AIIT

産技大:事業アーキテクトコースで学んでいることの紹介

(遅れましたが、AIIT Advent Calendar 2017の14日目の記事になります)

この記事の目的、対象となる読者

自分はニュースアプリの会社で広告のサーバーを書いているエンジニアです。
2017年4月より産業技術大学院大学(産技大、あるいはAIIT)の情報アーキテクチャ専攻に通っていますが、授業の情報がweb上にあまり見られないので、自分のまとめも兼ねて軽くご紹介しようと思います。
対象読者としては

  • 産技大、特に事業アーキテクトコースの履修を考えてらっしゃる方
  • エンジニアとして基礎を学び直しつつ、ビジネスのことも学びたい方

を想定しています。

産業技術大学院大学(AIIT)って何?

AIITって何という方が大半だと思うので軽くご紹介します。

  • 首都大学東京が運営している専門職大学院で、実践力育成を主眼とした大学院 (大学概要)
  • 修士課程に情報アーキテクチャ専攻創造技術専攻の2つがある。(創造技術もなかなか面白い)
  • 情報アーキテクチャ専攻を卒業すると情報システム学修士(専門職)の学位が授与される (学位規則)
  • 社会人が大半(実践力育成を狙ってAIITに学部から進む人は筋が良いと思う)
  • 講師が面白い
    • 皆さん、実務経験が豊富で、例えばIBM、Xerox、JAXA、富士通、ソニー、ホンダといったところで働いてきている。起業経験のある方やベンチャー投資経験のある方もいる。
  • 品川シーサイドに教室があり、秋葉原にリモート(Liveのみ)で視聴できる教室がある。授業は対面と録画のミックスで、自宅から録画を視聴して学ぶことが出来る。
  • 教育訓練給付制度を使うと、授業料の40~60%が還付される(実質授業料は2年で4,50万くらいになるかと)。そして都が運営している大学なので、東京都民は入学金が半額。

事業アーキテクトコースって何?

自分がAIIT:情報アーキテクチャ専攻に通い始めた目的は、

  • コンピュータサイエンスの基礎を固めたい(文系出身なので)
  • ベンチャー企業について学び、自分の所属する組織を正しく評価できるようになりたい
  • プロダクトのデザイン、マネジメントを学び、アプリ開発の上で考慮すべきことを押さえたい

というものでした。
AIITには、起業家育成の目的で事業アーキテクトコースというものが3年ほど前から開設されており、これが上記目的にはまっていると感じたので応募しました。
事業アーキテクトコースに関するニュースは以下の通り。

いくつかの講義が事業アーキテクト向けに開講されています。

授業紹介

以下に個人的におもしろかった事業アーキテクト系の中から 事業アーキテクチャ研究 の内容を少し紹介したいと思います。
(※ 授業名が同じでも授業内容は変更される可能性があることに留意下さい)

事業アーキテクチャ研究

  • 亀井先生による授業。ケーススタディを元にグループで課題を解決する事業提案を行います。
  • 2017年度の授業では、以下の3つのケーススタディについて学習。

    • 障害者雇用
    • 中小企業の生き残り戦略とネットワーク理論
    • CSV(Creating Shared Value)の実践と問題
  • 学校が休みになる日曜日に一日集まってグループ討議を行う集中型講義。

  • 学生同士が顔を合わせるタイミングはあまりないので、上記のグループ討議のほかは基本オンラインで意見交換。任意で集まって議論。

  • ケースの提示から発表までの時間が短く、授業期間中はかなり忙しい日々になる。事業提案を考える上で押さえるべき基礎概念についての参考図書の読み込みをかなり頑張る必要がある。

  • オンライン/オフラインでの議論を通して、先生だけではなく生徒間の議論でも大きな気づきを発見することが出来る。

以下、感想と学んだ概念

これまで自分がビジネス系の学習をしてこなかったこともあり、この授業を通して非常に多くの概念を学ぶことが出来ました。以下に羅列となりますが学んだ概念について述べてみたいと思います。

製品・工程アーキテクチャ

  • 製品を考える上で、設計及び製造工程のどこをモジュール化しどう組み合わせるのかを考える必要がある = アーキテクチャ
  • さらに、どのモジュールをオープンにするかを決めることにより、製品のエコシステムをどのように構築するのかを知財に絡めて考える必要がある
  • 例えば、Intelの半導体は 中インテグラル・外モジュラー戦略 と言える。製品自体はモジュラーシステム(PC)の一部を構成する標準品として販売されるが、その製品自体の中身は高付加価値タイプのインテグラル製品である (藤本, 2002)
  • 東大・藤本隆宏先生の講義資料が分かりやすいかも
  • 株式会社スワンは 外インテグラル・中モジュラー戦略 によりパン製造という非常にすり合わせ要素の多い工程をモジュール化し、低価格高品質なパンを製造している(亀井, 2013)。そして、その各モジュール設計は、障害者が担当することが出来ることを目的に設計されている。

ネットワーク理論: 弱いつながりの強さ とか バウンダリスパナー とか

  • ネットワーク理論においては、”弱いつながりを持つクラスタがより強い”という説がある(Granovetter, 1973)
  • そして、そのクラスタ間を結びつける、弱いつながりを多数もつノードには有益な情報が多く流れる(Burt, 2004)。このようなノードにあたる存在を、バウンダリスパナーと呼ぶ。
  • こちらの入山章栄氏による解説記事も参考になる
  • 企業にとって新たなイノベーションを起こすためには、このバウンダリスパナーを通した外部クラスタとの接続を維持し、有益な情報の流入を維持する必要がある。
  • 余談だが、この 弱いつながりの強さ は東浩紀氏の 観光客の哲学にも繋がる

企業の生き残り戦略

  • いわゆるイノベーションのジレンマ(Christensen, 1997) によって、企業においては自らの成功が次の成長を阻害する要因になりうる
  • McGrath (2013)が示すように、現代において外的要因の変化スピードが激しくなった結果、企業にとって持続的な優位性を保つことは非常に難しくなった。こうした状況では企業は上記のイノベーションのジレンマを打破し、 一時的な競争優位性 を如何に築くかということを念頭に置く必要がある。このMcGrath論文は実践的な判断基準が示されていて読んでいて非常に参考になった。
  • 一時的な競争優位性を築くためには、企業は何をすべきか。Exploration-Exploitation TradeOffのように、探索を行う必要がある。
  • 変化をしていく中で、企業はその一体感を保つために、ドメインの再構築を行っていく必要がある。

CSV(Creating Shared Value)

  • CSVとは、Porter & Kramer (2011)において提唱された経営手法で、企業は単にその資本を最大化する活動を行うのではなく、その活動によって社会が抱える問題の解決を図り、共通価値を生み出すことで企業価値が上がる、というもの。
  • こちらにも論じられているように、CSVはイノベーションを起こしうる
  • その際に参考となる概念としてオープン・イノベーションが挙げられる。社内外の知見を持ち寄ることで課題を解決し、共通価値を創造する。こうした外部との連携アプローチをコレクティブ・インパクトと言ったりもする。

まとめ

  • 上記以外にも面白い授業が色々ありました。Systems Engineeringという概念や、管理会計の知識などを学ぶことが出来た。
  • 上記事業アーキテクトコースは、創造技術専攻からも履修することが出来る。創造技術専攻では事業アーキテクトコースの他にAI/データサイエンスコースもあったりする。
  • 自分にとってAIITでの授業は自分の視野を広げる上で非常に役に立ちました。他の選択肢を知らないので偏った判断ではありますが、個人的にはおすすめです。