレンスのプレゼンテーションが閲覧できたり、スクリーンキャストによる学習コンテンツが提供されたり、有名なエンジニアの議論が音声で聞けたりするわけだ。
英語を聞けることも収集できる情報の量を増やすことに寄与するようになってきたので、日本のプログラマーにとっても価値が高まっているが、実務面で必須ではない。
英語を書けるという価値
日本のプログラマーとして英語が書けるということはそれなりに価値がある。
英語でフォーラムに質問できたり、オープンソースソフトウェアに貢献できたり、全世界に向けて情報発信できたりする。自分が知りたいことを直接質問できたりするので情報収集面でも価値があるが、やはり情報発信面での価値が大きい。
英語を書けることも日本のプログラマーにとっては価値があるが実務面で必須ではない。
英語を話せるという価値
日本のプログラマーとして英語が話せるということの価値はそれほどでもない。
英語話者によるプレゼンテーションを聞きに行ったときに自分の言葉で質問できたり、日本語より英語が堪能なエンジニアとコミュニケーションが取れるという利点はもちろんある。ただ、日本のプログラマーという定義に当てはまる人はそういう機会は少ない。
英語を話せることは日本のプログラマーにとっては価値がないわけではないが実務面で必須ではない。
日本のプログラマーにおける TOEIC の価値
さて、いわゆる TOEIC というと TOEIC Listening & Reading Test のことだ。英語を聞くことと読むことを測定するテストなので、TOEIC の点数は聞くことと読むことの能力を反映しているが、書くことと話すことの能力は必ずしも反映していない。
前述のとおり、プログラマーにとって英語を読むことは情報収集のために重要で、近年だと英語を聞くことの重要性も高まっている。もちろん、英語を書けることや英語を話せるに越したことはないが、日本のプログラマーにとって実務で必要な能力は圧倒的に英語を読む能力だろう。
採用やマネジメントの観点から言っても、英語のドキュメントを苦なく読める能力があることが望ましいと考えられる。そして、採用担当者は TOEIC のスコアがそれを反映する普及した指標であるという認識を持っているはずなので、TOEIC のスコアは採用の判断にも使用されるのだ。
さあ、実務面でもキャリア形成面でも TOEIC を受験した方がいい気になって来たんじゃないだろうか。
なぜ TOEIC 900 を目指すのか
英検でもなく TOEFL でもなく TOEIC 900 を目指す理由について書いていく。
日本のプログラマーが目標にすべき英語のレベル
これは正直に言ってその人による。仕事の内容や技術領域があまり変化しなく、日本語の情報が潤沢にある人は英語の必要性はそれほどないだろうし、海外で仕事できるプログラマーになるんだと思っていたら求められる英語のレベルは高くなる。
ただ、別の観点から言わせてもらうと、日本のプログラマーの平均的な英語力は向上していくことになると思う。前述のとおり日本のプログラマーでも英語ができることには価値があり、英語で情報収集できるプログラマーに付加価値があるからだ。
そうなると、英語の能力が一定のままとすると相対的に市場価値が下がる。まあ、もちろん他のことで市場価値は変動するが、英語だけ取り出して言えばそういうことになる。それをよしとするのであれば英語の学習はしなくていいだろうし、よしとしないのであれば少なくとも継続的に英語の学習をする必要がある。
目標にする英語のレベルという意味だとその人による。そして、目標を設定したとして、その達成度合いをどう測定するかについては考えなければならない。
測定ツールとしての TOEIC
目標が洋書がスラスラ読めるでも、洋画が字幕なしで見れるでも、ネイティブスピーカーと議論できるでもいいのだけど、とりあえず TOEIC で測定してみるのがいい。
TOEIC は点数として結果が出てレベルがわかりやすいし、点数として目標が立てやすい。ほかの試験でもいいものはあると思うのだけど、日本のプログラマーが転職のときに英語力を示すとしたら TOEIC が無難だというのは前述の通りだ。
ある程度権威があるからこそ TOEIC は小手先のテクニックだけでは点数が上がらないように考えられているし、読むことと聞くことの能力をスコアに反映する努力がなされ続けている。測定ツールとしてある程度信頼がおけるのだ。
英検でも TOEFL でも示せるのは間違いないが、TOEIC であれば読むことと聞くことに特化できるし、受験料もそんなに高くないし、ビジネスで使用する英語に近い。何より英語学習を始めようとしている人が試験でいきなり書いたり話したりはハードルが高すぎる。
TOEIC 900 を目指す
TOEIC で測定し始めたら最終的に TOEIC 900 を目指そう。TOEIC 800 でもなく TOEIC 950 でもなく TOEIC 900 だ。その理由はいくつかある。
1つ目の理由は主観的な話で TOEIC 825 を取得してみて全然 TOEIC の問題を理解できてないことを身に染みて感じたからだ。TOEIC 825 を取得した試験のときはいくつのスコアになるかの予測もつかないような状態で帰路に着いたくらいで、久しぶりだから700前後だったらいいなぁと思っていたのだ。そう考えると TOEIC 800 で満足していてはいけないような気がする。
2つ目の理由は点数の境界として TOEIC 800 の上には TOEIC 900 があることだ。TOEIC 対策の本でも TOEIC 900 は明確な境界として扱いを受けていることが多い。この境目がやはり採用などでも意識されたりするだろうから TOEIC 800 ではまだ TOEIC 900 という線を超えていないことになる。
3つ目の理由は TOEIC 900 より上にある境界、TOEIC 950 や TOEIC 990 を目指すのは費用対効果が悪そうだということだ。TOEIC 900 ならまだある程度間違えられるが TOEIC 950 ましてや TOEIC 990 となってくるとほとんど間違えられない。そこを超えるために語彙や文法を強化したりすること自体は悪いことではないと思うが、TOEIC の点数を取ることが英語学習の最終目的ではないはずなので、TOEIC 900 からは英語学習の最終目的にあったものにシフトしていくのがいいのではないかと思う。
TOEIC 825 を取得した自分が英語でできること
参考までに TOEIC 900 ではないが TOEIC 825 を取得したプログラマーとして何ができているかを記載しておく。
英語の技術書を読む
書かれている英単語の難しさにもよるがプログラミング言語やフレームワークについて書かれた英語の技術書は読める。たまにわからない単語があっても電子書籍で読むことが多いので辞書を引くのは容易だ。Safari Books Online を契約しているので大量の洋書から情報を得られている。ただ、経営の本になったり、日常会話が多く含まれるような本になったりすると内容の理解に苦労することが多い。また、英語のジョークを笑えるほどは理解できてない。
英語の動画を見る
スライドが映っているプレゼンテーションのような動画やフレームワークのチュートリアル動画は内容をある程度理解できる。スピーチのような動画であったり、プレゼンテーションの Q&A セッションでは内容を理解するために何度か聞き直す必要がある。
英語でメールを送る
メールの文面については形が決まっていることもあり、表現したいことを検索すると例文が出てくることもあり、専門的な内容であればコミュニケーションにはそれほど問題がない。
英語でチャットする
リアルタイムに返すのは難しいがメールと同様の方法で意思疎通が図れる。専門的な内容であればコミュニケーションにはそれほど問題がない。
英語でプルリクのレビューにコメントする
メールやチャットとは違って例文がなかったりするものの単語を並べて説明してあげれば意思疎通が十分に測れる。何よりもコードを通じて話せるので議論は成立する。
英語で会話する
会話だけだとかなり難しいし、音声だけだとさらに難しい。アーキテクチャやアルゴリズムなどであれば図を描きながら説明することで意思疎通はある程度問題ない。
プログラマーが TOEIC の勉強するのは価値があるんじゃないってことについて書いてみた。2017年も始まったことだし TOEIC に限らず英語の勉強の契機になれば幸い。