理論神経科学に関する個人的なまとめです。
書籍は東京大学出版会の「脳の計算論」が参考になると思います。
理論
神経の活動を数式で表す。
神経といっても動物種や組織によって細胞は多様であるため、簡単に一括りにはできない。
そのため、完全なモデルを作成することは難しい。(そのためには細胞内の動態を表す詳細なモデルが必要になる?)
最終的には実験で得られた見地も取り入れて、モデルを確かめることが大切になると思われる。
以下は具体的なトピック。
活動電位のモデル
ホジキンハックスレーの方程式は非線形の微分方程式で活動電位を表現することに成功した。さらにイオンチャネルの存在も予言するようなモデルであった。
しかし、変数が多くて計算が大変であること、ヤリイカのモデルである、カルシウムチャンネルが無いことに注意
その後も様々なモデルが提案された。(式がより抽象的なものになっていく)
Morris-Lecar ニューロンモデル
フィッツフュー-南雲モデル
Izhikevichモデル
位相振動子と力学系
活動電位を微分方程式で表すことが出来たため、力学系として考えることが出来る。
位相縮約理論によって、可視化し、性質を把握する。
安定点や不安定点の存在、非線形力学系のためカオスが現れる。
また膜電位のダイナミクスだけでなく、神経集団のネットワークのダイナミクスも結合を条件づけることで位相で記述することができる。
(そもそも生物自体が力学系として考えられる。いわゆる定常開放系(散逸構造))
単一ニューロンのモデル
細胞には空間的な広がりがあるので、
厳密に考えようとすると偏微分方程式となる。
解決策として、コンパートメントモデルで考えるという方法がある。
または、空間的な広がりを考えなければ、以下の単純なモデルを作れる。
McCulloh-Pittsモデル。これは今のDeep Learningの元になっている。
積分発火型モデル(IFモデル、LIFモデル)。これはSpiking Neural Networkの元になっている。
シナプスのモデル
動的シナプス(LTPやLTDとは違う短期的変化)、STDPなどの結合強度変化のモデル
ネットワークのモデル
上記の全てを合わせればネットワークを再現できる。
本当はグリア細胞の関与も考慮するべき?
確率過程を導入したマクロ的な挙動
上記までは決定論的な話であった。
単一ニューロンのモデルには、スパイク時系列だけを確率過程で考えるISIモデルもある。ポアソン過程やガンマ過程などがスパイク生成に近いとされる。
神経活動は多ニューロンと多ニューロンの伝播が一般的。
細胞の1つ1つの挙動はランダム性があると考えて、熱力学のようなマクロな性質を考える。
単一ニューロンへの入力ではランジュバン方程式で記述できる。
ネットワークの挙動はフォッカー・プランク方程式という偏微分方程式で記述できる。
応用事例
解析解を導く、シミュレーション、ベイズ推論などを用いて当てはめる。
物理学の解析のように深層学習の活用も考えられる。
観測される現象のモデリング
fMRIやNIRS、脳磁図、脳波などでの脳活動を観測する方法はいくつか存在する。
脳波の同期現象などは昔から知られていて、これらを数理モデルで説明できるようにする。
BMIの開発などへの応用も期待される。
また、動物実験では電気生理やカルシウムイメージングもある。
活動の同期やバースト発火現象など。
意識や行動との関連付け
前項より内的な現象の解明
予測符号化やFree energy principle
大脳皮質の認知機能や海馬の記憶機能
大脳基底核や小脳などでの運動制御の機能
精神疾患との関連は書籍「計算論的精神医学」が参考になる
新しい学習則(AI)の発明
ニューロコンピューティングへの応用。
パーセプトロンはマカロフのモデルから誕生した。
Spiking Neural Networkでは、ニューロモルフィックハードウェアの活用も期待できる。
リザーバーコンピューティングでも特有のハードウェア実装が利用出来る。
また、カテコラミン神経細胞のモデルは強化学習などにも応用できる。