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即戦力化 ディープラーニング実習(第三週)

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【第3週】翻訳と要約(Translate / Summarize)

はじめに

第3週では、**大規模言語モデル(LLM)を使った「翻訳」と「要約」**に挑戦します。
翻訳と要約は、AIの中でも特に実用性が高いタスクです。たとえば:

  • 英語ニュース記事を日本語に翻訳する
  • 論文の要点を数行で要約する
  • 長文メールを要点だけ抽出する

こうした処理はすべて、テキストを入力してテキストを出力するという点で、txt2txt(テキスト変換)タスクに分類されます。

今回は、前週と同様に Google Colab 上で Hugging Face の日本語対応モデルを活用し、以下の内容を体験します。

  • 翻訳と要約の違いを理解する
  • プロンプトの工夫によって出力結果がどう変わるかを体験する
  • 実用的な長文要約の精度や限界を知る

前週までは「自由な文章の生成」に焦点を当てましたが、今週はより「目的を持ったテキスト変換」に進みます。
「正確さ」や「情報圧縮」といった観点から、モデルの出力をどう評価するか、という視点も重要になってくるのですが、まずは動かしてみなければ始まりませんよね。

それでは、Colabの準備を整えて、翻訳と要約の世界へ進んでいきましょう!

今週のコード


1. 実習の目的

  • 英語の文章を日本語に翻訳する
  • 長文テキストを数行で要約する

今回の実習では、単なる「続きの生成」ではなく、与えられた情報を翻訳や要約という目的に応じて再構成する力を、モデルに発揮させます。
そのためには、適切なプロンプト設計が鍵になります。

Google Colab 上で動かしながら、指示の仕方ひとつで出力が大きく変わることを体験してみましょう。


2. 英語→日本語の翻訳を試してみよう(Mitsuaモデル)

今回は、軽量でColabでも使える翻訳モデルとして、
Mitsua/elan-mt-bt-en-ja を使います。

まずは、英語から日本語への翻訳を体験してみましょう。

!pip install transformers sentencepiece

from transformers import MarianMTModel, MarianTokenizer

# モデル名を指定
model_name = "Mitsua/elan-mt-bt-en-ja"

# モデルとトークナイザのロード
tokenizer = MarianTokenizer.from_pretrained(model_name)
model = MarianMTModel.from_pretrained(model_name)

# 翻訳関数
def translate_en_to_ja(text):
    inputs = tokenizer.encode(text, return_tensors="pt")
    outputs = model.generate(inputs, max_length=512, num_beams=4, early_stopping=True)
    translated = tokenizer.decode(outputs[0], skip_special_tokens=True)
    return translated

# 翻訳テスト
english_text = "Artificial intelligence is changing the world."
japanese_text = translate_en_to_ja(english_text)
print("英文:", english_text)
print("日本語訳:", japanese_text)

✅ 出力例

英文: Artificial intelligence is changing the world.
日本語訳: 人工知能が世界を変えている。

うん、翻訳できましたね。


🔄 自分で翻訳してみよう

コードの中の英語文 english_text を次のように変更して、翻訳結果を楽しんでみましょう。

  • "The cat is sleeping under the table."
  • "This technology will change education forever."
  • "Do you believe in AI?"

どんな日本語が返ってくるか、試してみてください。


🧪 名言の翻訳も試してみよう?

ついでに、次のような「歴史的に有名なフレーズ」も翻訳してみたくなりませんか?

  • "The Earth was blue."
     👉 「地球は青かった」──これは、1961年に人類初の有人宇宙飛行を成し遂げた旧ソ連の宇宙飛行士、ユーリイ・ガガーリンの名言として知られています。

  • "Government of the people, by the people, for the people."
     👉 ゲティスバーグ演説(アメリカ・リンカーン大統領)の一節、「人民の、人民による、人民のための政治」

ですが…
実際にこのような文学的・象徴的なフレーズを翻訳モデルに投げると、
うまく訳してくれないことが多いです 😅

❗ なぜうまく訳せないのか?

  • 比喩や文化的背景を考慮しない「逐語訳」になりやすい
  • 有名な訳例(定訳)を知らずに、ただの構文変換になる

このような「創造性・文脈理解」が求められるタスクは、
まだまだ人間や高度なAI(ChatGPTなど)でないと難しいようです。

でも、失敗も含めて「生成AIの限界」を知るのは良い学びとなるでしょう。


3. 実習:日本語→英語の翻訳(チャレンジ編)

では、次に 日本語から英語へ翻訳 するモデルを使ってみましょう。
使うモデルはこちらです👇

👉 Mitsua/elan-mt-bt-ja-en
※このモデルも、先ほどと同じ「Mitsua」チームによるものです。

🔍 実習課題:

  1. Hugging Faceのページから Mitsua/elan-mt-bt-ja-en の使い方を調べよう
  2. Colabで動かして、次の日本語を英訳してみよう:
今日は天気がいいので、散歩に出かけました。

🔍 実習のヒント:MarianTokenizer の使い方を調べてみよう

実習課題では、MarianTokenizer を使用します。

以下の公式ドキュメントを参考にすると、MarianTokenizer の使い方やサンプルコードが掲載されています。

上記の例では、"Helsinki-NLP/opus-mt-en-roa" というモデルが使われています。
これを "Mitsua/elan-mt-bt-ja-en" に変更すれば動く、かも?

✅ 正解コード例(※自分で考えてから見ると力になります!)

from transformers import MarianMTModel, MarianTokenizer

model_name = "Mitsua/elan-mt-bt-ja-en"
tokenizer = MarianTokenizer.from_pretrained(model_name)
model = MarianMTModel.from_pretrained(model_name)

def translate_ja_to_en(text):
    inputs = tokenizer.encode(text, return_tensors="pt")
    outputs = model.generate(inputs, max_length=512, num_beams=4, early_stopping=True)
    return tokenizer.decode(outputs[0], skip_special_tokens=True)

japanese_text = "今日は天気がいいので、散歩に出かけました。"
english_translation = translate_ja_to_en(japanese_text)
print("英訳:", english_translation)

###出力例

英訳: I went for a walk because the weather was nice today.

4. 日本語の文章を要約してみよう(mT5-smallベース)

文章要約も、テキストからテキストへ変換する「txt2txt」タスクのひとつです。
特に、日本語ニュースや長文レポートを 数行で要点をまとめる ことは、AIにとっても高度で実用的な課題です。

ここでは、日本語の要約モデルとして次のものを使います:

👉 tsmatz/mt5_summarize_japanese

このモデルは、Googleの mT5-small(多言語T5)をベースに、
日本語のニュース記事(XL-Sum)でファインチューニングされた要約専用モデルです。
軽量かつ精度も高く、Colabでそのまま動かせます。


✅ Colabで実行できるサンプルコード

# 1. transformersとsentencepieceのインストール(最初の1回だけ)
!pip install transformers sentencepiece

# 2. モデルとトークナイザの読み込み
from transformers import AutoTokenizer, AutoModelForSeq2SeqLM

model_name = "tsmatz/mt5_summarize_japanese"
tokenizer = AutoTokenizer.from_pretrained(model_name)
model = AutoModelForSeq2SeqLM.from_pretrained(model_name)

# 3. 要約対象の長文(自由に書き換えてOK)
text = """
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、新たな月探査機「TSUKIMI(ツキミ)」の打ち上げに成功しました。
この探査機は、月面における地下水の存在を調査することを目的としており、
地球からおよそ38万キロメートル離れた月の軌道上に到達しました。
JAXAによると、今後数週間にわたり月面の地質を分析する予定です。
"""

# 4. 入力には "summarize: " という指示文をつける
input_text = "summarize: " + text

# 5. トークナイズしてモデルに渡す
inputs = tokenizer.encode(input_text, return_tensors="pt", max_length=512, truncation=True)

# 6. 要約を生成
summary_ids = model.generate(inputs, max_length=128, min_length=5, length_penalty=2.0, num_beams=4, early_stopping=True)

# 7. デコードして表示
summary = tokenizer.decode(summary_ids[0], skip_special_tokens=True)
print("✅ 要約結果:", summary)

✅ 出力例

✅ 要約結果:  宇宙航空研究開発機構(JAXA)は25日、月面の地質を調査する新たな月探査機を打ち上げたと発表した。

要約できましたか?

では、自分でも要約してみてください。


📝 自分でも要約してみよう

上記コード中の text = """ ... """ を次のように書き換えて、
さまざまな文章の要約を試してみましょう。

text = """
日本の経済は現在、回復基調にあります。消費支出は堅調で、企業の設備投資も増加傾向にあります。
一方で、円安や物価高など、家計への影響も懸念されています。
日銀は引き続き金融緩和政策を維持する方針です。
"""

⚙️ パラメータを変えてみよう

要約モデルの出力は、生成時のパラメータによって変化します。
いくつかの値を変えて、どんな風に結果が変わるかを観察してみましょう。

パラメータの説明

パラメータ 説明
max_length 出力される要約文の最大トークン数 64, 128, 256
min_length 出力の最低長さを保証(短すぎ防止) 5, 10, 20
length_penalty 長さに対するペナルティ。大きいほど短くなる傾向 1.0, 2.0, 0.8
num_beams ビームサーチ幅(大きいほど品質が安定) 2, 4, 8

✅ では、パラメータを変更して実行してみましょう。

分かりやすいよう、短い要約の生成例を記します。

以下のように、generate() 関数の引数を変更して要約を生成してみましょう。

summary_ids = model.generate(
    inputs,
    max_length=20,
    min_length=15,
    length_penalty=4.0,
    num_beams=4,
    early_stopping=True
)
summary = tokenizer.decode(summary_ids[0], skip_special_tokens=True)
print("✅ 要約(調整後):", summary)

✅ 出力例

✅ 要約結果: 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は25日、

あちゃぁ。長さは短くなりましたが、途中で切れてしまいましたね。

悪い結果でしたが、パラメータが変更されたことはわかったかと思います。

では、パラメータの違いで、どれくらい長く・短く・詳細な要約が出るかを比べてみてくださいね。


🔚 まとめ

第3週では、翻訳要約という、実用性の高い2つのテキスト変換タスクに挑戦しました。


✅ 英訳:日本語⇄英語の翻訳を体験

  • Mitsua/elan-mt-bt-en-jaMitsua/elan-mt-bt-ja-en という2つの翻訳モデルを使い、

    • 英語 → 日本語
    • 日本語 → 英語
      の双方向の翻訳を体験しました。
  • モデル名を変えるだけで切り替え可能な仕組みを知り、
    Hugging Face のモデルを活用する手順を身につけました。

  • また、「地球は青かった」や「人民の、人民による…」といった象徴的フレーズが
    そのまま翻訳できないこともあるという、生成AIの限界も確認できました。


✅ 要約:長文から要点を抽出する力

  • tsmatz/mt5_summarize_japanese を使い、日本語ニュース記事を要約するタスクに挑戦しました。

  • summarize: というプレフィックスの必要性や、
    max_length, num_beams, length_penalty などの生成パラメータの調整が出力にどのように影響するかを体験しました。

  • また、途中で切れる要約や、不自然な出力が出るケースを通じて、
    実務応用における注意点も理解しました。


💡 翻訳と要約の違いを整理しよう

タスク 入力の意味 出力の特徴 求められるモデルの性質
翻訳 意味を変えずに「別の言語」で表現 原文の忠実な言い換え 対訳データで学習されたモデル
要約 意味を圧縮し、「短く伝える」 要点を残した情報の抽出・圧縮 内容把握+再構成力が求められるモデル

🔭 次回予告

次回(第4週)では、文章の分類と感情の判定に挑戦します。
これもまた、入力テキストから意味的な属性を抽出するタスクです。

  • その文章はどんなジャンル?(分類)
  • ポジティブ?ネガティブ?(感情判定)

翻訳や要約とは異なり、「数値やラベルで表す」分類系タスクへと進んでいきます。

おつかれさまでした!次週もお楽しみに ✨


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