この記事は スタンバイAdvent Calendar 2024の25日目(最終日)の記事です。
はじめに
株式会社スタンバイでプロダクト部長を担っています。
本記事では、私が今年特に意識して推進したことと、それから得た学びや考えについて記載してみました。
主に事業推進の仕方で同じような課題を感じられている方や、今後のキャリアの積み上げ方について迷われている方などに読んでいただきたい記事になっています。
今年注力したこと
今期最も注力したことの1つは、これまで培ってきたUXを活かし、どのようにプラットフォームの収益効率を高めるか、ということ。
我々の会社の理念は最上段にMissionがあり、その下にVisionが存在する。即ち、社会課題の解決こそが最も優先されるべき事柄で合って、その解決を前提に事業を伸ばしていくという形を標榜している。
そのため、我々はまずは世の中の課題解決を念頭にユーザー体験の向上を軸に開発を進めてきたが、株式会社である以上、どこかで収益効率を引き上げねばならず、今期は満を辞してこれまで以上にプロダクト全体で意識を強め注力し始めた。
テーマはシンプルだが、UXの毀損を最小限に収益効率を高めること
収益効率を高めると言っても、一足飛びにUXを無視した改善を行ってしまってはユーザー離れが加速してしまうため多少の毀損はあれど最小限に留める必要がある。
ほとんどのサービスで同じことが言えるかと思うが、我々のサービスでは収益性を高めればUXは毀損しやすい傾向にある。
そこで、数あるUXを測る指標の中でも核となる指標は何か?を今一度整理するところから開始した。
UXの整理
整理する上で活用したのはNorth Star Metricsのフレームワーク。
「ユーザー価値」「事業収益」「ビジョン」の3要素(ベン図)を考え、それぞれが交わる点を表現する指標を決めるフレーム。
このフレームを使い、プロダクト改善を牽引する企画メンバー全員を集めて1日時間を掛けて議論し指標を決定した。
蛇足だが、弊社は週1度の出社を原則(ただし家庭の事情など理由に応じてリモート可能)としそれ以外をリモートワークとしているため、普段のMTGもリモートが主体となっている。しかし、NMSを議論する上では顔を突き合わせながら全員が主体的に、かつスムーズに議論ができるようにオフラインでのロングMTGを実施した。リモートだと発言するタイミングの図り方が難しいためどうしてもオブザーバーになってしまう人が出てしまうが、今回オフラインで実施したことで意図通り皆が高い参加意識を持って議論が進み良いアウトプットに持っていくことができたと感じている。
今回、改めてNMSを議論し難しいと感じたのは、ペルソナとして定義するユーザーセグメントをどこに設定するか、によって見るべき指標が変わりうる可能性があるということ。
我々のサービスは特定のユーザーセグメントに限定して提供しているサービスではな
いが、一方で、事業を戦略的に伸ばす上では最も課題となるセグメントに注力して改善を進めていく方法も取り得る。
ユーザー全体をセグメントとして捉え共通項をNMSにするのか、または課題の大きさ別にセグメントを分類し、分類したユーザーセグメント毎にNMSを設定するのか、は議論が盛り上がった点であった。
結論、全てのユーザーに対して共通となるNMSは前提条件として決めた上で、今後のサービス改善に向けた戦略の中で細かいユーザーセグメント別に決めながら運用できると良さそうという話になったが、ユーザーセグメント毎にNMSが変わるとその分だけNMSを決めるワークが必要になり、さらにトラッキングするログデータと定義も必要になるため運用コストが膨大になる。
このコストを鑑みて運用を実現することは未だできておらず、今後継続して議論すべき論点の1つに感じている。
NMSの決定で全体として見るべきUX指標が定まり、UX改善目的の施策であっても、売上向上目的の施策であっても、リリース可否を最終的に判断する目線が揃い始めた。
また同時に、今後収益効率を高めるために毀損することを許容したUXに関しても、各自が目線を揃えてリカバリするための施策を考えられるようになってきたと感じている。
収益を見立てる
NMSを決めUXを測る指標を整理した後は、今年度の収益がどのような状況になっていきそうか、見立てを最新化しモニタリングし続けられる環境を再度整備した。
これまでも見立て自体は常に更新した上でステークホルダーに連携はしていたが、いくつか課題を感じておりやり切れておらず、収益効率を高める上で解決する必要があった。
まず、数字を見立てていく上で抑えておかなければならないのが、見立て上重要となる変数は何か、ということ。
これまでの見立てではこの変数が指標毎にブレており精度高く見立てができている指標もあればそうでない指標もあったため、収益見立てはとどのつまり蓋を開けてみなければわからない、という状況になってしまうことが多かった。
そこで、まずはこの変数を全ての指標で統一し収益見立ての精度を上げていく動きが取れるようにする必要があった。
また加えて、立てた見立てはどうしてその見立てになったのか、という要因もはっきりとしないケースもあり説明責任を果たせていないことも課題であった。
この課題を解決するにあたり、まず変数は以下の2つを基本として全て指標の見立てに適用できるようにした。
1:トレンド
指標の中には季節トレンドが大きく反映されるものがあるため、この影響を全ての指標でどれだけ受けるかを定めて適用した。
具体的には、昨年の実績を下にYoY(Year On Year)を指標毎に算出し、今年もシンプルに昨年の変化を辿った場合にどうなるかを見える化した。
ただし、マーケットトレンドの影響を大きく受けるのは主にトラフィックなどの量を示す指標であり、クリック率などの割合を表す指標についてはトレンドの影響を受けにくい。
この割合を表す指標については、なんの指標と相関するのかメカニズムを明らかにし、相関する指標のトレンド変化に合わせて見立てられるようにした。
2:施策
今年予定している施策はなんの指標にHitしどの程度影響を及ぼすのか、全ての施策で可視化しリリースタイミングに合わせてその変化を見立てに反映した。
施策によっては、上がる指標もあれば下がる指標もある。その上げ下げに加えてその施策が影響する範囲(カバー範囲)と改善率(この施策が改善するであろう度合い)を見積もり、1で算出したトレンドの数字に加算した。
この結果、元々抱えていた課題の改善が進み、毎月の数字変化と予算とのGapを早期から把握できるようになった。
事前に把握できれば、今後目標とする数値に届かせるためにはどの指標を伸ばすべきか、またそのためにどのような改善が必要か、事前に論点を明確にできるため、効率的かつ効果的に今後に向けた議論を進められるようになった。
また、もう1つの課題である、要因分析については前述の見立て精度が上がったことに加えてモニタリングダッシュボードを改めて整備したことにより解決が進んだ。
見立てを立てる上でどの施策がどの数値に影響を及ぼすのかを明らかにしたことで、結果が異なった場合にどの数字が見立て通りでどの数字が見立てから外れたのかを把握しやすくなった。
また、収益に関連する各種指標を「月次」「週次」「日次」「主要経路別」に改めて整理した上で、毎日のリリース状況を突き合わせて見ることができるようにした。
その結果、見立てに対する説明、結果とGapに対する説明の両方の精度が上がり、ステークホルダーへの説明責任も果たせるようになってきたと感じている。
FY24の開始当初は、前述した対応が完了しておらず予算に届かない時期が続いたが、改善が進んだ2Q以降は予算を上回る月が増え始め、現在はFY24通期予算達成の確度をさらに高める状態にまで持ってくることができた。
結果から学んだこと、感じていること
一連の活動により、大事にすべきUX指標が明らかになり、収益効率を高めるための見立て精度を上げることができてきた。
この全体の流れが「線」で繋がり運用が回り始めたことで、必然的に今後の戦略が明確に落とし込めるようになった。具体的には、ビジネスをシステム思考で考えられるようになり、得たい果実を得るための必要条件と十分条件の可視化が進んだように思っている。
まだ3Qが終わっていない段階だが、この段階で来期のテーマや戦略は明確にできており、それに伴ってどの程度数字を積み上げられそうか、以前よりも高い精度で立てることができる状況になり、加えて、スコープ自体もプロダクトから事業全体を対象として考えられるようになった。
どうすればUXを引き上げながら収益効率も高めて行けるのか、その流れと組むべき戦略がより明確になりスコープも事業全体に引き上げられたことは、個人的には視座が1段階上がったように感じていて、俗に言う成長とはこのような実感を指すのだと考えている。
やったことはシンプルで、一言でいえば 「仮説検証」。
目的に対して問題を設定し課題に落とし込み打ち手を考える(仮説を立てる)。そしてそれを実践して検証しながら改善を図っていく。
その積み上げこそが自分の考えの引き出しを増やすし、増えた分だけその先の景色が鮮明になっていく。
景色が鮮明になっていけばそれに必要な条件も明らかになっていくし、それが明らかになっていくほど視座も上がっていく。
視座が上がっていくほど任せられる範囲も拡がるし、また大きな範囲で仮説を検証できるようになる。
そしてまた仮説検証を繰り返すことで経験が積み上がり引き出しが増え、、、と言う形で成長のループに入っていくのではないかと思う。
ここからは、今までの話を受けた個人的な考えだが、
ものすごい成長速度でキャリアを歩んでいる人はこれを無意識下で高速にループを回せているのかもなと思う。
自分自身のキャリアを振り返ってみても知らず知らずのうちにそれを実践してきて今に至っているなと実感するし、肩書きやら年収やらに意識が支配されコト(仮説)に向かい切れていなかった時期(所謂ヒト(自分自身)に向いていた時期)は結果も年収も付いてこず停滞していた。
視点がコトに向くようになって初めて物事が回り始めキャリアが積まれてきた。
今の時代は会社が社員を育て切るといった時代ではなくなった。所謂終身雇用の時代は終わりを迎えており、転職が当たり前の世の中になってきた。
終身雇用が基本となる時代では、会社が人を育て育てた人こそが事業を作り企業を作る(事業は人なり、と言う考え)、人材と言う考えではなく所謂人財(人こそが財産である)と言う考えが色濃かったと思う。
しかし、今はキャリアは自分自身で作ることが前提であり、自身で学び成長することを前提として会社がそのサポートをしてくれる、といった順序に移行してきている。
育てた人が事業を作るのではなくて、その事業をやる意義や意味に共感しそれを果たすために集まった同志が事業を作っていく。そしてその事業を作りながら自身も一緒に成長しキャリアを作っていく、これが現代におけるキャリアの作り方なのではと思うし、だからこそ何を成すのか、コトに向き合って邁進する姿勢が重要なのだと感じる。
それが身に付いてれば、会社が変わっても、取り組む事業が変わっても、同じように結果を出すことができるはずだし、逆になければ転職をしても成果を出すことは難しいだろうと思う。(会社に育ててもらわないと成長し成果を出せないため)
おわりに
今年個人的に注力したことから、最後はキャリアや成長に関して個人的な見解としてまとめてみました。
※あくまで1個人の考えなので悪しからず
特に今年は、事業の成長(特に数字的成長)と個人の成長が紐づいているように感じられた年であり、良い経験ができた1年だったと思っています。
事業も成長し自身も成長する、これを全員が感じられるような組織、事業にすることでさらに世の中にインパクトを与える会社にしていきますので、引き続き弊社スタンバイにご注目ください!