先日、テレビ東京の番組「乃木坂工事中」にて、ノギザカクエスチョンという企画がありました。
確かめてみたいことがあったので、少々計算してみました。
#企画内容
この企画は、ランダムに選出されたメンバーが、自分以外のたった一人(回答人数は $17$ 人)が当てはまる質問を出せるか?というものです。番組内での結果は以下の通りです。
メンバー | 質問内容 | 該当者数 |
---|---|---|
賀喜 | 東京23区を全て言うことができる | 1 |
松村 | お母さんの名前がマサコである | 1 |
久保 | 昨日、美容院に行った | 1 |
梅澤 | 去年プライベートでメンバーに遭遇した人 | 5 |
高山 | 「となりのトトロ」を観たことがない | 1 |
大園 | 実家に桜の木がある | 0 |
日村 | 実家にみかんの木がある | 1 |
生田 | 焼き魚の皮を必ず残す | 3 |
筒井 | 今年のバレンタインに手作り菓子を作った | 2 |
田村 | 家にこたつがある | 0 |
星野 | 今まで一度もゆで卵を食べたことがない | 0 |
設楽 | 今まで一度も卵かけご飯を食べたことがない | 1 |
齋藤 | 憧れのメンバーが一回も変わっていない | 7 |
岩本 | 枕を使わないで寝る | 1 |
岩本 | 今朝 収録前に料理をしてきた | 4 |
成功割合は $7/15\simeq46.7 %$ となっており、見た目の難易度の割に成功率がかなり高いように思えます。
#成功確率の計算
さて、ここでは、チャレンジの成功確率について検討してみます。
以下では、一般に一人の参加者がある質問に関して該当する確率を $p$ で一定とし、各メンバーの回答に関して独立性を仮定します。企画に参加していたメンバーは $18$ 人なので、回答者数は $n=17$ 人です。すると、該当人数 $X$ に関する確率分布は二項分布 $B(n,p)$ に従います。
{\rm Prob}(X=x)={_n}C_xp^x(1-p)^{n-x}
式の右辺は「該当人数が $x$ 人となるような確率」を表しています。
さて、成功可能性(該当人数が1となる確率 ${\rm Prob}(X=1)$)を最大化するような $p$ について考えてみましょう。
{\rm Prob}(X=1)={_n}C_1p^1(1-p)^{n-1}=np(1-p)^{n-1}(=f(p)とする)\\
f'(p)=\cdots=n(1-np)(1-p)^{n-2}
$f(p)$ が最大となるような点での傾きの条件 $f'(p)=0$ より、成功可能性が最大となるのは $p=1/n$ の時となります。つまり、「$n$ 人に 1 人当てはまるような質問をすると上手くいきやすい」ということです。これは妥当に感じられますね。
この時のチャレンジ成功可能性ですが、
f(1/n)=\cdots\left(1-\frac{1}{n}\right)^{n-1}\simeq 37.9\,\%\:(n=17の時)
つまり、最適な $p$ を取るような質問を提示しても成功確率は3分の1程度しかないわけです。ちなみに、 $n$ が増えてゆくとこの値は $1/{\rm e}\simeq36.8,%$ に収束します。また、$f(p)$ のグラフは以下の通りです。
結局のところ、番組内での成功割合 $7/15=46.7,%$は、理論上の値($\leq36.8%$)をある程度上回っているようです。メンバーの運が良かったのかもしれませんし、ひょっとすると✂️があったのかもしれません。
#統計的仮説検定にかけてみる
せっかくなので、「✂️があったのではないか?」という仮説を検定してみましょう。
今までの結果を踏まえ、各チャレンジの成功確率を $p_0=1/3$ (全員が最適な質問をできるわけではないので、最大値より少し低い値に設定した)とします。
成功すると $1$ (確率 $p_0$), 失敗すると $0$ (確率 $1-p_0$)を取る(このような確率分布をベルヌーイ分布 $Ber(p_0)$ と言います)ような確率変数 $Y$ を考えます。
$Y$ を独立に $m=15$ 回試行する場合、期待値 $E(Y)=p_0$, 分散 $V(Y)=p_0(1-p_0)$ に注意して、その標本平均 $\bar{Y}$ は中心極限定理より、近似的に正規分布 $N(p_0,p_0(1-p_0)/m)$ に従います。よって、$\displaystyle \frac{\bar{Y}-p_0}{\sqrt{\frac{p_0(1-p_0)}{m}}}$ は標準正規分布 $N(0,1)$ に従います(この値が0から離れるほど✂️の可能性が強まる)。今回、有意確率(✂️があった訳ではないのに✂️があったと誤認してしまう確率)は $5 %$ に設定します(これにより判定基準が決まる)。すると、
\left|\frac{\bar{Y}-p_0}{\sqrt{\frac{p_0(1-p_0)}{m}}}\right|\simeq 1.10\leq z_{0.025}=1.960
となるので、今回の結果は自然な範囲に収まっていることがわかりました(つまり、最初の仮説は棄却)。
どうやら、少し運が良かっただけのようです。
ちなみに、今回紹介した推定方法は選挙の当選確実の決定などにも利用されています。
#最後に
ここまでご覧いただきありがとうございました。
さて、前置きが長くなりましたが、当該企画の放送後、27thシングルの選抜メンバーが発表されました。
早川聖来さん、初の選抜入りおめでとうございます👏
(これが言いたかっただけかもしれない)