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Haskell GHCをソースからビルドする手順

Last updated at Posted at 2017-02-22

はじめに

HaskellのコンパイラであるGHCについて、ソースコードからビルドするための手順を記載します。
(以前より、手順が少し簡単になっています。)

以下は、Ubuntu 16.04 LTS Ubuntu 18.04 LTS環境にて、 GHC8.0から8.2世代相当 GHC8.6をビルドする場合の手順例です。
(Docker環境下で作業すれば、現在のPC環境を汚さないで何度でも試すことができると思います。 また、Windows環境の場合にも、Docker環境を使用すると手軽に始められると思います。)

GHCのビルドに関する公式情報は以下等にあります。最新情報については、随時そちらを参照してください。

ビルド手順

1. ビルド用ツールのインストール

ツール等の導入トラブルを回避するために、念の為に、以下の環境変数を設定しておきます。

$ export LANG=C.UTF-8
$ export LC_ALL=C.UTF-8
$ export LANGUAGE=C.UTF-8

ビルドに必要なパッケージを、apt-getを使用してインストールします。
(管理者権限でない場合は、sudoを使用してコマンドを実行してください。)

$ apt-get update
$ apt-get install git autoconf automake libtool make gcc g++ libgmp-dev ncurses-dev libtinfo-dev python3 xz-utils

2. ブートストラップ用GHCとAlexとHappyのインストール

さらに、ビルドに使用するブートストラップ用のGHCと、Alex(lex相当)とHappy(yacc相当)を用意します。
ブートストラップ用のGHCのバージョンは、ビルド対象のGHCのバージョンから2世代以内のバージョンである必要があります。
(例えば、GHC8.6をビルドする場合には、ブートストラップ用のGHCとしては、GHC8.2またはGHC8.4が必要です。)

以下では、Haskell Platformをインストールして、ブートストラップ用のGHCとAlexとHappyを用意する方法を紹介します。
Haskell Platformは、グローバルの共通環境(/usr/loocal/bin および/usr/local/haskell以下)に、コマンドをインストールします。

なお、Haskell Platformをインストールすることを望まない場合は、Stackを用いてブートストラップ用のGHCとAlexとHappyをインストールすることもできます。Stackを用いる方法については、YoshikuniJujoさんの記事を参考にしてください。

それでは、以下のコマンドによりHaskell Platformをインストールします。
(./install-haskell-platform.shの実行には、root権限が必要です。このコマンド実行により、ブートストラップに使用するghcとalexとhappyコマンドが/usr/local/bin以下にインストールされます。)

$ mkdir tmp.haskell-platform
$ cd tmp.haskell-platform
$ wget https://haskell.org/platform/download/8.4.3/haskell-platform-8.4.3-unknown-posix--core-x86_64.tar.gz
$ tar xzf haskell-platform-8.4.3-unknown-posix--core-x86_64.tar.gz
$ ./install-haskell-platform.sh

さらに、GHCのビルド時に発生するPIC関連のエラーを避けるために、Haskell Platformの設定変更が必要です。
具体的には以下のコマンドにより、settingsファイルの該当行を"NO"から"YES"に変更します。

$ cd /usr/local/haskell/ghc-8.4.3-x86_64/lib/ghc-8.4.3
$ sed -ie 's/^, ("C compiler supports -no-pie","NO")/, ("C compiler supports -no-pie","YES")/' settings

3. GHCソースコードの入手

masterブランチを取得する場合は、以下のようにします。

$ git clone --recursive git://git.haskell.org/ghc.git

特定のブランチ、例えば安定版の8.6ブランチを取得する場合は、以下のようにします。

$ git clone -b ghc-8.6 --recursive git://git.haskell.org/ghc.git ghc-8.6
$ cd ghc-8.6
$ git checkout ghc-8.6
$ git submodule update --init

環境により、数分〜数十分程度かかります。

4. ビルド条件の設定

次の様にして、ビルド条件設定ファイルmk/build.mk を用意します。
サンプル(build.mk.sample)をコピーしてから、BuildFlavour = quickの行を作ります。quickは、ビルドを高速に行うための設定です。
(あらかじめコメントアウトされている、#BuildFlavour = quickの行の先頭の#を削除します。)

次の様に、sedなどで置換するか、

$ cd mk
$ sed -e 's/^#BuildFlavour = quick$/BuildFlavour = quick/' build.mk.sample > build.mk

viやemacs等を使って、該当の行(#BuildFlavour = quick)を直接編集します。

$ cd mk
$ cp build.mk.sample build.mk
$ vi build.mk

これにより、ビルド時には、quick設定用のmk/flavours/quick.mkが読み込まれます。
(ビルドの目的に応じて、quick以外のdevel2等の設定にしても良いでしょう。)

5. bootとconfigureコマンドの実行

トップディレクトリで、boot と configure コマンドをそれぞれ実行します。

$ ./boot
$ ./configure

6. ビルド実行

トップディレクトリで、make コマンドを実行してビルドします。

$ make

論理CPUが複数あるPCの場合は、並列数を指定すると、ビルドを高速化できます。
以下は、論理CPUが8個の場合です。(CPU個数に+1したものを指定します。)

$ make -j 9

PC環境により10分〜2時間程度かかります。
実行時に、make 2>&1 | tee xxx.log のようにログを出力しておくと、あとからログを参照できて便利です。

7. 出来上がったghcを試す

ビルドされたghcは、inplace/bin/ghc-stage2として生成されています。
試してみましょう。

$ inplace/bin/ghc-stage2 --version
The Glorious Glasgow Haskell Compilation System, version XXX
$ inplace/bin/ghc-stage2 --interactive
Prelude> 1+2
3

出来ました。

ソースコードを色々と改変して、ビルドしてみましょう。
例えば、ghc/driver/ghc-usage.txtを修正して、makeでビルドし直すと、ghc --help で修正が反映されたことを確認できます。

補足

ドキュメントもビルドする場合

ドキュメントをビルドする場合は、予め以下のパッケージもインストールしておきます。

$ apt-get install python-sphinx texlive-xetex texlive-fonts-recommended fonts-lmodern

その上で、mk/build.mkに以下の行を追加したうえで、./configure および makeを実行します。

user's guideを生成する場合には、mk/build.mkに以下の行を追加します。

BUILD_SPHINX_HTML  = YES

Haddockドキュメントを生成する場合には、mk/build.mkに以下の行を追加します。

HADDOCK_DOCS = YES
EXTRA_HADDOCK_OPTS += --hyperlinked-source

詳しくは、https://ghc.haskell.org/trac/ghc/wiki/Building/Docs を参照してください。

Validationも行う場合

ビルドしたghcバイナリに対して、validation(テストプログラムによる検証)を行う場合は、次のパッケージをインストールしておきます。

$ apt-get install python3
$ apt-get install linux-tools-generic xutils-dev

その上で、validationコマンドを実行します。以下は論理CPUが8個ある場合です。
環境により、実行には数時間かかります。
詳しくは、https://ghc.haskell.org/trac/ghc/wiki/TestingPatches を参照してください。

$ THREADS=9 ./validate

Docker用ファイル

以上のビルド手順を簡単に試せるように、Dockerfileを以下に置いておきました。

以下にも、DebianをベースとしたDockerfileが用意されています。こちらを使用すると、Phabricatorを使用するための arcanistの環境も準備できます。

以上です。

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