日本の人口予測
2015年には6440万人いた就業者は、人口減少に伴い2030年には5560万人まで減少すると予測されている。単純労働に従事する外国人労働者に門戸を開放し、2019年度から5年間で26.3万~34.5万人を受け入れたとしても、人口減のインパクトは到底カバーできない。ICTによる劇的な生産性向上や、機械での代替、様々なサポートにより労働に参加する人を増やしていくなど、社会の仕組みを大きく変える必要がある。
#有効求人倍率から見る人手不足
求人倍率(きゅうじんばいりつ)とは、経済指標のひとつ。求職者(仕事を探している人)1人あたり何件の求人があるかを示すものである。一般に求人倍率が高い社会は、企業がより多くの労働者を求めており、つまりそれだけ経済に活気があると考えられる。
正社員の有効求人倍率は、2005年度以降で最も高い1.13倍を記録。パートタイマーなどを含めた全体の有効求人倍率は、高度経済成長末期の1973年度以来45年ぶりの高水準となる1.62倍を記録。
人手不足の職業
1位:建設躯体工事(有効求人倍率9.62倍)
2位:警備員(有効求人倍率6.89倍)
3位:医師、歯科医師、獣医師、薬剤師(有効求人倍率6.73倍)
4位:建築・土木・測量技術者(有効求人倍率5.61倍)
5位:建設(有効求人倍率4.26倍)
6位:外勤事務(有効求人倍率4.10倍)
7位:生活衛生サービス(有効求人倍率3.93倍)
8位:土木(3.76倍)
人手不足の解決策
2030年時点での人手不足数を推計。2030年には、644万人の人手が不足するという結果
働く女性を増やす:保育サービスの充実で出産育児による離職を防ぐ
保育支援の充実によって、新たに働くことができるようになる女性はどの程度いるのだろうか。そこで、M字カーブが始まる前の25~29歳における労働力率88.0%が、その後も減少せずに49歳まで継続した場合の女性の労働力人口(図2)を算出した。その数は102万人である。
働くシニアを増やす:働きやすい条件・環境を整備し、年齢に制限のない活躍を促す
厚生労働省「労働力調査」をもとに就業状況を見てみると、2018年には60代の人口のうち57.9%の男女が働いている。底を打った2004年以降は年々増加し、特に女性は2004年に比べ約1.5倍まで増えている。シニアの労働参加の増加傾向が今後もさらに続いた場合、2030年時点でどれくらいのシニアが新たに労働市場で活躍する可能性があるのだろうか。
そこで、男女それぞれ次のような条件で推計した。男性は、現在でも9割以上が59歳まで働いており、今後もその労働力率は高いまま推移すると予想されるため、労働力率が急減する65~69歳の労働力率を向上させた場合について検討した。具体的には、64歳時点の労働力率80.9%(2030年推計)が65~69歳まで継続した場合である。女性は、そもそも60歳以上で就業している人が少なく、2030年時点でも60~64歳の労働力率は62.6%、65~69歳では40.7%の予想であったため、60~69歳の女性のうちせめて7割が働くようになった場合を検討した。その結果、男性は22万人、女性は141万人の増加(図4)が期待できるという結果が得られた。
日本で働く外国人を増やす:働く場としての魅力を磨き、受け入れ拡大ペースを維持
新たに労働力を確保する観点においては、女性、シニアに加え、外国人も社会的に期待値が高い。特に2018年12月に成立した「改正出入国管理法(入管法)」において、在留資格「特定技能(1号・2号)」が新設されたことにより、介護や外食、農業、建設などの14業種で外国人労働者の受け入れが拡大した。
図6は、既存在留資格での外国人就労者が横ばいである前提で、政府の方針をもとに試算した2030年時点の日本で働く外国人の人数である。なお、推計時に参考にした政府方針は、2018年6月の経済財政運営の基本方針で、2025年までに新たな在留資格の創設で50万人超の就業を目指すというものである(推計後、2018年11月には改正法施行の2019年度から5年間で最大34万人の受け入れを目指すとの新たな方針が示されている)
生産性を上げる:AIやIoT活用による自動化で生産性を向上し、労働需要を減らす
AIやRPA(Robotic Process Automation)などの活用による飛躍的な自動化によって、298万人分の労働需要を減らすことが期待される。日本では7%の人が現在行っている仕事のうち、7割以上が将来自動化によって人手不要となるとされている。つまり4.9%(7%×70%)の生産性向上が見込まれているのだ。今後自動化が進めば、残る298万人分の人手不足問題は解消されるのではないだろうか。